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アトリボット  作者: Takanari
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失われたはずの宇宙属性

不定期更新ですっ

気づくと暗く湿った場所にいた。壁面についてある鉱石が輝き、僅かだが視界は確保できている。

「ヴェルト・ロヴォルツィオ・トーデス...」

頭に浮かんだ言葉を読み上げ、自分の名前だと認識できた。だが、それ以外の記憶は全く存在しない。識字と発音が備わっていることに一先ず安心した。

寝ていた身体を起こすと、自分の胴体が見える。華奢な体つきで、皮膚は白く透き通り、身長は170程度だ。二度ほど掌を開閉したが、違和感は無い。視線を辺りに巡らせると、広い祠のような場所の中心部にある石の台座に寝ていることがわかった。音がよく響き、着ている服の擦れる音が少し残る。

「ん......?」

足元に違和感を感じ、注意を向ける。

すると、その場にはしっかりとした掘りで三文字がえぐられていた。

「“生きろ”......?」


【旅立ち】

大きな石で塞がれた穴を見つけた。しかしどうも様子がおかしい。本来閉じ込めるのならば、外側からはめるように大きな石を置くはずだ。しかしこれはどう見ても内側から置かれている。それだと、閉じ込めた人間がこの祠の中にいることになるが、そんな気配はない。

「動かすにも、僕には...」

あまりにも大きい石に、力で動かすことは不可能だと悟る。しかしこれをどかさないことには外に出られない。しばらく思考にふけるも全く考えは出てこず、ヴェルト・ロヴォルツィオ・トーデスは大きな石に手をつける。すると、脳内に無理やり映像がインプットされた。そこでは、石の真ん中に意識を集中している自分と、次の瞬間に石が砕け小さくなるビジョンがあった。それを見たヴェルトは見よう見まねで、目の前にある石の中心部に向かって意識を集中した。すると、大きな石は地響きを鳴らし、なんども砕けながら小さくなっていった。黒く小さな球となった石は、意識を途切れさせたと同時に地に落ち、コロコロという余韻を残した。また、目の前に一転して燦々と照らす陽の光が差し込んだ。青く生い茂る草木の落ち着いた匂いが身体を包む。

歩を進め外に出て、状況を確認する。周りには草木のみで人工物がない。また、それをほのめかす匂いも跡もない。振り返り自分の後方を確認しても同様の感想だった。

「あれ...?祠......」

唯一の違和感は、先ほど出てきたはずの祠が、何の痕跡もなくなくなってしまったことだ。しかし、彼はその違和感を事実として受け止め、あまり気に留めないようにした。そもそも記憶が全くないのも、祠の穴にあった石の件も、この世界ではごく普通のことなのかもしれない。いちいち驚いていてはキリがないと悟った。

彼はこの先どうするかと考え始める。空腹感はない、眠気もない、性欲すらもない。一先ず人間がいそうな場所に向かって歩き続けようかと考えたところで、自衛の手段がないことに気づく。

「とりあえず、さっきの石のやつ、自由に使えるようにしよう」

目の前にあった木を見つめ、先ほどと同じように意識を集中させる。すると、何故か石の時よりも激しく、より小さく凝縮された。その音に少し驚きつつも、割と簡単に扱えることに安堵する。使用後の硬直や倦怠感はなく、この不思議な技の使用に、特にハードルが存在しないことが分かった。

「次は威力の調整だ.......」

次々と試せることは試していった。最大威力、最小威力、威力の強弱、酷使後の身体面、圧縮可能な対象、持続可能性、複数対象への同時使用などなど。それらを満足する程度に実験ができ終わったのは、祠から出て4日立った頃だった。この間一睡もせず、未だ身体的な疲れは存在しない。精神的にはもう飽きてきた頃だが。

「人里を目指そう......」

白髪をゆらゆらしながら歩をすすめる。歩きながらもふと思いついた試したいことを試しながら歩いた。

この数日間で自分の能力について知れたことの一部として、この力が重力と同類のものと推測できた。対象範囲は質量を持てば何でも可能で、すでに存在する重力を操ることも可能だった。なので、今足をつけている地からうける重力をなくし浮いて移動すればいいと思うのだが、思った以上に不安定で、かつ酔いがひどいため徒歩での移動だ。

歩き始めて数時間後、何か上から急激に降下してくる物体が見えた。かなり高いところから落ちてきたのか、とんでもなく早い。やっと視認できる位置まで来て、それが人間だと気づいた。初めての人間で、生きているのか死んでいるのか分からないが話を聞きたいため、助けることにする。

彼女が着地するであろう地面をまず無重力にした。細かい調整ができるようになったため、彼女自身に降りかかる重力だけ取っ払えた。空気抵抗で減速はしたものの、このまま着地すれば骨が砕けてしまう。今度は、頭上高くに生えている木の枝に意識を向け、重力を発生させた。これもまた彼女だけに作用するように働きかけたので、加速は激減し、着地寸前でついには止まった。頸動脈に反応があることから、生きていることがわかる。しかし、落下によるショックなのか何なのか分からないが、意識は無い。話を聞きたいため、彼女が起きるまで安静な場所に移し寝かすことにした。

「あ、そうだ」

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