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色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 桃色脳であるエン公爵との決闘
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1-3-16(第66話) 彩人、看病される。~イブ編~

最後はイブです。

三日目。


「…今日はよろしく、アヤト」

「あ、ああ…」


 もうこの状況に慣れてしまい、突っ込む気力も失せてしまう。

 ちなみにルリは今日、クリムとリーフと一緒に買い食いしているそうだ。

 あのチョコの甘さとキムチの辛さがあったあの餅もどきを思い出す。

 …あんなものを買って食っていると思うと、舌が馬鹿になりそうだぜ。


「…何、話す?」

「ん~。そうだな…」


 おそらく強くなりたい、といっても具体的にどうしたいのか俺自身、分かっていない。なので、このことについて話せないだろう。

 となると、


「魔国」

「…え?」

「俺がいなくなった後の魔国の状況が知りたいんだけど、話してくれるか?」

「…うん」

 こうして、俺とイブの二人の会話が始まる。



「マジ?」

「…ほんと」


 俺はイブの話を聞いて、こう答えることしかできなかった。


 俺が赤の国に戻り、依頼を受けて生活をしている間に、魔国ではあるものが大流行した。それはホットケーキである。

 最初、魔王に仕えていたメイドが城下町でホットケーキを作ったところ、それをたまたま見かけた宿屋の女主人がそれを見つけ、一口試食してみて、

「これは美味い!なんて料理だい!?そこのメイドさん、どうか私にこの料理の作り方を教えてくれないか?」

 と言ってきたそうだ。そこでそのメイドは女主人に作り方を教えたところ、その女主人が経営している宿屋が大繁盛した。みんな、ホットケーキが目当てなのだ。

 そこからホットケーキの美味さに当てられた住民達(女性が中心)は自分から作ろうと一念発起し、ついには店を出す者まで現れた。

 そして、ホットケーキに使う薄力粉や卵等を衝動買いするものが続出したと。

 そして今、魔王に仕えているメイド達はケーキの試作で忙しいとか。


 さらにあの魔王夫妻はイブに婚約者がいることを正式に発表したらしい。

「我が娘にもついに婚約した!」

 その一言だけだそうだ。

 もちろん反発もあったが、

「この「ホットケーキ」のレシピを我がメイド達に伝授したのがイブの婿だ!今後、こういう美味しい料理を婿殿から教えてもらう予定だが?」

 この言葉で民衆の4分の3が賛成した。

 そして、残りの4分の1(全員男性)は反対していた。

「そんな奴が次期魔王にふさわしいわけがない!」

 と言ってきたそうだ。

 いいぞ。もっと言ってやれ。

 だが、

「その者は我にタイマンで勝ったのだが、何か不満があるか?」

 この一言で残りの4分の1は賛成していた。

 おいいいぃぃ!?もっと反発しろよ!?嘘の可能性考えろよ!

「近いうちに、婚約パーティーを開こうと思う。今回は果物だけでなく、婿が作る料理も大量にあるから、期待しておくといい」

 この一言で、国が大いに盛り上がったらしい。

 …なんか俺の知らないところで話が進んでいるんですけど。

 俺は話を一度も聞いたお覚えもないし、了承した覚えもない。

 ましてや婚約なんて…ちょっと嬉しい…のか?

 なんか言葉巧みに騙されている気がする。

 …聞かなかったことにしよう。うん、全部聞かなかったことにして、忘れてしまおう。

 是非、そうしよう。


 時間も忘れ、俺はイブとの会話を楽しむ。

 同時に俺は、魔国へはしばらく行かないと固く誓った。


 日が完全に落ち、城に明かりがともり始める。

 イブは窓から見える景色を見て、何かを決心したのか、急に頷き、俺の方を真剣なまなざしで見る。


「…アヤト。ありがとう」


 イブが俺に感謝を伝えるが、俺には意味が分からない。

 今回の決闘に、魔国は関わっていない。だから、イブが「ありがとう」と言うのはおかしな話だ。


「何の冗談だ?」

「冗談じゃない!!」

「!!?」


 なんだ!?イブがあそこまで感情的になるなんて、初めて見たぞ。


「…私の兄の事、きちんとお礼を言っていなかったから、言った」

「え?……あ、あー」


 イブの兄、つまりペルセウス、グランの事か。

 だがあいつは俺が殺した。

 何度も言っていた気がするが、俺は恨まれこそすれ、感謝されるようなことをしたとは思っていない。

 なんなら、イブがナイフを持って、俺に切りかかろうとしても、文句は言わないつもりでもある。

 まぁ、ただやられるわけにもいかないので、抵抗はするけどね。


「何度も言っているが、俺はペルセウスを殺したんだぞ?兄の敵討ちをしても許されるんじゃ…?」

「それはない」


 きっぱりとイブは言う。


「あれ以上、兄のあんな姿を見るのが辛かった。だから、私達は見て見ぬふりをするしかできなかった。私達じゃ兄、グランは止められなかった。でも、アヤトはグランを倒すだけでなく、兄に認められていた」

「それってたまたまなんじゃ…?」

「…たまたまでお父さんが負けたりすると思う?」

「うっ…」


 これは戦ったからこそわかる。

 魔王の実力は俺とは違い、本物だ。

 だからこそ、俺のあんな不意打ちの対策を既に練っているはずだ。

 なんとか勝利はできたが、また戦うにしても、俺が負ける確率の方が高いだろう。

 それくらい、ぎりぎりだった。

 そんな戦いを「たまたま」の一言で片づけるのは失礼だろう。


「…それに、兄がああなった理由を見つけてくれた」

「それは……、偶然だ」


 ちょっと、腕の検索機能を使って調べたら、その元凶の居場所、顔、名前が出てきたのだ。

 あれは偶然にも近いチートだ。俺が誇っていい部分ではない。

 むしろ、証拠もなくあの家主にのとこに突撃した俺が悪だと思う。今回は偶然にも当たっていたが、今後も当たるとは限らない。注意しなければ!


「…偶然でも、見つけてくれた。私達のためにやってくれた。それがとても嬉しい」


 そう言って、イブは俺に微笑みかける。

 真正面から言われると照れるな。

 俺はついつい目をイブから逸らし、首を触る。


「…だから…」


 俺がイブから目を離した瞬間、

 チュッ。

 頬に柔らかい感触を感じる。この感じは…。


「…これはお礼。そして…」


 イブは俺の目を見るため、俺の頬から唇を離し、俺の前に顔を移動する。

そして、


「ん…はむ…」

「!?!??」


 俺の唇とイブの唇が重なっていた。

 俺がそのことに気づき、イブから離れようとした。

 だが、イブもそのことに気づき、魔力で第3の腕を形成し、俺の位置を固定する。


「んん!?んんーー!!?」


「ん…ちゅ…れろ…」


 どうやら俺はこのキスから逃げられないようだ。

 時間にして数分だが、俺には何時間も経っている、そんな風に感じてしまう。それほど濃密なキスだった。まさにディープだ。


「んん…。これは、私の気持ち」

「ん!?…はぁ、はぁ…」


 俺の息がまだ整い切れていないなか、イブからこんな言葉をもらう。

 …正直、俺はあのキスが脳裏によぎってイブの顔を正面から見られないのだが…。

 俺は自分の小心っぷりにがっかりしていると、


「…いつか、アヤトから、してね?」

 そう言って、イブはその場から逃げるように部屋を出る。

 …。

 ……。

 ………。

 そうだ、寝よう。

 とりあえず俺は寝ることにした。


 だが、彩人自身気付いていない。

 イブからディープキスをされてからずっと、顔が赤いことに。

 そしてイブの顔もまた、赤くなっていたことに。


 彩人は今日も布団の中で悶々としながら、意識を手放した。



 一方、


「ふふふ…。これでようやく準備ができたぞ。後は…」


 その者は下を見ながら、何やらぶつぶつと独りごとを言っていた。


「待っていろよ、アヤト!必ず貴様の…」


 その者は自分の言葉を最後まで言い終えることなく、その場から消えた。

いつも読んで食れてありがとうございます。

間違いがありましたら、ご指摘の方、よろしくお願いします。

最後は少し、思わせぶりな感じで終わらせてみました。

言ったやつは…まだ、教えません。

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