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色を司りし者  作者: 彩 豊
第2色 青の国 第一章 白黒牛人を助けし者達
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2-1-14(第86話) 牛人の村での戦い~その4~

まだまだ牛人の村での戦いは続きます。

「私とイブが隙を作るので、クリムはルリちゃんを警護、ルリちゃんは隙ができた相手に大きい一撃を食らわして!」

「「「はい(うん)!!!」」」


 私達が隙を作る間、クリムとルリちゃんは懸命に爪牙狼の攻撃を避ける。

 ルリちゃんはさっきからほとんど息が切れていないのはいいが、クリムはさっきからずっと魔法を使って魔力が残り少ないのか、肩で息をし始めるようになっていました。

 

「クリム、大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫です!まだ、行けます」


 その顔には明らかに疲労の色が窺えます。

 無理をさせたくない反面、クリムの気持ちを汲み取り、まだ戦わせてあげたい自分がいます。


「無理は禁物ですよ!」


 今の私には、それしか言えることがありませんでした。


「ギャン!」

「キャッ!」


 瞬間、レッド爪牙狼の爪がクリムの腕をかすめ、クリムは態勢を崩してしまいます。

 その隙を、レッド爪牙狼とレッド鎧亀は見逃さしません。

 レッド爪牙狼はクリムの周りを囲み、その周りには、赤魔法【火球】を準備しているレッド鎧亀がいました。

 あの魔獣達は1人の少女を囲み、万全の態勢で命を刈り取ろうとしていました。

 クリムはこの絶望的な状況で活路を見出せず、ただこのまま死んでいくんだと覚悟し、涙を流し始めました。この状況では、リーフもイブもどうすればクリムを助け出せるのかわからず、下手に手を出せずにいました。

 私はこの時、何故自分はこんなにも愚かだったのかを考え、弱い自分を恨みました。

だが、その様子を見て、切れかかっている少女がいました。

その少女は腕を振り上げ、

「クリムお姉ちゃんになにするんだぁ!?」

 地面に叩きつけます。

 その様子を見て、

「「えっっ??」」

 2人はある出来事を走馬燈のように思い出す。

 それはアヤトがルリとの約束を忘れていた時のことです。

 だが、その時よりも脅威を感じませんでした。

 何故なら、その少女はその魔獣達だけに強烈な殺気をぶつけているのだから。

 数秒前まで狩る側だった自分達が、いつのまにか狩られる側になっていたとは夢にも思わなかったでしょう。それほど、カラー種はとても強いのだから。

 だが、今回ばかりは相手が悪かったようです。

 なにせ、


「私の大切な人を傷付けて、無事に生きていけると思うなよ?」


 かつて、強すぎて封印された魔獣、ヒュドラ(ルリ)が相手だったのだから。


 そこから、まずルリちゃんは青魔法で氷を発生させていきます。

 だが、ただ発生させているわけではなく、相手全員を囲むように魔法を発動させている。その様子は獲物を追い込む狩人のようです。

 もちろん、獲物側のレッド鎧亀やレッド爪牙狼だってただでやられる訳はなく、

 ガキィンガキィン。

 ジュワー。

 爪、牙で氷を削ろうとしたり、赤魔法で氷を溶かそうとしていたりと、精一杯の抵抗をしていましたが、溶かすどころか傷一つつきません。

 その光景に、改めてルリちゃんはすごいと私は感じました。

 

 魔法には相性があり、氷と火では、火の方が強く、同じ魔力を込めてぶつけあうと、氷の方が溶け、火はそのまま燃え続けたらしい。

 これは昔、とある魔法使いが実験したことです。

 なので、今起きている状況が信じられませんでした。

 考えられることと言えばただ一つ。

 魔法の相性なんて関係ないほどにルリちゃんと魔獣達の力の差が開いている、ということです。

 おそらく、私だけでは、あのレッド爪牙狼一匹まともに相手にできません。

 イブ、クリム、そして私の3人でようやく倒せるといったところでしょう。

 それをルリちゃんは一人で、それも何十匹を一度に相手にしています。

 最早、私とは見ている世界が違うと感じ得ざるを得ませんでした。

 そして、魔獣達を巨大な氷で囲み、仕舞いには、魔獣達が閉じ込められ、必死に抵抗しようとし続けている様子を、私達が氷を通して見ている、という状況になりました。

 そして、だんだん周りの空気が冷え始めてきていることに気づきます。

 そして、


「貴様も氷となれ」


 その一言を聞いた瞬間、魔獣達は氷漬けになっていました。

 一瞬のことでしたが、おそらく、ルリちゃんがあの魔獣達を凍らせたのは間違いないでしょう。魔獣達も、ルリちゃんのあの一言から一歩も動こうとしません。目には生気すら感じられませんでした。

 つまり、魔獣達が死んだ、ということを意味していました。

 本当に、本当にルリちゃんが一人で倒したのですね。

 私はその光景に、

「…すごい…」

 その言葉しか出てきませんでした。

 そして、


「う、うぅ~…」

「ルリちゃん!?」


 ルリちゃんの様子がおかしくなり、いつ倒れてもおかしくないほど、体をふらつかせています。

 私もすぐにルリちゃんのところに駆け寄ろうとしたのですが、

「…ルリ。もう大丈夫。後は私達に任せて」

「…イブ、お姉ちゃん…」

 イブが私より速く駆けつけていたのですから。

 私はクリムの方に駆けつけ、

「大丈夫ですか、クリム!?」

「は、はい…。私は、大丈夫です…」

 良かった。取り敢えず私はクリムに応急処置を施し、ルリちゃんのところへ向かう。

「イブ!ルリちゃんの具合は!?」

「…ん。大丈夫。魔力の使い過ぎによる疲労だと思う」

「そ、そうですか…」

 よ、良かった…。

 安堵して緊張の糸がとけたためか、私は思わず膝から崩れ落ちてしまう。

 ですが、いつまでもこのままってわけにはいきません。

 また、いつ魔獣が来るか警戒しなくてはいけないのですから。

「…イブ。私はこの周辺の様子を確認してきますから、イブは2人の警護をお願いします」

「…ん。わかった」

「そんな!私だっていたたたた…」

「ん~。ルリだってまだやれる~」

「2人とも、今はゆっくり休んでください」

 そうです。私がしっかりしないといけません。

 それに、これ以上ルリちゃんの負担を増やすわけにはいきませんからね。

 私は周りの様子を見るため、この場から離れる。

 

 その時、リーフの雰囲気が変わる。

 さっきまでは、みんなを包み込むようなお姉さん的雰囲気だったのだが、今は違う。

 レイピアを構え直し、いつでも戦闘できるよう準備をしつつ、周辺を確認する様子は虎視眈々と獲物を狙う猛獣の如し。

 そして、アヤトの信頼を裏切るわけにはいかない、そんな覚悟を胸に秘め、警戒を続けた。

今回は「ルリ無双」をイメージしてみました。

ですが、まだまだ終わりません。

まぁ、今週の投稿はこれでお終いですので、続きは来週です。

次回からはアヤト視点で続きを書きたいと思います。

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