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日常的非日常  作者: 本条真司
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第二話 魔術回路と五葉家(一)

その日の放課後

天羅は病院へと向かった

持病の一つである、紫電病の治療及び経過観察のためだ

「どう…?お姉ちゃん」

天羅は姉であり担当医である五葉椎那(しいな)に訊ねた

椎那は、天羅と同じブロンドの髪を、天羅のように長く伸ばすことなくショートボブにした髪を櫛でとかしながら

「微妙。回復傾向にあるといえばあるけど、ないと言えばないわ」

「…?よくわからない…」

「…天羅、恋してるわね?」

「な、なんで…知ってるの…?」

「紫電病は脳が発する生体電気信号を、体が増幅してしまう病気なのは知ってるわね?」

天羅は頷きを返し、椎那の次の言葉を待った

診断結果を差し出した椎那は、机の引き出しから紫電病の概要が書かれた資料を一緒に差し出した

「…?」

「37ページ12行目」

「…」

天羅は黙って言われたページを開いた

椎那は自分の脳を人差し指で示しながら説明を続行する

「そこに書いてあるように、紫電病は基本的に体の出力を高めるわ。生体電気信号の電圧と電流が並じゃないんだからそれはわかるわね?」

「う、うん…」

「人は恋をした場合と心理的に興奮…所謂、胸がドキドキする状態になると、その分脳が発する電気信号も増えるわ。通常の時にも異常電力なのに、恋をすると更に上がる」

「…つまり、人を好きになると…体の出力がおかしくなる…?」

「それもあるわ。酷ければ、体の表面に紫色の火花が飛び散るの。簡単に言えばショートして火花が飛び散る、ってことね」

天羅は、少しだけ紅零のこもを考えてみた

すると体の表面に、椎那が言った紫色の火花が飛び散り、地面に落ちた

紫電病の名前の由来は、体の表面に迸る紫電なのだ

「…恋、できない…?」

「そんなことないわよ?ただ、好きな人と二人っきりで密室だと保証できないわ。むしろ、相手を感電死させるかも」

「…つまり…?」

「子供は諦めなさい」

身も蓋もないとはこのことかな、と天羅は思ったが、口にすると小言が長引くので言わなかった

「わかった…。また、次の定期検診で…来るね」

「えぇ。お大事に」

天羅が待合室に移動した数分後、隣の診察室との連絡通路から紅零が入ってきた

「うぃーっす、定期点検に来たぞ」

「それは私の左義手のメンテ?それとも貴方の持病?」

「両方だ。まず義手をかせ」

紅零は持ってきていた工具箱を床に置くと、電工ナイフを取り出した

椎那は診察台におき、左腕の袖をまくった

人間の手に見える…というより、本物そっくりだ

初めて見て、これを義手と見抜ける人はいないだろう

「一応、霊力伝達系統と擬似神経、アクチュエーター全部見ておくが、他に違和感あるとこは?」

「特にないわ。始めてちょうだい」

「偉そうな…」

文句を言いつつも、紅零はナイフの側面を椎那の義手の手首に当てた

感染(INFECTION)

紅零が椎那に聞こえるか聞こえないか程度の声量でそう呟くと、ナイフが黒く光った

紅零のナイフを持つ右腕に黒い蜘蛛のような紋様が現れる

「ちょっとくすぐったいぞ。何、痛みは一瞬だ」

「くすぐったいのか痛いのかどっちなのよ…。……()っ」

椎那の顔が痛みに歪み、すぐに元の表情に戻る

心做しか、天羅と話してる時より感情豊かだ

「…霊力伝達系統…異常ナシ。…擬似神経…伝達ロス0.00327%…アクチュエーター…破損率4%…。だいぶ無理な運転してるな?」

「し、仕方ないでしょ…この病院の主執刀医なんだから。それに、壊れることは無いと信じてるわ」

紅零に笑みを向ける椎那を見て、多少の戸惑いを心中に浮かべる紅零の感情を感じて、クロガネは思案する


───いくら紅零が作った魔具とはいえ、魔術回路が搭載されてるんだぞ?何故、たかが人間が感染しない?


魔術回路というのは、この義手を動かすために使っている魔術を数式化したものを元に作られた回路で、紅零が作る魔具と呼ばれるものには大抵搭載されてる

そして、紅零がメンテナンスする時に使った異能《感染》によって作られているため、ただの人間が触れると感染し、紫電病にかかる


────まぁ、それを言ったら何故天羅は紫電病を生まれつき持ってるのかってことだな。まさか生まれた瞬間から体に魔術回路が搭載されてるわけじゃあるまい


疑念を振り切って、クロガネは再度眠りについた

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