1-3-9(第59話) 小さく、勇敢な者の協力
今回、アヤトが助けたアイツが登場します。
「ありがとな、ルリ!おかげで勝てるかもしれない」
「お兄ちゃん!」
いつの間にか近くにいたルリが俺の手をとる。
「一緒、一緒だからね。だから、頑張って!協力するから!」
「ああ!」
俺はアイテムボックスから、魔銀を取り出す。この魔銀には、ある魔法を魔力として込めているのだ。その魔法は、
「いくぞ!【増幅機】起動!」
俺達の前に、スピーカーが出現した。
スピーカー。それは、電気を使って音を出すだ。本来、音を出すのに使われるが、今回、俺の魔改造により、魔力が出るようにした。
だが欠点もある。
それは、このスピーカーは魔力しか出ないうえ、これを起動するのに、大量の魔力を消費するのだ。おかげで雀の涙ほどしか魔力が残っていない。
だが今回、このスピーカーを大量に使用するため、一個用意しただけじゃ意味がない。だが、起動するための魔力がない。
ここで、魔力池で俺の魔力を回復させながら、あの魔法を使うのだ。
「【複製】!対象、スピーカー!」
瞬間、スピーカーが何個も増えだした。
【複製】。それは俺が編み出した魔法の一つだ。文字通り、何かを複製するときに使う魔法だ。この魔法の方が、消費する魔力量が少ないのだ。といっても、何を複製するかによって、消費する魔力量が大きく変わる。今回複製するスピーカーは、少し多いのだ。それに、複製する個数は一個や二個ではないからな。
俺は自分の魔力全てをスピーカーの複製に使う。
「うおおおぉぉぉ!!」
どんどんスピーカーが増えていく。
「な!?なんなのだ、その魔法は!?」
いきなりスピーカーが何個も出現している事態が呑み込めない公爵がしゃしゃり出てきた。
うっせーな。今頑張って複製しているんだから、あっち行っててほしいんだけど。
俺はそんなことを思いながら、どんどん複製していった。
「こ、こんなものか……」
俺は自分の魔力が空になったのを確認し、周りを見渡してみる。
「うへぇ…」
いくら自分でやったとはいえ、俺の周りに無数のスピーカーがあるって、不気味だな。
俺はそんなことを考えながら、魔力池で自分の魔力を回復させる。
「う。やっぱこの感じ、どうにかならないかな…」
この魔力池での魔力回復にも欠点がある。それは急激な魔力摂取により、船酔いのような症状が出るのだ。これは何度やってもなかなか対策できず、結局慣れるまで頑張って慣れよう、という決断しかできなかったのだ。
俺は激しい酔いと闘いながら、次の段階に移行する。
「行くぞ。魔力注入!」
いくらスピーカーといえど、0を百や千にはできない。やはり、起動したとはいえ、元となる魔力が必要なのだ。
なので、俺は全てのスピーカーに魔力を注ぎ込む。
俺が魔力を送ると、全てのスピーカーが少しずつ光を帯びる。
こんなエフェクトいらないんだけど。
「な!?箱が急に光っただと!?」
そういえば、周りの人にとっては、いきなり大量の黒い箱が光りだし始めたように見えるよな。
現象とか原理とか知らないと恐ろしく感じるかもな。
後で、イブやクリム王女達に教えておこうかな。伯爵はどうでもいいな。
あの赤魔法最強と言われている魔法【蒼月】が近づき、周りの空気が熱くなり始めたとき、魔力の装填が完了した。
それは、俺の魔力が底を突いた、ということを示す。
本来、すぐにでも次の行動に出て、あの魔法【蒼月】を止めなければならないのだが、すぐに出来なかった。
「う。きもちわりぃ…」
ただでさえ、魔力を何度も大量摂取して、激しく酔っているというのに、ここにきて魔力不足による倦怠感が俺を襲う。治そうにも、魔力が無いのだから、治すこともできない。
…詰んだ。魔力池で回復しようにも、あの激しい酔いに耐えきれる自信がない。おそらくそのまま倒れ、次に目覚めた時はあの世になってしまうだろう。
こういうことになるんだったら、少しぐらい魔力を残しておくべきだったな。今更後悔しても遅い。
「お兄ちゃん?もしかして、魔力酔いなの?」
「…ああ、そうみたいだ。こんな時にヘマしちまって悪いな」
「ううん。今はゆっくり休んで。顔が真っ青だよ」
心配してくれるのは嬉しいけど、今ここでゆっくり休んでいるわけにはいかない。
俺はルリから離れ、自分で立とうとする。
だが、
「うあぁ!?」
「お兄ちゃん!?」
危ね。よろけちまったな。
ルリのおかげでなんとか助かったが、一人で立つのは無理かもな。
「ルリ、肩を貸してくれるか?」
「…わかった。その代わり、あまり無茶しないでね」
俺はルリの力を借り、ようやく立てた。
「ふん!そんな調子で我が魔法【蒼月】を止められると思うな!」
「…わかっているさ」
そんなこと、自分が一番分かっているんだよ。
くそ!もう止める方法が…。
そんな時、一匹の勇敢な者がアヤトの前に現れる。
「ぴよ。ぴよおおおぉぉぉ!!」
それは、おれが助けたフェニックスだった。
なんだ、フェニックスか。いつまでもこんな危険な場所にいやがって。どうなっても知らんぞ。
というか小さくないか?
戦っているときは何メートルもあったのに、今は一メートルもない。小さくて赤い小鳥だ。
そしてフェニックスは俺の頭の上に乗った。
「ぴよ。ぴよよよ。ぴよよよよ!」
…何を言っているんだ?
俺にはぴよぴよ言っているようにしか聞こえないが、ルリには伝わったらしく、
「お兄ちゃん!その子、助けてくれたお礼がしたいんだって!」
「はぁ…。だったら、俺を回復してくれないか?なんて、…」
「ぴよ!」
任せて!と言わんばかりに自分の胸を張るフェニックス。
そして、
「ぴよぴよぴよぴよぴよおおぉぉぉ!!!」
瞬間、フェニックスが紅に燃え出す。やがて、その炎は俺達をも巻き込んだ。
「おい!?なにすんだ!?これじゃ俺達焼死するぞ!?」
だが、この炎は全然熱く感じない。
それどころか、心地いい。
なんだか、コタツを思い出す。あの温もり、あの温かさ。まさに現世の天国だ。
冬は大抵コタツの中で過ごしていたからな、コタツが恋しい。
そして何より、今まであった気持ち悪さや倦怠感がほとんど感じられない。
「な!?あ、ありえん!まさか、あのフェニックスに【命の灯火】を使わせるなんて!?」
【命の灯火】?もしかして、このフェニックスが使っているこの炎のことか?
もしかして、この炎には、回復効果があるのか?
「…もしかしてお前がやったのか、フェニックス?」
「ぴよ!」
そうだよ!と言わんばかりにまた胸を張るフェニックス。
「元気になってよかったね、お兄ちゃん!」
「ああ。フェニックスのおかげだ」
「ぴよ~♪」
これは俺でもわかる。
フェニックスは照れているのだ。
照れ屋さんめ。いつかこいつが飼えればと思ってしまうじゃないか。
さて、体調もばっちりだし、やるか。
俺は魔力池で魔力を回復させる。
…うん。なにも問題ないな。
「最後の段階だ。ルリ、手伝ってくれるか?」
「もちろんだよ!!」
さぁ、あのバカでかい球体を消し飛ばしますか。
いよいよ決闘も佳境です。




