2-1-6(第78話) 彩人達の旅
まだまだ彩人達の旅は続きます。
俺達の旅が始まってから1週間近く経った。
あれから、俺達の行動は一定のリズムをとるようになってきている。
朝はみんなで朝食をとり、その後の午前中は俺と牛人と俺の2人で馬車を引っ張る。
そのとき、イブとクリムは正座をする。
最初はただ正座しているだけだと思ったが、実は魔力の保有量を増やし、制御するための訓練をしていたのだ。
魔力量を増やすことで、自分が使う魔法に磨きをかけるのだそうだ。
他にも、実践を繰り返して、魔力の練度を上げる方法もあるらしい。
絶対に馬車の中で実践はしないでほしいな。
リーフは自分の武器であるレイピアや道具を点検している。
リーフが言うに、
「1日でも怠ればいざという時に使えなくなります!」
とのことだ。
俺としてはそのいざって時が来ないよう祈っておきたい。
ルリは俺と牛人の3人で話をする。
俺としては馬車を引くだけなので、話し相手がいても全く問題ない。牛人に聞いてみたところ、
「全く問題ありません」
だった。
この娘はあいかわらずぶれないなと思った発言だった。
話す内容は雑談程度の内容だ。
やれ今日は暖かいだの寒いだの、ほのぼのとした会話だ。聞いていても楽しい。
なにより、ルリが楽しそうに話すのが少し嬉しいと思う。
何か食べられるものを見つけたら、俺達が馬車を止め、その食べられるものを取ってくる。
木の実だったり茸だったりする。俺は毒があったらどうしようかと思ったが、ここはルリが大活躍をした。具体的には、
「…うん。お兄ちゃん!この茸は毒がなくて、こっちの草は食べられる草だよ!」
と、教えてくれるのだ。どうやって見分けているのかと聞いたら、
「勘!」
と答えた。
…うん。俺には一生できないことだなと思った。
ちなみに後で、俺が修行時、毒猪にやっていた緑魔法の毒検知ならできるんじゃね?と思い、やってみたら出来てしまった。
…つくづく俺って馬鹿なんだなと思い、がっかりした。
お昼を食べ、午後の予定もそこまで変わらず、相変わらず、俺と牛人の2人で馬車を引っ張っている。馬車の中では、
「やはり王族ですと、気が楽な馬車の旅ってなかなかできないんですよ」
「…ん。確かに」
「私も受付をする前に比べたら、馬車に機会がほとんどなかったですね」
「へぇ~」
女子達によるガールズトークが行われていた。
飲み物や食べ物を用意しているあたり、相当長く話しているんだろうな…。
俺がまだ地球で生きていた頃は、そんなに人と話すことなんてほとんど無かった。
だから、話が盛り上がる経験なんてよくわからない。
むしろ、この世界に来てからの方が良く人と話しているくらいだ。
だけど、
「やはり辛い食べ物が1番だと思うのです」
「…何を言う。甘いものこそ1番。それは譲れない」
「違いますよ!アヤトの料理が1番です!」
「当たり前だよ、リーフお姉ちゃん!だって、ルリのお兄ちゃんだからね!」
会話を聞くだけで、楽しいと思える自分がいる。
そう思えただけでも、以前の俺とは少し変わったかもしれない。
…まぁ、会話の内容について言わないでおこう。
「ご主人様、どうかされましたか?」
「ん?いや、なんでも♪」
「?そうですか」
俺はこんな日々がたまらなく嬉しくなった。
こんな感じで毎日が過ぎて行った。
今週の分はこれで終了です。
次回はちょっと視点を変えて投稿したいと思います。
誰視点かは…来週までのお楽しみ、ということでお願いいたします。