突然奪われた幸せと命
典型的に死ぬのは夢見る人の特権!!
というわけで死んでください。
――体が燃えるように熱い……。
痛い……熱い、そんな感情が一人の男子高校生の脳内で悲鳴をあげつつある日曜の午後。
交差点の歩道に散乱した車のパーツと自転車、そして荷台に積んでたパソコンやプラモデルと雑誌。
そして一番何より眼を引いてしまうのが血まみれの人体と、千切れた腕だろうか。
「……ぁ、あ……。」
彼は必死に生きようと出血量からは生存率の見込めない身体をモゾモゾと動かし、これまでの苦労の証のやこれからの楽しみを残った左腕でかき集めようとするも指先がピクリとしか動かない。
ギャラリーの悲鳴に遅れてやってきた救急車やパトカー、そして……体温を奪われる冷たさに潜む【死と言う概念】。
こ……こんなところで、死んで……たま、るか……。
脳裏に浮かぶのは今までの思い出であり、懐かしいのに見たくない感覚はこれからだと言うのに理不尽に……、なにも悪いことをしていないのに突如として命を奪われると言うことを受け入れられない自分の走馬灯。
自分がこんなところで死ぬなんて、断然受け入れられるはずがない。
(……?)
目の前が深紅に染まっている中で何か走馬灯以外のナニか不思議なものが視界に入っているのがわかるが、今の状況で見えているものに不思議と【不思議】という感情がわかない。
規制線を悠々と乗り越しては睨み付けるかのような鋭い目付きで彼を見つめる。
「なん……だ?」
東京のように都会じゃないので目にする機会は皆無のコスプレだろうか、黒と白をベースにしたドレスのゴシックロリータ……そして鎌。
(……そうなのか。)
死ぬことに諦めたくない感情がふつりと和らいだような気がした。
否、抵抗してもどのみち無駄だというのが本能的にでも理解できる。
万が一に一命を取り止めたとてこんな動かない身体になった以上は世間様の税金で生かされる、それよりなら死んだ方がまだマシってね。
「まったく、お前も不運だな。 だが、お前みたいに不運に死ぬやつは五万ともいるからな……。 まあ、今生は運がなかったと割りきってくれ。」
見た目よりずっと可愛らしい声が脳内に響き渡るもどうにもエコーがかかってしまったかのように聞こえ、視界もグニャグニャしてきた。
きっともう俺は死ぬんだ……、父さん……母さん、先立つ親不孝な俺を許してくれ。
大好きなばーちゃん、一足先に逝ってくる。
そして妹よ、泣くな……、兄貴が居なくても強く生き……ろ。
自分でもわかる心拍数の低下。
残された家族を思うと胸がすごく痛くて、もう感じるはずのない体温なのに、頬に熱いお湯のような涙が流れて止まらない。
「時間だ……。 なに、この鎌に実体はないし魂を回収するだけで痛みは無い。 安心して逝け。」
闇のような権現の少女は燻し銀のような鎌で思いっきり彼を斬り付けた。
【????・午後十三時四分四十五秒《死亡が確認されました》】
無事に死ねて良かった良かった、ハッピー……バッドエンドだよ!!