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色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 桃色脳であるエン公爵との決闘
55/529

1-3-5(第55話) クリム王女とリーフさんとの会話。そして…。

「ぶっ」

「おいアヤト。なんだその顔は?私の顔になんか付いているのか?」

「い、いえ、なんでもないですからちょっと頭をわしづかみに、ぎゃああああああ!」

「ふん」


 お仕置きとばかりに、ギルドマスター改めリゼからアイアンクローを食らってしまう。

 俺の頭はそこまで頑丈じゃないのだが…。


「おそらくお前は勘違いをしている。婚約を申し込まれたのは私ではなくリーフだ」

「なるほど」


 確かに、あの片付けがろくにできない人と結婚しようとなんか誰も思わないよね。気に入らないことがあるとすぐにアイアンクロー等したりするもんね。

 でもわからない。婚約を申し込まれたのなら、その相手に直接会いに行くのが礼儀ではないのか?もしくは、手紙を書いて断ったりするのではないのか?

 そういや、リーフさんに婚約を申し込んだ人って誰なのだろう?


「えっと、リゼ、さん?」

「普通に呼び捨てでいい」

「わかりました。それでリゼ。リーフさんの婚約相手は誰ですか?」

「ブラッド=エン公爵だ」

「え?でも、クリム王女とも婚約しているって…」

「そうだ。つまりブラッド=エン公爵は二人と婚約している、ということだ」


 俺は知らず知らずのうちに、嫉妬の炎を燃やしていた。


 何あいつ?めっちゃリア充じゃん!

 地位はあるわ、金はあるわ、名声もあるわ。

 顔は…触れないでおこう。俺にもブーメランが来そうだし。

 とにかくだ!あんななにもかも持っているようなやつが幸せそうな生活送っているとかむかつく。すごいむかつく。個人的にこいつの人生壊してやりたいぐらいだ。

 …さーて、報われない婚約を破棄するためにも、頑張ろうかね。

 決して、男の醜い願望や嫉妬は一切関係ない。

 …ちょっとだけだよ。ちょっと羨ましいと思ったくらいだよ。

 ほんとだからね?


「…アヤト?」

「お兄ちゃん?」


 やば。余計なこと考えていたら、また変な誤解をされかねないからな。


「な、なんでもないぞ。なんでも」

「…そ」

「良かった。お兄ちゃんから醜いものを感じた気がしたけど、気のせいだね!」

「う、うん」


 ルリのカン、恐るべし。

 決闘前、俺は二人と話がしたく、俺の控室に呼んだ。


「アヤトさん。用事とは何でしょうか?」

「そうですよ。決闘前という大事な時にアヤトさんは何をする気なのです?」

「話だ」

「「話??」」

「そうだ。まず確認したいことは、婚約相手のことだ。二人が本当にあの…男と婚約し、結婚したいなら、最悪俺が負けても…」

「「そんなの駄目です!!」」

「うおぉ!?」


 二人が急に大きな声で反応する。いきなりのことで俺もびっくりだ。


「あんな人と婚約なんてしたくありません!いつのまにか婚約することに話が進んでいたんですよ。私抜きで!」

「私も、王家の人間として、あの者と婚約したくないです。あの者の顔も見たくありません。どっちかというと、アヤトさんの方がまし…だと思います」


 クリム王女。そこは嘘でも言い切ってくれないと、俺、へこみますよ。


「そして何よりアヤトさんの努力を…」

「アヤトさんのしてきたことを…」

「「否定したことです!!」」


 見事にシンクロした声で、俺の事を押してくる二人。

 やばい。


「ちょっ!?アヤトさん、どうしたんですか!?」

え?


「その、ハンカチで拭いてください」


 何を拭くんだ?

 そう考えると、手のひらに何かが当たったような感覚がした。

 もちろん室内なので、雨が降った、ということではないだろう。

 それじゃ一体…?

 すると二人が俺の疑問を察してくれたのか、二人とも、頬を指さしていた。

 試しに自分の頬を触っていると、そこには、


「あ」


 涙だった。俺がそれに気付くのにそこまで時間はかからなかった。


「なんで?」

「………」

「……辛かったのではないでしょうか?」

「辛かった?」


 クリム王女は小さな子供に言い聞かせるように話し始める。


「おそらくですが、辛かったのだと思います。今回のアヤトさんの活躍は素晴らしいものです。それはそれは王族の人達がどんな手を使ってでも自分の娘と結婚させて、その遺伝子を後世に残したいと思えるほどだと思います。ですが、あのエン公爵はその素晴らしい活躍を「虚偽の報告」の一言で片づけたのです。私達は呆れるぐらいで済みましたが、アヤトさんは作戦の立案から魔道具提供まで、私達が一生かかってもできないようなことをやったのです。よほど心にこたえたのだと思いますよ?」

「そうなのか?」


 俺としては、たまたまもらった鉱石や武器を使って魔道具を作っていただけなのだが。


「はい!ですからアヤトさんの辛さは私達ではわかりません。なので、」


 リーフさんもクリム王女に乗っかる形で俺に語っていく。

 そして、リーフさんはいきなり俺を自分の胸にまで持ってきていた。

「私に教えてください。アヤトさんの想っていることや考えていること、全部」

「ぜ、全部!?」

「はい。全部です。そうすればきっと…。だから今はこれで我慢してください」

「むぅ。私だってしたかったのに…」

「やったもん勝ちですよ、王女様?」


 女性陣同士の会話はあまり聞き取れなかったが、この感じは落ち着く。

 時間にして、一分も満たなかっただろう。

 俺は今、自分の行動を物凄く後悔している。


(何故リーフさんの胸で泣いている!?)


 自分でも状況が整理できていない。

 確か……あぁ。俺、泣いていたのか。

 …もうこのまま逃げていい?

 二人に顔向けできないほど恥ずかしいことをしたな。

 

「…二人ともありがとうございます。そろそろ行って勝ってきますよ」

「はい!後でいっぱい話しましょう?アヤトさんの想っていること、考えていることを」

「そうですよ!是非ホットケーキでも食べながら語りましょう!」

「本音がダダ漏れですよ、リーフさん?」

「あ!?いや、ちがくて、その…」


 リーフさんは急にあたふたし始めた。

 ちょっとかわいいと思ってしまうのは仕方のないことだろう。


 俺はそんな二人を見ながら、控室を後にした。

前回の題名は嘘です。

リゼではなくリーフさんが婚約するのです。


次回から、彩人とエン公爵の決闘が始まります。

まぁ、来週になるのですが…。

来週、更新します。

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