1-1-3(第7話) ブラックゴブリンキング
さぁやってきました、武器屋に防具屋。看板以外、見た目そっくりなんですけど。まあ、中に入るか。
「いらっしゃい!」
気前のいい声が聞こえた。この声は女だな。声の主を探していると、
「あんたが客かい?んで、どれが欲しいんだい?」
俺が欲しいのは、入店前から決まっている。
「一番安いのを下さい」
そう。金がないのだ。ただでさえ、あの門番に千円借金しているというのに、これ以上借金を増やしたくないのだ。
「ふぅ~ん。それじゃ、この革の鎧でどうだい?今なら五百円にまけるよ」
「すいません。今、無一文なんですけど」
「・・・」
なんか、店員がニコニコ笑いながら、無言の圧力をかけてくるんですけど………。
「でてけ」
「はい?」
「でてけーーー!!!」
「すいませんでしたーー!!」
俺は猛烈な勢いで店を後にした。また、武器屋も行ってみたが、防具屋の店員と同じ反応をされた。
かくして俺は、身一つで依頼に臨むことになった。
ここは通称『緋色の森』である。文字通り、緋色に染まった森だ。何故そんな色なのかは謎に包まれている。そんな場所に俺は依頼で来ていた。
「さぁーて。ゴブリンはどこだ?」
ピクニック気分で探していた俺だが、さっそく見つけた。しかも複数。
「お、複数じゃん。ラッキー。さっさと倒しますか♪」
かくして俺は、少しでも多く金を稼ぐため、戦闘に身を投じた。
おかしい。あれからゴブリンを五十匹以上狩っているが、一向に減らない。それどころか、囲まれ始めてきた。
「これ、ちょっとやばくね?」
ゴブリンは普通黒ずんだ緑色をしているはずなんだが、赤、青、緑、黄色、白そして黒と、色とりどりのゴブリンがわらわら出現しているのだ。気持ち悪くて仕方がない。
「こうなったら、【毒霧】しかない!」
修行の成果の一つ、【毒霧】。赤魔法、青魔法、緑魔法を混ぜ合わせた複合魔法で、相手に直接毒を食らわせることができる、俺の十八番だ。
「食らえ!【毒霧】!」
色とりどりのゴブリンたちは続々と倒れていった。
そうして、ゴブリン退治は終了した。
「つっかれた~。後は耳を」
ドドドドドドドドド。不意に地鳴りが聞こえた。マップを見ると、やはり敵が接近していた。周りを注意してみると、
「グおおおおおおおおお!!!」
そこには、先ほどのゴブリンとは二回りも大きい黒いゴブリンが吠えた。
さしずめ、『ブラックゴブリンキング』といったところか。
「さぁ、第二ラウンドを始めましょうか」
こうして彩人は、冷や汗をかきながら、新たなゴブリンとの戦いを宣言した。
やばいやばいやばいどうしよう。俺の攻撃が通じない。どういうわけか、あのゴブリン、黒魔法を使って、俺の攻撃を消してやがる。
「くそ。この小鬼が!さっさと消えろーー!!」
俺は必死に相手の攻撃を避けるが、全てをかわしきることはできず、体に傷を負ってしまう。
「くっ」
もちろん、相手はその隙を見逃さない。
「グおおおおおおおおお!!」
「ぐは!」
俺はゴブリンにこん棒で思いっきり殴られ、木にぶつかってしまう。痛い。頭がクラクラする。もうおうちに帰りたい。でも、やらきゃ、こっちがやられる。
俺は必死に白魔法で自分を回復させながら立ち上がった。
どうする?もう勝ち目はないのか?そうだ!あの技があるじゃないか!
そして、俺はあるイメージを思い浮かびあげる。
これだ!これしかない!
「いくぞ!この小鬼やろーーー!!!」
俺はまず、黄魔法で、雷を身に纏うことをイメージした。イメージイメージっと。体全体がピリピリし始めた。どうやら成功したようだ。だが、これで浮かれている場合じゃない。
「グおおおおおおおおお!!」
相手もこん棒で攻める。一方俺はかわすことに専念している。まだ完璧に使いこなせず、攻撃する余裕がないからだ。
「まだ、だ。うおおおおおおお!!」
そして俺は、赤魔法の身体強化を重ね掛けした。これで、相手の身体能力を上回ったはずだ!名づけるなら、オレンジ魔法の【超身体強化】だ。
「行くぞ!これで仕舞いだ!!」
ドゴおおおおおおおおおん!!!
俺の渾身の拳で、ブラックゴブリンキングは二十メートル先の壁に突っ込み、頭が俺の拳で洋ナシのような形になっていた。
かくして、俺の初戦闘は勝利を迎えた。
俺はすぐに、ゴブリンたちの死体を特製のアイテムボックスに詰め込み、緋色の森を後にした。
少し多くなりました。