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.2


先程登場した、私のご飯。

もとい超貴重な薬草だが、正式名称がある。


ナパトテ・ダイステシィラ・キルテシイラ


噛まずに言えたか?

凄いな。

ナパトテ・ダイステシィラ・キルテシイラは長いので、

ナパトテ・キリル草とよく略される。


なぜ、そんな知識を兎が知っているのか。

理由は2つほどあるのだか、そうだな。

私が転生者だ、ということだろうか。




私が兎としてこの世界に生を受けたとき、

夢だと思う事にした。

兎を飼いたいという願望が産み出した、夢なのだと。

兎な両親や、兎な兄弟と意志疎通ができるようになると、その思いはより強くなった。

兎、しゃべらないし、と。

やがて、乳離れを機に私は現実と対峙した。


兎として初めて食べる固形物は

ニンジンではなく草だった。

伝説の薬草、ナパトテ・キリル草だ。

親兎が幸せそうにモシャモシャしていたので、美味しいのではと、前から目をつけていたのだ。

初の固形物候補として、ベリーのような木の実や、甘い香りのする花などを考えていたが、できるだけ柔らかく胃に負担がかからないものをと選んだ結果だ。

無論美味しさも重要なので、親兎に聞いてみた。


『父様、母様。始めては何を食べましたか?』


兎の会話というのは、実はテレパシーだ。

親兎に話しかけられたときは驚いた。

こう、頭に直接他者の思考が入ってくる感じだ。

兎に発声器官などついていないのだ。


『そうねぇ。私はパピアの花かしら。とっても甘い香りがしたから、思わず食べちゃったのよ。そうしたら、甘いのなんの。ちょっと戻しちゃったわ。』


『俺はナパトテ・キリル草だな。うまそうだったから、だな。』


ナパトテ・キリル草に決定。




草、ウマイ。

モシャモシャと口を動かす。動かす。動かす。

仄かな甘味と、野菜の旨味。

決して青臭さはなく、瑞々しいシャクシャクとした噛み応えが、絶妙な食感として伝わってくる。

食べる。ひたすら食べる。


モシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャモシャ・・・・・


心ゆくまで草を食べた私は遠い目をする。

草を美味しいと感じた。

そろそろ認めよう。

これは現実。夢じゃない。

まあ、割りとノリノリで兎生を満喫していたのだが。

だからこそ、宣言しよう。



私は兎。

名もない草食動物である。




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