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色を司りし者  作者: 彩 豊
第2色 青の国 第一章 白黒牛人を助けし者達
93/546

2-1-21(第93話) 牛人の名前、決定!

2話続けて長くなってしまいました。

楽しんで読んでくれれば幸いです。

 あれから時刻は夕方。

 俺はあの頭痛から目が覚め、牛人の村の住人達と口論になっていた。


「だーかーらー。そのままでいいっていっているだろ!」

「いえ!是非ともこれに変えさせて下さい!これにさせて下さい!」


 何で揉めているかというと、

「この“牛雄アヤトの村”に村の名前を変更させて下さい!」

「だから、何度も言っているだろ!ダメだって言っているだろ!!」


 今後の牛人の村の名前の改名についてだ。

 俺としてはそのまま“牛人の村”でいいと思うのだが、牛人達はそれが我慢できないらしい。

 具体的には、村の名前に俺の名前、つまり、アヤトを入れたいらしいのだ。

 そんなことは絶対にさせない!

 そんなことをすれば、俺は年がら年中、頭を悩まされることになるだろう。

 だが、牛人の村の住人側としては、牛雄である俺の名前を入れなければ、一族の名誉に関わるらしい。

 ちなみに牛雄というのは、牛人の窮地に助けに来てくれたから、牛雄、だそうだ。

 英雄やヒーローを牛人っぽくアレンジした感じなのかな?

 俺はそんなことを考えながら、討論は続く。


「それでは間を取って、“アヤト様と牛人従者の村”っていうのはどうでしょうか?」

「お前らはどことどこの間を取ったんだよ!?絶対にそんな名前にさせないからな!!」

「「「そ、そんな!??」」」

「だからなんでそんながっかりしているんだよ!??」


 俺の心の平穏を賭けて。



「う~ん!どれもこれも美味しいですぅ!」

「確かに、この飲み物もすごく美味しいです」

「…美味♪」

「このお肉、美味しい~♪」

「…確かに…」

「喜んでいただけて、何よりでございます」


 俺達は今、少し早めの夕飯を牛人の住人達と一緒に食べていた。

 大きなテーブルに所狭しに並べられている料理の品々。

 何かの骨付き肉、巨大な鍋で作られた煮込み料理等々、どこぞのアニメで見たことあるような料理が多々ある。

 そして何より、前食べた時よりとても美味しく感じる。

 心にゆとりがあるからだろうか?

 こんな料理、地球にいたら、一生食えなかっただろうなぁ~。

 それに、

「アヤト様!是非、この“ダリシアン”も食べて下さい!」

「あ、ずるい!アヤト様!こっちの“ステルム”も美味しいですよ」

 こう言いながら、“ダリシアン”と呼ばれた骨付き肉と、“ステルム”と呼ばれた煮込み料理を俺に食べさせようとしている。

 こんな形で女の子に囲まれるとは思わなかったな。

 俺はこの状況に喜んでいたが、この状況をよく思わなかったのか、

「「「………」」」

 3人の女の子は俺を睨んでくるが、そんなことは無視だ無視。

 俺はこの幸せを噛みしめながら、美味しい夕飯を堪能した。



 後日。

 俺達は町「ミナハダ」に向かうため、馬車の準備をしていた。


「…よし!こんなものか…」

「はい!食料も飲み物もちゃんと積み込みました!」

「馬車に異常、ありませんでした!」

「…うむ、ごくろうであった、クリム」

「ちょっとイブ!何一人だけ楽をしているのですか!イブも手伝いなさい!」

「…むぅ」

「お兄ちゃん!準備、ほとんど終わったんじゃない?」

「…リーフ。ルリにも手伝わせてやってくれないか?」

「はい!ルリちゃ~ん?さぁ、こっちで一緒に馬車の点検、しましょう?」

「え~?めんどくひぃ!??わ、分かったから!手伝うから!そんな顔しないで、リーフお姉ちゃん!」


 リーフはルリを引き連れて、馬車の点検をしに、馬車の所に戻る。

 一体、ルリにどんな顔をしたのだろうか。

 気になる…。


「…本当に、この“牛雄アヤト村”から出ていかれるのですか?もっとゆっくりしていってもいいのですよ?なんなら、一生いてもらっても…」

「俺も目的があって旅をしているから、いつまでもこの村にいるわけにはいかないんです!それに、この村は牛人の村っていう名前があったんじゃなかったのか!?」

「そんなことより、本当にいいのですか?」

「何が!?」

 俺も若干切れ気味に答える。

「私達牛人全員、アヤト様一行に命を救われました。なので、我々一同、アヤト様の旅のお手伝いをしたいと思っております。それなのに、アヤト様は我々を必要ないと申されました。我々はもう、要らない子なのですか?」

 そう言って、牛人全員が俺のことを上目遣いで目をウルウルさせながら見てくる。

「そ、そんなことをしても、旅には連れていってやらないからな!」

「「「ブーブーブー」」」

「そ、そうです!ご主人様にお仕えするのは私だけで十分ですから!」

「ふん!そんなこと言うなら、もちろんあるんでしょうね?」

「な、何がですか?」

「名前だよ」

「「えっ?」」

 俺と牛人は同時に驚く。

 そう言えば、なんだかんだあって、名前の件、すっかり脳から抜け落ちていたな。


「名前も無いような牛人なんて、いないも同然ですよね、みなさん?」

「「「そうだーそうだー!!!」」」

「そ、そんなことありません!ご主人様は立派な名前を既に考案済みです!」

「えっ?」

 俺、そんなこと、一言も言った記憶、無いんですけど?

「…本当なのですか?なんか、口からでまかせを言っているような気がするのですけど…?」

「そ、そんなことはありません!ご主人様はもう、私に素敵な名前を既に考え済みですよね?」

「え?………そ、そりゃあもちろん、既に考えてあるよ?」

「そうなのですか!??その名前とは何ですか!?」

「どんなの、お兄ちゃん!??」

「…ルリ。なんでいるんだ?」

「お兄ちゃん!名前は重要なんだからね。ちゃんといい名前、考えてあげなきゃダメなんだからね?」

「も、もちろん、いい名前を考案済みさ」


 その言葉を皮切りに、

「それは気になりますね」

「そうですね。旅の仲間として、これは聞き逃すわけにはいきません!」

「…ん。クリムに同意」


 あれ?何か、どんどんハードルが上がっている気が…?


「これはどんな名前なのか気になります」

「「「気になる気になる!!!」」」

 いつの間にか、村の入り口に全員集合していて、俺に視線を送る感じになっていた。

 この状況だと、逃げることはできないみたいだな。


「「「なっまっえ!!!なっまっえ!!!」」」

「………」

「「「なっまっえ!!!なっまっえ!!!」」」


 …どうしよう?

 こうなったら、今、ここで名前を考えるしかないな。

 牛人は、白と黒の体毛があるから、出来れば白と黒を名前に取り込みたいな。

 そうだな…シロクロ?クロシロ?

 駄目だな。

 次は白い物と黒い物から考えてみるか。

 え~と…、ミルクと墨から、スミルク?

 …駄目だ。俺のセンスが絶望的に無さ過ぎて、まじで泣きたくなる。

 

「え~と。もしかして、名前、考えて無かったり…?」

「そ、そんなことは無いぞ!ちゃ、ちゃんと考えてある!」


 俺は思っていることと真逆の言葉を牛人に言いながら、必死に名前を考える。

 …どうしよう。

 とにかく、それらしい名前を考えなくては!

 白、黒、白、黒………。

 ミルク、墨、ミルク、墨………。

 駄目だ。考えれば考えるほど、訳分かんなくなる。

 白墨?黒ミルク?白ミルク?黒墨?

 …あれ?俺は今、何を考えているんだっけ?

 あ。牛人の名前だった。

 やばい。本格的に何が何だか…?


「…すいませんでした、ご主人様。私の些細な願いなぞ気にしないでください…」

 ど、ど、ど、どうしよう!??

 こんな悲しい顔をされるくらいならいっそのこと、適当な名前を…。

 いや駄目だ!ちゃんとした名前を考えてあげないと。この牛人の一生がかかっているのだから、慎重に考えないと!

 え~と、う~んと…。

 俺はこれまでのイメージから、どんな名前がいいか、必死に考える。

 多少の知恵熱も気にしないほど、俺は必死に考えた。


 結果、

「………クロミル。うん、クロミルだな」

「…クロミル、ですか?」

「そ、そうだ!お前の名前は今日から【クロミル】だ!」


 俺はここぞとばかりに声を張り上げる。

 その声は周りの人にも聞こえていたようで、


「いい名前だと思います」

「そうですね。なんか強そうな名前で、いいと思います」

「…クリムの感想はともかく、アヤトの考える名前はいいと思う」

「さっすが、お兄ちゃん!いいと思うよ!!」


 みんな、思い思いの声をかけてくれる。

 だが、本人の感想を聞いていないことに気付き、

「ど、どうかな?」

 俺は直接聞いた。

 正直、これで駄目、とか言われたら俺の心はズタボロにされ、後三日間は引き篭もりと化すだろう。

 さて、返事は如何に?

「…いいです。とてもいいです。ありがとうございます!!」

 牛人、否、クロミルはその名前を大層気に入ってくれたみたいだった。

 良かった~。

 本当にこの名前を気に入ってくれるのか、 内心、すごくドキドキしていたんだよね。


「…やっぱり、いい名前をもらっていたのですね。羨ましいです。すごく羨ましいです」


 名前を考えるこっちの身にもなってほしいものだ。

 

「…ということです。みなさん、分かってもらえましたか?これが、私とあなた方との差です」

「「「ちぇー」」」


 …みんな、生まれた時に名前を考えてもらわなかったのだろうか?

 それとも、名前をつけることに何か特別な意味が…?


「それにしても、やはり…」

「うん?何か言いたいことがあるのか?」

「い、いえ。た、大したことではないので、気にしないでください」

「???」


 まぁ、大したことじゃないっていうなら、別にいいか。

 クロミルは…、何か、勝ち誇った顔をして、他の牛人達を見ているな。

 牛人の村の牛人達は、クロミルを悔しそうな顔で見ているな。

 これはもしかして、目には見えない、女の闘いなのか?

 …下手に口を挟むのはよそう。

 そして、某国と某国との冷戦のような視線だけの闘いが数分続き、


「…すいません。こんな我が儘言ってしまっては、出発しづらいですよね?」

「え?え、ま、まぁ…そんなことは、ないよ、うん」


 本当はすごく出発しづらいのだが、言わないでおこう。


「それではアヤト様!我らが牛雄アヤト様に、栄光あれ!」

「「「モー!!!」」」

「…」


 どうしよう。

 めっちゃ恥ずかしい!

 そして、どう返せばいいのだろうか?


「か、必ず俺達はこの村、牛人の村へと帰ってくる!だから、それまでに、全員が誇れるような村にしてほしい!」

 とりあえず、こんなところか。


「我ら牛人族にも、栄光あれ!」

「「「モー!!!」」」

「アヤト様!必ずや、この牛雄アヤト村を世界一の村にしてみせます!」

「なので、またこの村に来てくださいね!」

「「「いいですね???」」」

「お、おう…」


 …ま、まぁ、下手に落ち込まれるよりましか。

 俺は自分にそう言い聞かせ、納得させる。


「じゃあみなさん、お元気で!」

「また、どこかで会いましょう!」

「…ん。大変お世話になった。また来る」

「牛人姉ちゃん達の料理、また食べに来るね!」

「…みな様。ここまで私を育ててくれて、ありがとうございました。牛人族として、恥じない旅をしたいと思います」


 クロミルに至っては、もう涙を目にいっぱい溜めながら、感謝を述べる。

 こういうクロミルはあまり見ないな。

 今のうちに目に焼き付けて…、


「…ご主人様も何か一言言ってあげて下さい」

「え?俺?」


 もう十分言った気がするんだけど?

 さらに言えば、生き恥も結構さらした気が…。

 だが、クロミルのその一言でまたもやみなの視線が俺に集まる。

 そんなに注目されても困る。

 俺は少し考えた後、

「それじゃ、元気でな♪」

 と言った。

 それに対し、牛人達は、

「「「はい!!!いつまでも、お元気で!!!」」」

 と迎えてくれた。

 俺達はこの言葉を背に受けて、牛人の村を後にした。

今週の投稿はこれで終わりにしたいと思います。

また、今週の投稿した話はどうだったでしょうか?

ようやく、この作品らしさが出せた気がします。

感想、ブックマークの方、よろしくお願いいたします。


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