2-2-2(第95話) ボロボロ少女と招かれざる者達
…これは一体状況なのだろうか?
牛人の村を出てから数日、順調に修行をしつつ、旅を続けていた俺達に、ボロボロの人が森から現れた。
服装は…とても森の中を歩くには不向きなロングスカートに、ヒールが高めの靴を履いていた。どちらも傷だらけでボロボロだ。
それに、見た目からして、荷物もほとんど持っていないように見える。
一体、こんなところでボロボロになりながら、何をしていたんだ?
それに、なんかふらふらしているし、大丈夫なのか?
「…なぁ。あの人、大丈夫かな?」
「…見ただけではなんとも言えませんが、かなり危険な状態かと…」
「…そうか。クロミル…」
「お任せください、ご主人様。後は私にお任せください」
「…ありがとよ」
俺はクロミルの読心術に内心驚きながら、俺はボロボロの少女に近づき、
「大丈夫か?」
と、声をかけた。
すると、
「…た、す、け…、て…」
と、とても弱々しい声で返された後、ボロボロの少女は意識を手放していた。
「その子、どうするつもりなの、お兄ちゃん?」
「…ほんと、どうしようか…?」
「…何かあったのですか?」
「…一大事?」
「…ふぇ?な、何がどうなって…?」
馬車にいたクリム、イブ、リーフも馬車が止まったことに疑問を抱いたのだろうか、馬車から頭を出し、何かあったのかと聞いてくる。
というかリーフさん?今まで寝ていたんですか?もう昼になりますよ。
とりあえずやることは、
「この子の治療をしてから、お昼食べようか?」
「分かりました、ご主人様。私も手伝います」
「お兄ちゃん!ルリも頑張るよ!」
「私は周辺を確認してきます」
「…私もクリムと同じく、周辺の確認をする」
「私はアヤトの昼食の手伝いを!」
さて、この子は一体何者なんだろうか?
俺はそんな疑問を持ちながら、このボロボロの子の治療を始めた。
「助けて頂いてありがとうございました!!」
ボロボロだった少女はあらかじめ買ってあったであろう誰かの服や靴を身につけて、平謝りしていた。
正直、助けるべきだったのかどうか悩んでしまったが、正解だったようだ。
…せめて、昼飯の途中で平謝りするのはやめてほしいなぁ。
「あの~。あなたは一体…?」
「…誰?」
気を効かせてくれたのか、俺の代わりにクリム、イブの2人が聞いてくれた。
俺はボッチだったから、イブ達みたいに、話をふるのが苦手なんだよ。
そもそも、他の人と話をする機会そのものがほとんど無かったんですけど。
…今はそんなことより、この子のことだ。
「はい!僕はラピス=コンバールと申します!改めて、助けていただき、ありがとうございます」
「…コンバール?」
「はい。そうですが、何か?」
「…どこかで聞いた覚えが…?」
「き、気のせいですよ!それより、今はこんなことしている場合じゃございません!一刻も早くこの場を離れないと…!」
ラピス=コンバールと名乗った少女が言い終える前に、
「お兄ちゃん。なんか、変な奴らに囲まれているよ」
と、ルリが真剣なトーンで俺に話かける。
俺もその言葉を聞き、周りを警戒する。
リーフに至っては、さっきまで手にしていた食器類を置き、レイピアを構えていた。
「ここでは戦いたくないんですけどね」
「まったく、リーフ様の言う通りです。ここには大切な方達が食事をなさっているというのに…」
クロミルなんかは、自分が使っていた食器を洗って片づけ、静かに怒っていた。
みなさん。対応が早いですね。
王女2人は今ものんきに食事中ですよ。
俺も戦う準備をしなくちゃな。
「おい!ここにいる女全員を俺達に引き渡せ!」
さて、こいつらをどうしようか。
俺はそんなことを考えながら、ゆっくりとその場を立った。




