2-1-12(第84話) 牛人の村での戦い~その2~
まだ、牛人の村での戦いが続きます。
「アヤト、クリム、ルリちゃん!その魔獣は【爪牙狼】という魔獣で、鋭い爪と牙に注意して下さい!」
「分かった!行くぞ、クリム、ルリ!」
「「はい(うん)!!」」
「こっちも負けられませんね、イブ?」
「…ん。激しく同意」
俺たちは狼型の魔獣、もとい、爪牙狼に向かう。
俺は赤魔法の【身体強化】で爪牙狼の動きを見つつ、その動きを予測し、確実に剣を刺し、息の根を止めている。
一方、クリム、イブ、リーフの3人は俺とは異なる戦い方をする。
まず、リーフが緑魔法で爪牙狼の動きを鈍くする。次にイブが魔力で形成した腕で爪牙狼の動きを止める。止まった隙にクリムがとどめの一撃を出し、爪牙狼の息の根を止めていた。
すごいコンビネーションだ。3人の息がピッタリ合わないとできなそうだ。
だが、何より驚いたのが、
「そんな爪や牙じゃ、ルリの鱗は貫けないよ!」
ルリが自分の腕の皮膚を鱗に変えて、爪牙狼の攻撃を防いだことだ。
「今だ!お願い、蛇達!【蛇睨み】!」
「「「シャッッッ!!!」」」
しかも、爪牙狼の動きが止まった瞬間に、使役している蛇達と協力し、
「バイバイ、狼さん♪」
とどめと言わんばかりの蹴り。
その蹴りで狼は遠くまで飛ばされる。
きっと、その蹴りで狼は息の根は止まっただろう。
…改めてみんなを見ると、強過ぎね?と、思ってしまうくらいだ。
そんな俺の個人的感想をよそに、俺達は大量にいた爪牙狼を殲滅した。
「ふぅ~。こんなもんか…」
「はい!イブ、リーフ。サポートありがとう!すごく戦い易かった!」
「あれぐらいなら問題ありませんよ」
「…ん。余裕♪」
「蛇達もありがと~♪後でキレイキレイしてあげるね♪」
「「「しゃ~♪♪♪」」」
殲滅に成功した俺達は少し休憩しながら、牛人が来るのを待っていた。
気分だけなら、仕事終わりの生ビールを飲んでいる感じだ。
…未成年なのでそこまでよくわからないが。
俺達が和んでいると、牛人がこっちに来た。
どうやら、話は終わったらしいな。
「みな様。まだ戦いは終わっていません。また魔獣が来ます」
そんな牛人の知らせに、俺達はまた気を引き締める。
「それで、敵はどこに…?」
「はい。あっちの方角にある洞窟の近くにそのブラックメイキンジャーはいると思われます」
「…思うって?」
「すみません。みな様が戦っている間、また未来予知をしてもらい、ブラックメイキンジャーの居場所を特定してもらったところ、洞窟の近くにいることが判明したのです」
「…なるほど」
「それで、牛人のお姉ちゃん。また魔獣が来るって…?」
「はい。それは、」
牛人は自分の言葉を最後まで言わず、とある方向を指差す。
「あれです」
「あれですか?」
正直、ちょっと遠くにいるためか、敵がどんな奴かまだ分からない。
「あれは…もしかして、【鎧亀】ですか?」
「はい。そして、私達の天敵です」
牛人は淡々と語った。
「天敵?どういうことだ?」
「はい。私達牛人族は魔法を使うことが苦手ですが、力は人族の数倍はあります」
「なるほど。確か、鎧亀は魔法による攻撃に弱いですが、拳や剣による攻撃に強かったと思います」
「リーフ様の言う通りです。それなので、私達牛人族は時間をかけて倒すか、盾を使って守り抜くしか方法がありません」
なるほど。物理攻撃に強く、魔法攻撃に弱い、か。
ゲームでもそんな奴はいたな。
攻略サイトをみながら余裕しゃくしゃくと倒していたっけ。
…それにしても、牛の天敵が亀か。
鶴は千年、亀は万年という諺があるから、亀の天敵は鶴だと思っていたのだが。
まぁ、そんな訳無いと思うけど。
「分かった。俺の魔法で…」
「アヤトはブラックメイキンジャーの方をお願いします」
「え?り、リーフ?ど、どうしたんだ?」
「ここは私達に任せてください」
「…そ。アヤトはブラックメイキンジャーの方を」
「私達じゃ敵わないんでしょ?」
「う。ま、まぁな。白竜皇や黒竜帝が震えていたからな」
正直、あの黒い一つ目巨人ともう一度戦えと言っても勝てる気がしない。
あの馬鹿みたいな力と真正面から立ち向かいたくないからな。
「…だったら、私達がここで戦う。作戦通り」
「そうだよ!ルリもすぐに向かうから、それまで頑張って!」
「あ!ルリちゃん!私のセリフ、取らないでください!」
「…私、王女なのに、何も言うことがありません…」
「みんな…」
こんなに言われちゃ、男の俺が黙っているわけにはいかねぇな。
「分かった。俺がブラックメイキンジャーを倒すまで、どうか持ちこたえてくれよ!」
「「「「はい!!!!」」」」
「…牛人。ブラックメイキンジャーがいる場所まで道案内頼む」
「わかりました。こちらです」
そう言って、牛人は駆け出した。
俺も牛人の後を追うため、走り出した。
今週の分の投稿はこれで終わりです。
来週も、「牛人の村での戦い」の続きになります。
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