三話
OKが出たことを旅人に伝え、早速案内することにした。そのついでに、聞きたいことを色々聞いた。
「あの。」
「ンー?どうしター?」
「ここ最近、魔物とかいうのが凶暴化してるとか聞いたんですけど、大丈夫だったんですか…?」
「あー…えーとナ…そのー、アッ、隠れたリ逃げたリしてタから戦闘してナイ!流石にそんなんと戦闘したらシヌかもしんないからナ。」
「まあ、そうですよね!ところで、お名前は?」
「えーっト、ラウ。よろしくナ。」
「私はナオです。よろしくお願いします。」
他愛ない会話をしているうちに旅館にたどり着いた。
中へと入ると、女将モードのスイッチがONになったメグがスタンバイしていた。
「いらっしゃいませ。」
かしこまっているメグに対してラウは、
「アー………あんまり堅苦しいのスキじゃないンダ。かるーい感じデお願イ出来るカ?」
「あっ、はい。分かりました。」
少し変わったお客さんを部屋へと案内し、その日はそのまま幕を閉じた。
次の日、あまり寝れずにかなり早く起きたナオはメグからお客さんの様子を見てくるようお願いされ、ラウの部屋へと入ろうとしたが、もう既に起きて身支度を済ませていたラウに驚きつつも声をかけると、
「オ、おはヨ!スゲーな!こんな早イ時間に起きてルなんテ!」
「お…おはようございます。いえ…ラウさんも早いですね。」
「ア、そうだ、言い忘れてたけどナ、ご飯の準備しなくてもいいかラ。一応自分の分あるカラ。」
と、仮面をつけた裏から言われた。
しかし、ナオはなんとなく嘘をつかれたという感じがした。
そして、すぐに嘘の理由に気づいた。
恐らく、ラウは何らかの理由で顔を見られたくなく、どうしても顔が露出してしまう行動を避けているのだと。 ラウがこの時間に既に身支度を終わらせているのも、こんな嘘をつくのも、この仮説を元に考えるとすべて合点がいく。
しかし、これにあーだこーだ言うのも野暮だと即座に判断し、特に何か言う訳でもなくメグの元へと戻り、会話内容を伝えようとしたが、なんとなく勘が働いていたらしく、すこし少なめに作っていた。
取り敢えず自分たちの朝食を済ませると、待っていたかのようなタイミングでラウがひょっこり顔を出し、
「ある程度外のヤツらが大人シクなるまでここで泊メテ貰エるカ?」
とか細い声で言ったのに対し、メグは
「当たり前でしょう!ここは旅館なんですよ。」
と元気に返した。それを聞いて気分がスッキリしたと思われるラウはそのままどこかへ出ていってしまった。
そんなこんなで時間が経っていき、気づけばあたりは暗くなっていた。
ぬるっと戻ってきていたラウがたまたま近くにいたナオに対して、
「ンーと、暇だっタら話シ相手頼めるカ?」
と突然聞いてきた。
「あ…ちょっと待っててくださいね、お仕事ないか聞いてきます。」
とっさに出た返事がこれだった。
ナオの心情的には簡単に人との距離を詰めるはずが無いのだが、何故かこのラウといういかにも怪しい旅人に対して謎の親近感を覚えてしまっている自分が不思議で仕方なかった。
断ってしまいたかったが、こう言ってしまった手前、確認しに行くしかなかった。
メグからの返答は想像通りだった。
いっその事、嘘をついて断る事も選択肢として浮かんでいたものの、何かよく分からない心理が働いたのか出来なかった。
渋々ラウの部屋へと向かうと、ラウがどっかりと座って待っていた。
「どうだっタ?やっぱリ、無理カ?」
なぜかナオにはラウの悲しい顔が見えており、それは自分の今までの経験によって他人の機微を何となく理解出来るのをしっかりと自分で理解していた。
こんな事を考えていたナオの答えはもうただ一つだった。
「大丈夫ですよ。」
この時、ナオは聞きたいことを聞いてやろうともう開き直ってラウとの会話を始めた。
「ラウさんって、何を目的に旅してるんですか?」
「ウーン、特に意味ナンカないナ。ただ楽しいカラしてるダケだナ。」
「ところで、外にいる魔物に襲われたらどうやって戦ってるんですか?なんか…武器使ったりしてないんですか?ラウさん…そこまで戦闘特化!って感じの体してないですし…」
ナオの言った通りラウはかなり華奢な体躯をしている。
ナオの疑問はラウと対面した時にきっと誰もが抱くであろう。
「エーット…ソノー…」
動揺しているのが目に見えて分かる。
「基本的ニハー素手ダケドー、ソレナリニ…武器モ…使ウカナ?」
ただでさえ片言な言葉に動揺が混じり、もはやギャグかの様にしどろもどろな返答に対し、
「あー、そうなんですね。ところで…」
と深く踏み込むのはやめて即座に他の話題に移そうとした時、それ以上に気になっていた事を咄嗟に言葉にしてしまった。
「なんで仮面付けてるんですか?見えづらそうですけど…。」
「あぁ、こノ仮面カ?えート、あー、タダのオシャレってやつだナ。ア、もしかシて顔が見たイのカ?」
「あ、いやそういう訳では無いんですけど、あの、その、えっと、単純に気になったというかなんというか…」
自分で分かっていたのに地雷を踏み抜いたかと焦るナオを特に気にもかけずにラウは、
「じゃア、顔を見てモ驚かナイって条件ナラ、別にいいゼ。」
「えーっと…やめときます。」
「そっカ、残念ダナ。」
「あの、失礼かもしれないんですけど…ラウさんの性別って?」
「男ダ。やっぱり分かリにくいノか良く女ト間違えられルんだよナー。まあ、別ニいいンだけどナ。」
「そう…なんですね。」
「ア、じゃあ質問いいカ?なんデ…」
二人はそうやって話を進めるに連れて少しずつ少しずつ打ち解けていった。 ナオにはなぜかこのラウが久しぶりに会う友人の様な気がしていた。 暫くたった後、ラウの部屋から出る時にラウは
「まタ、暇があっタらお話しようナ!」
と声をかけ、ナオもそれに頷いた。
それからしばらくの間、仕事の休憩時間にお話をして行くうちにだんだんと仲良くなって行った。
ラウの話し方なのかはよく分からないが、なぜか話していてて飽きない。 積極的にラウはメグにも話しかけており、次第にメグとラウの二人も仲良くなっていた。 ナオと共に何故かラウがメグの仕事を手伝うようにもなっていた。
そんなこんなで時間が経っていき、魔物が大人しくなって来た頃にラウは出発しようとしていた。
空は文句の付けようがない程に晴れていた。
「いやー、短イ間だったケド楽しかッタナー!また来るかもナ。」
「はい!また機会があればゆっくりしに来てくださいね!今度はちゃんとお客さんとして…ですね。」
「おウ!ナオも頑張っ…ン?なんか外がえラク騒がしいナ?」
「確かに…そうですね。何かあったのかな?」
ラウの準備が終わったところで外に出ると、そこには大量の人と不敵に笑っている男が立っていた。その男とメグが何か話をしている。
「さあ、折角の決闘なんです!観衆が居ないとですね!
さて、お相手はあなたなんですか?メグさん。」
メグが答えるより早くラウが割り込んだ。
「アタシがやル。」
「えっ?いや、でもラウさんを関係ない事に巻きk」
「久しぶりだナァ…体動かすノは…!」
獲物を目の前にした猛獣の様になったラウはもう話なんか聞くはずもなかった。




