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色を司りし者  作者: 彩 豊
第2色 青の国 第一章 白黒牛人を助けし者達
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2-1-18(第90話) 牛人の村近くで見る夜景

すいません。

今回の話、だいぶ長くなってしまいました。

「ふぅ~。お腹一杯ですぅ~」

「クリムお姉ちゃんと一緒に食べてたら、お腹パンパンだよ~」

「…2人とも、食べ過ぎ」

「そうですよ~。そうやって、床に寝転がるのは女性として、どうかと思いますよ?」

「みな様に満足していただけて、私達も満足です」


 結果だけ言うと、すごくうまかった。

 あの骨付き肉やシチューもどき、野菜炒めもすごくうまかった。

 クリムやルリに至っては、もう腹パンパン。服がはちきれそうだ。

 近くの台所を見ると、牛人の村の住人?らしき人達がせっせと料理を作っては運び、それらを繰り返していた。

 残りの牛人達は扉越しに覗いていた。

 

「それじゃ、俺はちょっと夜風に当たってくる」

「「いってらっしゃ~い!!」」

「あ!待ってください!私も一緒に行きます!」

「ルリも後で行くからね~」


 こうして俺とリーフはたまたま無事だった大きい小屋から出て、2人で夜風に当たりに出た。


 俺は拓けた場所にでるため、森の中を少し散策していた。

 その間、

「「………」」

 終始、無言だった。

 俺はちょっと重い空気など気にせず、森の中を歩き続ける。

 

 (お♪あそこがいいんじゃないか?)

 あれから少しの間歩き続けて、俺達はちょっと拓けた場所に行き着いた。

 椅子代わりになるであろう切り株があり、一面見渡す限り草原、だと思う。いくら月の光で明るくなっているといっても、見えづらいな。

 俺は切り株に腰を預け、夜空を見る。

「隣、座りますね?」

「ん?ああ、別にいいよ」


 リーフも近くにある切り株に座る。

 もしこれがベンチだったら、良い雰囲気になっていたのかもな。

 俺が地球の綺麗なイルミネーションを今見えている景色に重ねながら見ていると、

「…そろそろ何があったか、話してくれませんか?」

 リーフから話を切り出した。

 俺もこれを期に話した方がいいかもしれないな。

 そんな覚悟と不安を胸に秘め、俺は話し出す。


「…んで、何から話せばいい?」

「…はぁ?」


 なんか知らないが、リーフに呆れられてしまった。

 正直、何から話せばいいか分からない。

 あのメイキンジャーのことがずっと頭から離れないんだよな。

 自分でもまだ、心の整理が追いついてないくらいだ。

 

「…と、とりあえず、最初は黒い一つ目巨人(サイクロプス)のことです!その魔獣は一体何者なんですか!?」

「何者、と言われてもな…」


 俺だって何者なのか、詳しいことは分からない。

 むしろ、俺が教えて欲しいくらいだ。


「アヤトは何か知っているのではないですか?」

「知っているといっても、あの黒い一つ目巨人(サイクロプス)は誰かの眷属かもしれないってだけだ」

「え?…確か、拳を振り下ろした時の風圧で竜巻を起こせるほどの力を持つサイクロプスが眷属、ですか?」

「よく知っていたな。あっ、ルリが話したのか」

「そうです!それよりそんな天井知らずな力を持っている魔獣が誰かの眷属だったなんて…」


 その言葉を言い終えると、少し俯き、ぶつぶつと何か言い始めていた。

 俺がそのひとり言が終わるまで、しばし夜空を見ながら待つことにした。

 

「すいません…。少し考え事をしてしまいました…」

「別にいいよ」


 俺もよく独り言を言っていた記憶がある。

 そのおかげで、友達がろくにつくれず…この話はやめよう。

 今は別のことに集中しよう。


「それで、冒険者ギルドもアヤトのくれた情報だけでは動かないでしょう。なので…」

「別にリーフのせいじゃないよ。それに、ギルドも今のところ、頼る気なんてなかったし」

「…そう言われると、ギルドの専属受付嬢としては複雑な気持ちです…」


 今後は、もっと俺が強くならないといけない。

 だが、いつも通りの修行だけじゃいけない。

 そのうち、実戦練習を積まないとな。

 この魔銀製の剣や、神色剣も十分に扱えるようにしないと。

 あ。でもこれって、ギルドに頼めば稽古的なことができるんじゃないか?


「あのさ。ギルドでも頼めば剣の稽古とかしてもらえたり…?」

「依頼内容にもよります。報酬額が高ければ高いほど食いつきはいいでしょう。ただ、どのくらい稽古してもほしいとか、具体的に記さないといけません」


 そういうところはしっかりしているんだなぁ。

 

「…私で良ければ、ある程度教えられますけど、どうしますか?」

「え?いいの?」

「はい!なんたって、アヤトの専属受付嬢ですから!」

「………(考え中)。それなら、お願いしようかな?」

「はい!」


 良かった。これでまた俺は強くなれる。

 もう怯えなくてもよくなるかもしれない。

 俺はあのブラックメイキンジャーの面影を思い出しながら、拳を固く握った。


「…それじゃ、もうそろそろ…」

 戻ろうか、と言おうとした時、俺の服の袖に違和感を覚えた。

 リーフが袖を引っ張っていた。

 そして、

「まだ話は終わっていませんよ?まだ、大丈夫でしょう?」

 その顔にはテレの要素は一切無く、真顔で聞かれた。

 俺はその表情を見て、

「はい」

 ただただ、上げた腰を下ろすことしか出来なかった。


「次はこの村に出現したブラックメイキンジャーのことです。その魔獣はここに何しに来たのか分かりましたか?」

「…確か、魔獣の処分、とか言っていたと思う」


 どちらかというと、あの色とりどりの爪牙狼より強い魔獣が気になって仕方がない。


「…メイキンジャーは、自分より強い魔獣を使役するために、自分の魔力を分け与えていると言われています。なので、多くの魔獣を使役するために、多くの魔力を消費しているはずなのですが…」

「あれ?でも前、最弱だって…?」

「はい。それは子供が木の棒で殴ってもやられるくらい弱いといわれています。ですが、魔力だけは大量に持っているのです」

「…つまり、俺が見たメイキンジャーは魔獣を魔力で使役していた、ということか?」

「そういうことです。ですが、アヤトの言っていた黒い一つ目巨人(サイクロプス)は本来、拳を振り下ろした時の風圧で竜巻を起こせるほどの力は持っていません。なので、そのことを踏まえるとなると…」

「あのブラックメイキンジャーも、並々ならぬ能力を持っている可能性がある、てことか?」

「はい。そして、これはあくまで推測ですが、アヤトの言うブラックメイキンジャーは魔力量が桁違いに多いのではないでしょうか?」

「…待てよ?ってことは、並々ならぬ魔力量を持てしても、今使役している魔獣を処分しなくてはならないほどの魔獣を使役できたってことか?」

「そういうことになりますね」

「「………」」


 なんか話せば話すほど、相手がいかに強いかが分かってきそうな気がする。

 しかも、相手の正体は分からないのに、強さだけが浮き彫りになっていくな。


「話、変えようか?」

「…あ、はい。それじゃあ次は、アヤトのことです」

「俺の?」

「はい!アヤトは何種類の色魔法が使えるのですか?」

「何種類って…」


 ここで正直に言っても問題ないのだろうか?

 そう言えば、ご馳走食う前にリーフが、

「普通の人は一種類しか色魔法を使うことができませんよ?」

 って、言っていたな。

 俺はあの神から全種類の色魔法を使えるようにしてもらったからな。

 ここは正直に答えるか。


「俺は6種類全部の色魔法を使えるよ」

「ほ、本当ですか!?6種類の色魔法を使えるなんて、聞いたことありませんよ…」

「と言っても信じないだろうから、今から見せるよ」

「???」


 俺は重くなっていた腰を上げ、掌に、6色の球をイメージする。

 ポンポンポンポンポンポン。

 それぞれ赤、青、黄、緑、黒、白の球が出現する。


「これでいいか?」

「…え?あ、はい、大丈夫です…」


 俺は6種類の球を消す。

 どうやら俺が6種類の色魔法を使えることに驚いたのか、開いた口が塞がらずに開きっぱなしだった。

 リーフが豆鉄砲を食らった鳩みたいな顔を晒すこと数分、


「すいません。あまりにも驚いて、話すことそのものを忘れてしまいました」

「あ、なんかすいません…」


 人間、驚き過ぎると、何しでかすか分かったものじゃないな。

 まぁリーフは人間じゃなく、エルフなんですけど。


「…やはり、私の目にくるいはないようですね(ボソッ)」

「ん?何か言ったか?」

「あ。い、いえ!別に何も言っていませんよ!ええ、ほんとに!」


 …なんか怪しいな。

 でも、人に話したからか、なんか胸にあった違和感?モヤモヤ?みたいなものが少し薄れた気がする。

 人に話すと、こんなにも、気が楽になるものなんだな。


「こっちこそ、聞いてくれて、ありがとな」


 あのブラックメイキンジャーと鉢合わせになった時から、どうもネガティブ思考が多くなっていた。それに、あのご馳走もそこまで美味しく感じられなかった。もちろん、ご馳走そのものが不味かったわけではなく、あの時の俺は、ご馳走を美味しく食べる余裕がなかったからだ。

 でも今は、そんな未来のことを考えてもしょうがない、と割り切れる。

 そう考えるだけで、胸がスッとなる。

 ああ。もう一度、あのご馳走が食べたい。

 今食べたら、きっとより美味しく感じるんだろうな。


「…ふふ♪アヤトのその顔、久々に見られた気がします♪」

「…俺はいつも通りだが?」

「はは。お冗談を。アヤトはずっと辛そうな顔をしていましたよ?」

「そんなことは…」

「ありますよ。だってみんな、気付いていましたもの」

「…まじかぁ」


 俺って、そんな辛そうにしていたのか。

 できる限り、平静を保っていたのだが、顔の表情まで、頭が回らなかったな。

 ん?それでも、できる限り笑顔を心掛けていたはずだが?


「あ。ちなみに確信したのは、あまりにもぎこちなさすぎる笑顔を見せた時です」


 …俺の作り笑顔って、そんなに変だったのか。

 俺が落ち込んでいると、

「あ、ちょっと押さないでください」

「…ルリ、あんま押し過ぎると…」

「だって、ルリも見たいんだもん!」

「あ、もうダメ…」


 ドカドカドカ。

 俺とリーフの後ろの方から何かが倒れるような音がする。

 俺は振り返ってみると、

「…一応聞くが、何してんだ?」

「盗みぎんごぉ!?」

「何もしていません!」

「…右に同じく」

「いや、絶対俺らの話、聞いていたろ!?」

 だったら何故、急にルリの言葉を遮る必要がある?

 ほら、ルリが苦しそうにしているぞ。放してあげなさいな。


「…はぁ。それで、どこまで聞いていたんだ?」

「全部!」

「…ルリちゃんの言う通り、全部です」

「…ん」

「…はぁ」


 まじか。

 俺は何度ついたか分からない溜息をつく。


「こういうことするんだったら、最初からみんなで聞きに来ればよかったのに…」

「アヤトはたまにふざけたことを言う時がありますから」

「…そう。だから、誰が言って話すかみんなで相談した結果、リーフに任せるのが最もいいということになって、リーフに任せた」

「俺がふざけたことなんてあるか?」

「「「本気で言っているのですか???」」」

 そんなわけ…、あったな。

 でもあれは、疲れていたから、寝ていたふりをしていただけだ。決してふざけていたわけではない。むしろ、自分の体を気遣ったうえでの最適な行動と言えるだろう。

 …確かに、周りの人の気持ちを一切考えていなかったのは認めるけど。

「お兄ちゃんはふざけたこと、あるの?」

「…でもあれはふざけてやっていたわけでは…」

「…自覚がないのがさらにたち悪い」

「うっ」

 そう言われると、返す言葉もないな。

「まぁ、もう寝る時間ですし、そろそろ戻りましょうよ?」

「そ、そうだな!さぁみんな、戻ろう!」

 俺は夜にも関わらず思いっきり声を出し、腰を上げ、来た道を戻ろうとする。

「「「「…………」」」」

 もちろん、みんなの視線が体中に突き刺さったが、そんなことは気にしない。

 …気にしたら負けなのだ!

「さぁどうしたの、みんな!早くはやくぅ!」

 俺は歩き始めて、少し経った後、

「…それにしても、アヤトが元気になって良かったです」

「そうですよ!これでようやくいつものアヤトに戻るのです!」

「…お兄ちゃんが元気になってくれて、ルリも嬉しい♪」

「…これでホットケーキも美味しく食べられる♪」

「…相変わらず、イブはホットケーキ大好きですよね?」

「…戦い大好き脳筋王女よりまし」

「…いいでしょう。ここで私とイブ、どちらが強いか、決着つけましょうか?」

「…ふん。望むところ」

 そう言って、王女二人組はキャットファイトを始める。

「…お姉ちゃん達って、ほんと、仲良しだよねー、リーフお姉ちゃん?」

「あー、うん。そうだね、ナカイイヨネ」

 こんなほんわかするような会話も聞かず、アヤトは前へ進んだ。

 夜空に輝く星々も、彩人を応援するかのように、より光り輝いていた。

今週の投稿はこれで終わりにしたいと思います。

来週は彩人以外の視点で話を進めたいと思います。

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