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色を司りし者  作者: 彩 豊
第二章 青の国の異常
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2-2-6(第99話) 仕返しとラピスからの依頼要請

今回の話は長くなってしまいましたが、最後まで読んでくれると嬉しいです。

「う~ん♪今日も美味しいよ、お兄ちゃん!」

「…ん。うまうま♪」

「やはりホットケーキは最高ですね♪」

「さすが、ご主人様です」

「特にこの激辛ソースをかけて食べると美味しいです!」

「「「「「それはない!!!!!」」」」」

「えぇ!??」


 俺達は今、夕飯を食べていた。

 夕飯はみんな大好きホットケーキである。

 正直、俺はあまり食べたくないのだが、みんなに、

「食べたいものはないか?」

 と聞いたら、

「「「「「ホットケーキ!!!!!」」」」」

 と、即答された。

 なので、俺は文句言わずに、むしろ、某アニメソングを鼻歌で歌いながら作っていた。

 ふふふ。これから俺のちょっとした復讐劇が始まるぜ。

「…あの。どうして僕のご飯だけ、干し肉と野菜スープなのですか?」

「え?それは………これがお前の舌に合わないと思って、代わりのものを出しただけだ」

「そ、そうですか。ありがとうございます…」

 そう言って、ラピス=コンバールは浮かない顔をしながら、干し肉にかぶりついていた。

 一方俺達は、ホットケーキをそれぞれの食べ方で食べていた。

 ハチミツやジャムをかけて食べたり、何もつけずに食べたりしている。

 ま、約一名、激辛ソースをかけて笑顔で食べている人もいるけど。

 俺も久々にホットケーキを食べるか。

 お!?結構美味い!

 ここまで美味かったのなら、もっと早くから食べていればよかったな。

 そう思いながら、食べていると、

「あれ?俺の分のホットケーキは?」

 全員に3枚ずつ焼いていたので、俺にはまだ2枚あったはずなのだが…?

 ふと、隣にいたルリを見てみると、頬が膨らんでおり、その膨らみから、リスを連想させる。

「…ルリ、俺の分のホットケーキ、食べただろ?」

「た、食べてないよ!?そんな訳ないじゃん!」

「…あれ?ルリ、お前の口元に食べかすが付いているぞ?」

「嘘!?ちゃんとばれないように食べて…」

 ちなみにラピス=コンバール以外、ホットケーキを食べているので、

「あ、ほんとだ。食べている時に付いちゃったのね」

 みたいな感じで返すのが無難だろう。

 それを、あんな返しをしてしまうなんて、なんておバカさんなんだ。

 そして、そんな空気を察したのか、

「あ…あ!ああ!?」

 ルリ自身も驚いていた。

「…んで、何か言うことは?」

「ごめんなさい!もうしません!」

 綺麗な平謝りだ。

 ま、初犯ってことで許してやろう。

 こいつは許さんがな。

 心が狭いとか笑うやつもいるだろう。

 そういう奴は思う存分笑ってくれ。

 こういうことでもしないとやってられないからな。

 俺はラピス=コンバールの羨ましそうな視線を無視し、追加のホットケーキを焼いて食べた。

 う~ん♪やっぱり蜂蜜かけて食べるのが一番だ♪

 俺はイブやクリム、リーフ達の雑談を聞きながら笑顔で食べた。


 夕飯後、片付け、入浴を済ませた。

 野外で入浴することによほどの抵抗があったのか、ラピス=コンバールは激しく拒否した。

 最初、何故そこまで?と深く考えるが、そこは個人の自由だし、強制はいけないよな、と思い、あっさり引き下がる。

 そして、就寝前、


「それじゃあ、今日は俺とこいつと見張りするから、ゆっくり寝ててくれ」

「ちょ!?僕は…」

「ご主人様。私も一緒に…」

「駄目だ。クロミルは毎日この牛車を引いているんだから、夜くらいは休まないと」

「だから…!」

「……ご主人様がそう仰るのでああれば…」

「うむ。分かればよろしい」

「僕をこいつ呼ばわりするのはひどくないですか!?」

「うるさい」

「ひどい!?」

「…本当に大丈夫なのですか?」

「大丈夫だよ、クロミル。いざとなったら、な?」

「な、じゃありませんよ!一体、僕に何をするつもりですか!?」

「………」

「無言の間やめて!」

 

俺とラピス=コンバールのコントみたいな会話が意外にも弾む。

俺、人との会話って、苦手なはずなんだけどな。


「…やっぱり、ルリも見張り…」

「いや。ルリには明日やってもらうから今日は寝ててくれ」

「「「「「でも………」」」」」

「…だったらイブ、今日の見張りを頼んでいいか?」

「…ん。任された」

「これでいいだろ?それじゃ、お休み」

「「「「…お休み…」」」」


 おずおずと、4人は牛車に戻る。


「…さて、俺もお前に聞きたいことが色々あるんだが、覚悟はいいな?」

「…なんでそんなに挑戦的なの?僕が何か悪いことしたとか?」

「「………」」

 俺とイブは無言になる。

 …まさかこいつ、本気で言っているのか?

 いや、俺らがあの戦争に深く関わっていると分かっていないからこんな態度をとっているのか?

 あり得るな。

 だったら、何気なく、会話を誘導してみるか。


「そう言えばさ、風の噂で聞いたんだけど、青の国って、戦争したのか?」

「!!?そ、そうだけど、何で知っているの?」

「俺も青の国に向かう途中でさ、青の国の軍団が見えてさ、そうなのかなって…」

 俺は視線だけで

“話合わせてくれ!”

 と、イブに伝える。

「…ん。あの軍勢は驚いた」

「あ、やっぱりそう思う?実は本気であの国を落とそうと思っていたんだって。僕はそこまで乗り気じゃなかったけど」

「…ふ~ん…」

「…なるほど」

 つまりこいつは元々戦争を望んでなかった、ということなのか?

「だったら何故、お前は戦争に反対しなかったんだ?」

「反対はしたよ?でも僕以外の全員が、戦争に賛成しちゃって、僕一人では止められなかったんだ」

 そう言いながら、下を向き、少し暗めの雰囲気を作り出すラピス=コンバール。

「それがどうして、冒険者から襲われることに繋がるんだ?」

「それが………」

「悪い。言いづらいことなら強制は…」

「あの!その前に1つだけ、お願いしていい?」

 少しだけ、こいつ、自分の立場分かっているのか、と言いたくなったが、目が真剣だった。

 俺はまた、イブに視線で

“どうすればいい?”

 と、答えを聞いた。

 するとイブは、

「…あなたは、何を出せる?」

 ラピス=コンバールに語りだす。

「え?」

「…確かに、アヤトが味方になれば、高確率であなたの悩みは解決すると思う。けど、それはあなたの都合でしかない。もっと言えば、私達に何の得が無い。断られても、あなたは何も文句が言えない。ここまで分かる?」

「え?ええ?あ、はい…」

「おい!俺はそこまで万能じゃ…!」

「アヤトは黙ってて」

「あ、はい、すみません…」 

 一体俺って…。

「要するに、あなたがアヤトに依頼して、報酬を提示するのなら、アヤトはあなたの依頼を受けるかもしれない。アヤトは冒険者だから」

「え?そうなのですか?」

「そ、そうだけど…?」

「てっきりあなた方のしつj…!い、いえ!何でもありません!」

「…ならいい」

「???」

 今、何が起きたんだ?

「…それで、まず依頼を受けるには、詳細な情報と報酬が何かを知ることが必要」

「た、確かに…」

「…さ、話して」

「え?あ、はい!えっと、どこから話しましょうか?」

 ラピス=コンバールが悩んでいる中、イブが近づいてきて、

「…これでいい?」

 と、小声で聞いてきた。

 俺ではここまで出来なかったな。

 いくつか不満はあったけど。

「報酬の方は、王族も使っている避暑地があります。そこをあなた方だけの貸し切り、ということでどうでしょう?」

 すると、イブはラピス=コンバールの所に行き、何かひそひそと話し込んでいた。

 …いいんだ。俺はいつも、会話においては蚊帳の外なんだ…。

 俺が多少自己嫌悪に陥っていると、イブは俺の隣に戻り、

「…一日三食おやつ付きで全額そちらが負担。防犯面は?」

「は、はい!ばっちりです!今は口約束ですが、必ず実現させて見せます!」

「…ん。もし、約束を(たが)えたりしたら…」

「違えたりしたら?」

「…お前ら全員奈落に落とす。慈悲は一切かけない。分かった?」

「!!?わ、わっかりましたぁ!!!」


 この時俺はこのイブの一言で、色々な感情が沸き起こった。

 まずは恐怖。

 さっきの一言で、さすが、あの魔王、ゾルゲム=デビルの娘。あの息子を殺されたときに放たれた殺気そのものだ。

 結婚したら、絶対に尻にしかれそうだな。

 ………そんな夢物語、想像するだけ無意味だな。

 次に感心。

 俺では依頼を受けたかもしれないが、報酬のことまで頭が回らなかった。

 しかも、口約束だからと言って、一切容赦することがない姿勢には目を見張るものがある。

 さすが王女。こんな時のための会話術も会得しているってことなのか。

 普段ホットケーキ食べていたり、クリムと頬の引っ張り合いをしたりしている様子からは想像できないな。

 最後に喜びだ。

 俺達の事を考えながら話してくれたことに素直に感謝の気持ちしか出てこない。

 イブにとっては当たり前かもしれないけど、俺にはない能力だ。

 今後も見習おう。


「…これで報酬はいい?」

「ん?…あ、ああ。そうだな。報酬はいいと思う」

「…分かった。次に依頼内容を話す」

「…え?僕がですか?」

「お前以外いないだろう」

「またお前って…、もういいですけど。それでは依頼内容なんですけど…」

 ラピス=コンバールは少し息を整えた後、

「青の国を救ってくれないかな?」

 はっきりと語った。



「え?もちろんことわ…」

「アヤトは少し黙って」

「ええ!?なんで…!?あ、はい、すみません…」

 俺が少しでも口を挟もうものなら、イブが殺気を俺にぶつけてくる。

 俺としては、そんな依頼なんて受けたくないのだが、イブはおそらく、話を聞いてから考えてもいいのでは?と思っているのだろう。

 ま、多分だけどね。

 俺は聞き役に徹しよう。


「…それで、どういう事?」

「はい。実は何者かが王家を乗っ取り?洗脳?されたんです!」

「「は??」」

 俺とイブは開いた口が塞がらなくなっていた。

 え?実はこいつ、青の国の差し金なんじゃないかと思ってしまうくらいの発言だ。

 だが、言葉がどうにも引っかかる言い方だ。

 何故、いちいち疑問形なんだ?

「…何言っているの?」

「えっと、実は話が少し複雑で、一から説明する必要があるのですけど…?」

「…別にいい。まだ夜は明けない。みんなが起きてくる前に話して」

「あ、はい!実は…」

 そう言って、ラピス=コンバールは語りだした。

今週の投稿はこれでお終いにしたいと思います。

来週はついに100話目で、記念に何かしたいとは思っていますが、具体的に何をすればいいのか分かりません。

 また、次回の話から、新キャラが多めに登場します。

 ついでに彩人視点じゃなく、作者本人としては彩人視点で書きたかったので少し残念ですが、ぜひ読んでくれると嬉しいです。

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