2-2-4(第97話) とある二人の怒り
「「「…」」」
俺が淡々と言った時、震えていた野郎はさらに震え、クロミルとリーフは発狂した奴らをただ見ているだけだった。
俺は震えている奴の心情を一切考えず、
「お前もああはなりたくないだろ?」
すでに廃人に近いやつらを指差して、質問した。
「な、何が目的だ!?」
「何がって…。最初から言っているでしょ。何で俺達を襲ってきたのか、その理由を教えてくれねぇか?」
「は、はい!はな、話す!話しますから!あれだけはやめて下さい!!」
男は動かない体を使って、敵意がないことをアピールしながら、俺に話しかけてきた。
大体男が話していたのは以下の内容だ。
まず、この男達は冒険者ギルドに登録している冒険者だという事。
そして、今回は、「亡国した元王女、ラピス=コンバールを捕まえる」という依頼を受け、このラピス=コンバールを追っていたという事。
そこに偶然にも、俺達が居合わせて、返り討ちにあった事。
俺達はフムフムと頷きながら聞いていた。
そして、話が終わったタイミングで俺は聞いた。
「それで、なんでリーフやクロミル達を犯そうなんて話がでたの?」
「すいませんでしたぁ!で、出来心だったんですぅ!」
俺はその一言で理解した。
こいつらは、私利私欲で、リーフやクロミル達を犯そうとしたのだと。
行き場のない怒りを心の内にむりやり収め、俺はとある質問をする。
「…ところで、なんで彼女らばっかり見て、犯そうなんて考えていたんだ?ちなみに黙秘権は無いから、ちゃんと話せよ」
「………巨乳だからだ」
ピクピク。
とある二人の目の色が変わり始める。
その二人はゆっくりと男に向かって歩き始める。
リーフとクロミルは二人の豹変した雰囲気に驚き、何も言わずに二人に道を譲る。
ルリは俺の近くに寄り、「お兄ちゃん、なんだかあの二人、怖いよ…」と、俺の服の袖を引っ張りながらブルブル震えていた。
ルリ、安心しろ。俺も怖い。
赤髪の女性は腕に赤魔法の【身体強化】をかけたらしく、腕が赤く光っている。
紫髪の女性は魔力で腕を形成し始める。その腕は一本だけだが、どこぞの千年杉のような太さ、大きさだった。
「イブ。今回は休戦して、この馬鹿を滅ぼしましょう」
「…ん。今回は激しく同意。胸でしか価値を測らないやつは全員、消す」
瞬間、クリムとイブの背に風神雷神の様な顔が見えた気がする。
俺と同様に怯えているルリ、リーフ、クロミルも同じものが見えている気がする。
こんな空気の中、俺が出来ることは、
「…クリム、イブ。やり過ぎるなよ?」
と、言うことしか出来なかった。
返事をしなかったので、あの男の生死が少し心配だ。
ちなみに、ラピス=コンバールは男達の声が聞こえた始めた時点で泡を吹いて気を失っていた。
よほど怖い目にあったのだろう。心なしか、顔色が悪いように見えた。
…もしかして、クリムとイブの怒りに当てられて、気絶したわけじゃないよな?
まさかな。
「やり過ぎは駄目だと言ったよな?」
「「悪いとは思いますが、後悔はありません!!」」
今俺は、暴走した二人、クリムとイブを正座させて、説教中である。
あれから二人は、襲ってきた男達全員を赤い液体まみれにしたのだ。
いくら襲われたからと言って、過剰防衛な気がしてならない。
リーフとクロミルは馬車の点検、ルリは一応、ラピス=コンバールの見張りを頼んでいる。
「悪いと思うなら、少しは自重したらどうだ?」
「「それはできない」」
「…なんでだ?」
「胸の大きさでしか価値を測れない奴は制裁を加えるべきです!」
「…クリムの言う通り、我々は制裁を加えただけ。自分達が悪いんじゃない。あのクズ達が元凶」
「まさか…、アヤトも胸の大きさで女性の価値を決めるのですか?」
「…どうなの?」
息の合った言い訳もそうだが、いつの間にか俺は責められていた。
なんでこんなことに…。
「お、俺は巨乳だろうが貧乳だろうが関係ない。好きになった人の胸が一番だ」
俺は無難に返した。
自分でもヘタレだと実感してしまう程のヘタレ発言だと思う。
笑いたければ笑えばいいさ。
この場で死ぬよりましだからな。
「…まぁ、アヤトがここのゴミよりましで良かったです」
「…アヤトにしては、無難な返し」
「…あんがと」
ここでも無難な返しをしておく。
余計なことを言ってしまえば、怒りの矛先は俺に向くだろう。
そんな面倒くさいことに巻き込まれたくないからな。
「そんなことより聞かなきゃいけないことがあるだろ?」
「それって…?」
「ああ。それはお前の事だよ、ラピス=コンバール」
そう言って、俺はラピス=コンバールに視線を移す。
「…そうですね。では、さきほどの続きから話します」
そう言って、ラピス=コンバールは語り始める。
「改めて自己紹介します。僕は青の国の第四王子の…、じゃなかった第一王女のラピス=コンバールと申します」
その言葉に、クロミル以外の全員がピタリと動きを止めた。
ラピス=コンバールの言葉に違和感を持たずに。
今週の投稿はこれで終了です。
今日、感想が送られました。
送ってくれた人様、ありがとうございます!
ご指摘された点は…、正直、自分でも読み返してみて、
「…確かにそうだよなぁ…」
と思ってしまう程です。
ですが、こんな作品でもちゃんと読んでくれたと思うと、とても嬉しかったです。
今後とも、楽しく読んでくれると嬉しいです。