2-1-8(第80話) 牛人が明かした事
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これだけ多くの人に読んでもらえるのは作者側としては嬉しいです。
今週も投稿します!
「え?話がある?」
「はい。とても重要なお話です」
俺は少し戸惑っていた。
今まで牛人から話しかけることがほとんど無かったからか、つい「明日は雨降るんじゃ?」とか考えてしまう。
「えと、どこで話そうか?」
「はい、実はみな様に聞いてもらいたい内容ですので、ご飯時がよろしいかと…」
「なるほど。分かった」
俺はどんな話をされるのかドキドキしながら、この日を過ごした。
夕飯時、
「あの、みなさん。お時間、いいですか?」
「いいよ!」
「はい!」
「もちろんです!」
「…ん」
「ああ。んで、用事とはなんだ?」
「はい。実は…」
牛人は、ゆっくりと深呼吸をする。
そして、
「今後のことについて、お願いしたいことがあります」
はっきりと語り始める。
「今後のこと?だったらこのまま「ミナハダ」っていう町に行く予定だが…」
「はい。実はその予定を変更して、とある場所に行ってもらいたいのです」
「「「「「とある場所??????」」」」」
牛人以外の俺達5人が声を合わせて聞く。
「それは、牛人の村です」
「…えっと、それで?」
「はい。実は未来予知により、近いうちに、牛人の村が何者かに襲撃されるという未来が見えました」
「「「「何だって!!!!????」」」」
俺以外の4人が事前打ち合わせでもしたかのように息の合った返事を返す。
だが待ってほしい。俺には言いたいことが山ほどある。
まず1つ目。
牛人の村って何!??
一瞬、牧場をイメージしちまったが、どんな村なんだよ!
それに、その牛人の村がどこにあるのかわからなければ、その村に行くことができないんだからな。
そして2つ目。
未来予知って何!?
もちろん、未来を予め知ることができることだと思うけどさ、牛人はそんなことができるのか!
もっと早く教えてほしかった…。
そうすればあんなことやこんなことに…。
おっと。考えが逸れてししまった。
そして3つ目は、
「ルリ!お前は知っていたのか!?」
そう。正直、ルリは何も知らない無知の子だと思っていた。
なので、何も知らないのは俺だけ、ということになる。
この世界でも独り、か。
「うん!前に一緒に夜の見張りしていた時に、ね?」
「はい」
「…そうか…」
うん。仲良くなることはいいことだよな。
なんか、親離れしていく子を見ている感じがする。
って、今は物思いに耽っている場合じゃないか。
「えっと、いくつか質問いいか?」
「はい」
「牛人の村ってなんだ?」
「はい。牛人の村というのは牛人だけで形成した村です。牛人はほとんど雌なので、基本的に雌しかいません。そして、稀に特殊な才能に目覚める者がいます。そして、その特殊な才能というのが、未来予知、ということです。ここまでいいですか?」
「お、おう…」
この際、個人的に聞きたいことは後回しにするとしても、一気に情報を渡されると、頭の処理が追い付かなくなる。今はまだ大丈夫だが、その内、フリーズするかもしれない。
というか、みんなはよくそんなことを…。
「では続けます。それで、未来予知に目覚めた牛人が未来予知をしたところ、牛人の村が何者かに襲われる未来が見えた、ということなのです」
「…」
「そして、その危機を救えるのは、赤の国にいる者の誰か、ということまでは分かったのですが、それ以降は分かりませんでした。なので、あの道具屋の店主にある程度事情を話し、情報収集してもらいました。そこで、気になる情報があったのです。それは…」
そこまで言うと、牛人は真っすぐに俺を指差した。
一応、俺の後ろの誰かを指差しているかもしれないので、後ろを振り向く。
誰もいない。やはり、俺を指差していたようだ。
「俺のことか?」
「はい。何でも、赤魔法でも最強と言われ続けた【蒼月】を打ち破ったばけも、凄いやつがいる、という情報です。私はその人と接触したいと思い、また道具屋の人に協力してもらったわけです」
「おい。途中、俺の事を「化け物」って言わなかったか?」
「…気のせいです。そして私はその人、つまりご主人様に是非ともご主人様になってもらいたく、私は商品となってご主人様に買われた、というわけです」
なんか言い方がややこしいな。
だが、気になる点が出てきた。
「その誰かに襲われる時期っていうのは具体的にわからなかったのか?」
「いえ。未来予知で牛人の村が襲われる、ってことぐらいしかわかりませんでした」
「となると、未来予知で牛人の村が危険になるから、お前は村を出て俺を探しに来たってことか?」
「はい」
「だったら、もう村がその何者かに襲われて、村自体が無くなっている可能性は無いのか?」
「それはありません。少なくとも、後5日は大丈夫なはずです」
「…逆に言えば、5日を過ぎれば、いつ村が襲われてもおかしくないってことか」
「はい…」
その顔は私1人ではどうしようもないということを意味していた。
俺としては、そんな表情をしてほしくない。
「んで、お前はどうしたい?」
「私は…」
ゆっくりと顔を上げつつも、その表情からは困惑していることがわかる。
「助けて、もらえませんか?」
俺をしっかりと見て言っているものの、申し訳ないという気持ちが伝わってくる。
俺は牛人の頭に手を置き、
「お前がそんな顔をするな。そんな顔されちゃ、俺だって辛くなる」
そうだ。
地球に独りだった頃は分からなかったが、今は少し分かる。
こんな辛そうな顔をしている知り合いや友人がいたら放ってなんかおけない。
できる限り助けて、その人を笑顔にしたい。
そんな気持ちが俺の中にある。
この気持ちが正しいのか正しくないのかは分からない。
でも、
「だから、俺に任せろ」
自然と口からこの言葉が出ていた。
牛人は目に涙を少しずつ溜めながら、
「あ、ありがとうございます!」
俺はあんな辛気臭い顔より、そういう笑顔が見たいんだ。
まだまだ続きます。
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