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最弱魔術師

「それにしてもゲームとは思えないくらいのリアリティだよな。最新のゲームってこんなに凄いんだな。ビックリだ!」


目の前に広がる光景を見て俺はそう言う。

眼前に広がる草原は現実と遜色ないレベルだった。それほどにこのゲームは高い技術力が使われている。


「俺は日々兄の回復力にビックリだよ…」


颯太がこういうのも無理もない、先程までメンタルがやられて葵に縋り付くだけの男がここに来るまでにもう平常時の状態に戻っていたからだ。


「これも葵のおかげだな、ありがとな、葵」


「…うっさい!/////」


「お礼言っただけなのに…」


葵は最初は恥ずかしがっていたのだが今では開き直ってけもみみと尻尾を隠すことなく出している。そのせいか分からないがいつもより冷たい気がする。


「そういえば、日々兄は何の【魔術師】になったんだ?」


気を使ってか話題を変えるために颯太が聞いてくる。

【魔術師】、たしか『ユニーク』だったはずだ。


「『ユニーク』だ」


「それは種類だよな、俺は属性を聞いているんだが?」


「え、『ユニーク』じゃダメなのか?」


「日々軌、『ユニーク』っていうのはな、勉強で例えると文系と理系みたいな感じの大きく区切られているものだ。あと、颯太が聞いている属性はその中に含まれている教科みたいなものだ」


なるほどなるほどってことは俺はまだ自分の属性を知らないってことになるな。それにしても葵は教えるの上手いなー。バカな俺でも分かりやすい教え方だからほんと助かる。


「そういう事か、教えてくれてありがとな!」


「…ば、ばか!…日々軌のためじゃないし…」


「えー」


あれー、何かお礼言う度に徐々に冷たくなんのなんでだ。俺何かやらかしたか?

それに颯太も必死に笑いこらえてるしまじでどういうことだよ。


「はー、とりあえず日々兄は自分のステータス確認してみたら」


「ステータス?どうやって見るんだ?」


颯太そんなに呆れた目で見ないでくれ。初心者なんだ、わかってくれよ。


「…メニューを開けば項目があるからそれをタップするだけだ」


俺は颯太に言う通りにしてステータスを確認する。


名前︰ヒビキ Lv1 【鉄の魔術師】

HP 10/10 MP 50/50

筋力 5 防御力 4 敏捷力 5 器用力 4

魔力 2 精神力 25





そういう事か、【魔術師】の前に書いてあるやつが俺の属性なのかってことは俺の属性は…


「鉄属性か!」


すると途端に颯太と葵の顔が険しくなる。

ん?また間違ってたか?


「日々兄、鉄属性ってことは【鉄の魔術師】なんだよな?」


「そうだけど」


そういうと2人してため息を吐く。

ちょっ!?酷くないか!


「あのな日々軌、【鉄の魔術師】はな最弱魔術師で有名なんだよ」


「え!なんでなんだ?」


「【鉄の魔術師】は超近距離物理攻撃しか出来ないからだ!そして、このゲームは【魔術師】のゲーム、基本は魔術による属性攻撃ができるから物理耐性を持っている最初の敵も楽勝なんだけど【鉄の魔術師】は魔術による属性攻撃がほとんど出来ない。だから最初の敵すら一苦労するわけだ。それにβで唯一判明した魔術でさえMP消費量が多く、あまり役に立たないと言われているからだ!」


え!?【鉄の魔術師】ってそんなに弱いのマジかよ!!


「さすがに最弱はないんじゃないか?ゲームだったらPVPとかもあるだろ、それなら大丈夫じゃないのか?」


「あのな日々軌、【魔術師】は基本はみんな遠距離攻撃なんだよ。そこに超近距離物理が攻撃しにいってみろ。優れた敏捷力か回避が出来なければただの動く的だ。そんなのが勝てると思うか?ほとんどやつは無理だろ」


確かに無理そうだ。これは序盤からかなりきついな。いや、けど俺はNPCにオススメされた精神力を上げてあるじゃないか、これならいけるんじゃないか?


「いや、けど俺は精神力を上げてあるからかなりいいんじゃないか?」


すると2人は呆れすぎて声も出なくなる。

あれ、精神力って上げた方がいいやつじゃないのか?


「日々兄、それはない、あの不遇ステータスをわざわざ上げるなんて…」


「日々軌、何してんだよ!!それ、1番上げちゃダメなやつだからな!!あれはちょっと緊張感がなくなるだけのあってないような不遇ステータスだぞ!!」


「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええ!?」


こうして、初日にして最弱の魔術師、日々軌が誕生した。

面白いや良いと思った方はブックマークと下にある評価をしてもらえるとすごくやる気が出ます。

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