表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
色を司りし者  作者: 彩 豊
第2色 青の国 第一章 白黒牛人を助けし者達
92/530

2-1-20(第92話) 久しぶりのアイツ

今回の話も、長くなってしまいました。

是非、読んで下さい。


「……き…。……と」


 う?なんか聞こえてくるな。


「おき…。あ…と」


 うるさいなー。今は寝ているのだから、邪魔しないでほしいんだけど。


「起きろ!この馬鹿彩人!」

「ふんげぇ!??」


 いったぁ!?

 なんか、ものすごい衝撃が後頭部を襲ったような…?

 


「おい!俺の後頭部を思いっきり叩いたのは誰だ!??」

「我じゃ」

「………誰?」


 我と言われても、誰なのかピンと来ない。

 

「ごめんなさい。俺、お金持ってないので、振り込めません」

「オレオレ詐欺じゃないわ!」

「それを言うなら、我々詐欺じゃないか?」

「確かにって、そんなこと言いに来たんじゃないわ!」


 と言われても、俺にはまったく心当たりがない。

 確か、みんなで馬車に戻った後、いつも通り寝たと思ったのだが、違うのか?

 もしかしなくとも、これは夢か。

 やけに現実味ある夢だなぁー。

 夢の割に、見覚えのない変な奴が俺に話しかけてくるし。


「…確かに、これは夢なのだが、どうか我の話を聞いてくれんかのう」


 夢なのに、なんか知らない人が俺に話しかけてきた。

 こういう時ってどうすればいいのだろうか?

 とりあえず、警察に電話しよう。

 まぁ、夢の中なのだから、当然無理ですけどね。


「…警察とか冗談言っているのなら、我の話を聞いてくれんか?」


 あれ?もしかして、俺の考えていることが読まれている?

 それによく考えてみると、この状況、どっかで体験したことがあるような無いような…?


「それはこの世界に来る前、神と話をした時のことじゃろう?」

「そうそう!ってなんでお前がそのことを…!?」

「それはな、我が…」

「我が?」

「…………………………神だからだ」

「ためすぎだろ!」

「ほれ、こういうやり取りも覚えてないか?」

「…確かにやったような…。まぁいいや。それで、何の用だ、馬鹿かm、神?」

「…お主、後で覚えておれ。と言っても、まずは用事を終わらせようかの」

「そうだぞ。さっさと用件言え」

「お主のせいでなかなか用件を言えないのだが…」

「さっさと言え!」

「…言いたいことが山ほどあるが今は飲み込んでおこう。それで用件というか、頼みなんだが…」

「なんだ?」

「6ヶ国のどれも滅んではならんぞ。もし1国でも滅びようなら、世界平和は無理だ」

 急に、自称神が真剣なトーンで国を滅ぼすな、という宣言をしてくる。

「はっ。俺が1国を滅ぼせるとでも?」

「まぁ、やろうと思えばやれるじゃろう?それに、もし言われなかったら、青の国を消すつもり、だったのではないか?」

「…そんなことはーないぞー?」

「…お主、挙動がおかしすぎるのだが。もしかして、ツッコミ待ちか?」

「違うわ!…まったく、考えていることが筒抜けなんてひどすぎるだろ」

「そこはほれ、我、神だから♪」

 うぜぇ。

 だが、青の国に何かしらの復讐をしようと考えていたことは本当だ。

 具体的な復讐方法は考えていないが、この神の一言で、国そのものを滅ぼすのもありだな、と考えてしまう。

「…お主。言ったそばからそんな物騒なことを考えるのではないわ!」

「だったら、俺のこの行き場のない気持ちをどうすればいいんだよ!?」

 そうだ。国を滅ぼすことは本来、してはいけないことだとは理解している。

 だったら、あの赤の国と青の国で辛い目にあった俺達はどううればいい?

 そのまま何も無かったように過ごせと?

 そんなの無理だ。

 

 例えば、嫁の不倫現場を見つけてしまったときなんかはどうだ?

 そのまま何も見なかったことにして、未来永劫、嫁と一緒に暮らせと言っているのと同じではないか。

 果たして、そんなことが出来るだろうか?

 俺は無理だ。

 俺だったら、不倫の証拠を見つけた後、嫁に不倫の証拠を叩きつけて、離婚し、その落とし前として、慰謝料を要求するだろう。

 

 話がずれたな。

 つまり、復讐しない代わりに、何か慰謝料の代わりになるようなものが欲しい、ということだ。


「…お主、その考え方は分からんではないが、生々しくないかのう?」

「でも、こっちの方が分かりやすいだろう?」

「…はぁ。まぁ、こっちは元より、頼みを聞いてもらっている立場じゃからな。慰謝料?の代わりになるかどうかは分からんが、いくつか、教えておこうと思うのだが、それでどうかのう?」

「…なんだと?」

 どんな情報なのか、すごい気になる。

 だが、それを聞くということは、もう青の国を滅ぼしてはいけない、ということだ。

 俺もそこまでするつもりは無いが、言われなければ、近いことをいていたのかも知れない。

「それで、どうする?聞く?それとも、聞かない?」

「…これって、どちらを選ぶにしろ、俺は青の国を滅ぼしちゃダメなんだよな?」

「そうだが?」

「だったら、お前の持っている慰謝料代わりの情報ってやつを聞いた方がお得だよな?」

「…まぁ、そうだな」

「つまり、事実上、選択肢は1つしかないってことなんじゃないか?」

「…そういうことに、なってしまうな」

 なんだよ。結局選択肢なんて、あってないようなものじゃないか。

「はぁ。分かったよ。もう青の国を滅ぼすなんて馬鹿な考えはしないよ。その代り、その情報をよこせ」

「これをきっかけに、我を尊んではくれないかのう?」

「無理だな。それより情報くれ。はよせんか」

「…分かった。それでは少し待っておれ」

「分かった」


 そう言った瞬間、神は俺の目の前で消えた。

 ………。

 ビュン。

 急に風が発生し、その風に驚き、怯んだ隙に、

「ほれ、これがその資料じゃ」

 神が戻ってきて、大量の紙を床に置いていた。



「こ、これは…」

 俺は夢の中にも関わらず、俺の目の前に置かれた大量の紙に驚く。

 大量の紙が積まれ、その高さは俺の伸長を軽々と超えている。

 その紙の束は今にも倒れそうなくらいユラユラと揺れていた。


「これらは全部、お主が欲しているであろう情報じゃ」

「…それで、いったい何の情報をくれるんだ?」

 俺がそう言った瞬間、自称神は急にニヤニヤし始め、

「知りたい?なぁ、知りたいじゃろう?」

 とまぁ、うざい感じで聞いてくる。

「…それで、どんな情報なんだ?」

「それはな、お主が強くなるための方法を記した情報じゃよ」

 俺はその一言で、目の色が変わり、

「今すぐよこせぇ!」

 俺は我を忘れ、その情報が載っているであろう紙の束に突っ込む。

「まぁ待て。いくらお主とて、今すぐこの情報量を全て覚えられるのか?」

「…確かに…」

 それは少し冷静に考えれば分かることだ。

 いくら強くなれるからといって、情報量が半端ないのは紙が積まれている高さを見ただけでも一目瞭然だ。

 それらを夢の時間内だけで覚えるのは不可能だろう。

「そうじゃ。だから、この我直々に案を考えきてやったぞ」

 こいつ。確かにその案は素敵だが、言い方はなんとかならんのか?

 すごく偉そうな態度をとっているせいで、ありがたみも半減してしまうじゃないか。

「それは、この2つじゃ」

 そう言うと、神は2枚の紙を俺の前に置く。

 その紙には、

「【剣術】と【色装(しきそう)】?」

 と、書いてあった。


「おい。剣術は何となく分かるが、この【色装】?ってなんだ?」

「読みはそのまま【色装(しきそう)】で合っているぞ。ちなみにお主はもう使えるぞ」

「何だと?」

 使えるのなら、練習とかしなくていいんじゃ…?

「はぁ………。まったく。だからお主は万年ボッチの便所飯なんじゃよ?」

「おい!万年ボッチは言われてもしょうがないが、俺は便所飯じゃないぞ!」

 まぁ、何回かした記憶はあるけど。

「いいか?お主にも分かりやすく説明してやろう」

「だから俺は便所飯じゃ…!」

 俺の決死な叫びを、神は無視し、話を続ける。

「魔力量は筋肉と同じで、使えば使う程、己が保有する魔力量も増える。それは知っているな?ちなみにこれは10歳児でも知っている一般常識じゃからな?」

「あまり俺を馬鹿にするなよ?それくらい知っているよ」

「だったら何故分からぬかのう?だったら、魔法も使えば使う程、魔法の精度も上がり、だんだん威力調整ができるようになるということが」

「…それと【色装】に一体何の関係が…?」

「最後まで話を聞くのじゃ。要するに、【色装】も使えば使う程、より強力な【色装】を纏えるようになるのじゃ」

「…それで?」

「ここで、一番強力な魔法を知っているか?」

「ああ。確か、【蒼月】?だったか?」

「うむ。確かにあの魔法も強力じゃったの。だが欠点がある。それが何か分かるか?」

「…大量の魔力を消費するところか?」

「正解じゃ。その代わりにあの…人間は詠唱をすることを選んだわけなのだが、いかんせんあの魔法は消費する魔力量も多いため、詠唱時間も長かったはずなのにだ、お主はその隙をつけず、真っ向から勝負をする始末」

「ぐっ」

 確かに、あの時は真っ先にあの詠唱を止めるべきだったが、それが出来なかったんだ。

 あの騎士達やフェニックスが俺の邪魔をしてくるから出来なかったのであって、俺が馬鹿だからしなかったわけじゃないぞ。

「そんなことを言っても、負け犬の遠吠えにしか聞こえんぞ?」

「…そ、そんなことより話がそれているぞ」

「…そうじゃったな。とにかく、いくら強力な魔法でもすぐに使えなければ意味が無い。だが、魔力の消費量も少なく、すぐに発動できる強力な魔法がある」

「それが【色装】ってことか?」

「そうじゃ」

「だけど、俺はそんな魔法、使った覚えはないぞ?」

 大体、【色装】っていう魔法も今初めて聞いたし。

「簡単に言うなら、赤魔法の【身体強化】に近いかのう」

「何だと?」

 確かに、似た魔法なら使った覚えがある。

 確か…、魔王とタイマン張った時に使った魔法、でいいのか?

「うむ。そうじゃ。あの時にはもうお主は【色装】を使えたんじゃよ」

「…なるほど」

 つまり、魔力を全身に纏うことが【色装】という魔法である、という認識で合っているのか?

「さらに言うなら、魔力を全身(・・)に纏う、という点が重要じゃ。それ以外は【色装】とは呼べんぞ。まぁ、お主はすぐに出来たそうだが」

「へぇ~」

「その点だけで言うなら、お主は優秀じゃな」

 な~にが、

“その点だけで言うなら、お主は優秀じゃな”

 だ!

 まるでそれ以外の点だと、俺はダメ男みたいな言い方しやがって!

「事実、お主はダメダメじゃろう。赤の国と青の国で使った銃型魔道具、魔術師達に防がれ、あの女子達を危険な目に合わせ」

「ぐっ」

「あの女子達が本気で心配していたにも関わらず、お主は狸寝入りをするし」

「ぐはっ」

「終いには…」

「すいません!俺はどうしようもないダメ男ですから、もうこの話はやめて下さい!!」


 俺の夢の中にも関わらず、俺は神に土下座をする。

 

「…ふむ。お主がそうやって土下座をする姿を見るだけでも、ストレス発散になるわい」

「んぎぎぎ」

 くそ!今は何も言い返せねぇ!

「…話が逸れたな。要するにだ。お主が強くなるには、【色装】を使い続けて、極めることなのじゃ」

「分かった」

 結構話が逸れた気はするが、これで俺はもっと強くなれる。

 その方法が分かっただけでも、今回は良しとしよう。

 後は実践するだけだ。


「…ところで、剣術の方は…?」

「…あー、すまん。もう時間が無い。なので、お主の頭に直接情報を送り込もうと思う。異論反論は認めぬ」

「え?え?」

 俺は突然の対応に困惑する。

 そして、

「それじゃ、引き続き頑張っておくれ。これからも見ているからな」

「あ!おい…!」

 俺の言葉は最後まで聞かれることなく、


「は!?…ここは…?」

「あ。おはよう、お兄ちゃん♪」

 

 紛れもなく、現実だった。

 そして、

「う!あ、これ、気ぃ失うやつだ…」

「お、お兄ちゃん!?」

 そういやあの神、剣術の情報、脳内に直接送るみたいなこと言っていたな。

 つまり、脳が許容量を超えたってことか。

 ちくしょー。いくら強くなれるからって、起きてすぐに倒れるとか聞いてねぇぞ。

 俺はあの神を恨みながら、また夢の中へ旅立った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ