7-1-54(第543話) 虹無対戦~無の国編その17~
俺は今、信じられない光景を目にしている。
カラトムーガから【虚空】という魔法を受けたリーフ達は、もう駄目かと諦めかけていた。だが、【色分身】で分身していた俺達が助けてくれた。一体どうやって【虚空】の中に入り、クリム達と合流したのか気になるが、そんなことはどうでもいい。
クリム達が助かった。その事実だけで十分だ。
(【色分身】で増やしたとはいいえ、本当に凄いな・・・、)
おかげでこうして、また生きた状態のクリム達を見ることが出来るのだから。
「馬鹿な!?あの【虚空】から生きたまま出てきた、だと!!??」
カラトムーガは今の状況に驚きを隠すことが出来ないようだ。正直、俺も驚いているけど。
「ああ。お前の魔法を破ったぞ。みんなで!」
俺はカラトムーガに宣言する。
(・・・なんだろう?)
不思議と力が湧いてくる。特に何かしたわけではないというのに、体の奥底から力が溢れてくる。
「・・・私の魔法を一つ破ったところで、私の勝利は揺るがぬ。そして、貴様らの死も揺らがぬ」
カラトムーガは取り繕うように宣言する。
(確かにそうかもしれない)
カラトムーガの言う通りだ。
俺の分身体達はあくまで、【虚空】という魔法を破っただけに過ぎない。カラトムーガは他にも魔法を使ってくるだろう。まだ見ぬ魔法を使ってくるかもしれない恐怖はある。
が、自然と今は落ち着いている。
負ける気が全くしない。
「いいや、揺らぐね」
俺はカラトムーガを見る。
(それじゃあ俺達はお前の元へ戻るわ)
(後は任せた)
(戻ったとしても、ずっといるからね)
(今回ばかりは、目立つ権利を譲るよ)
(必ずや、正義を執行せよ)
(美味しいもの、いっぱい食べろよ)
【色分身】で増えた俺がどんどん消えていく。そして、俺の中に入っていく。
(今なら分かる)
俺がどれほど人に恵まれていたのか。どれほど優しい人物に囲まれていたのか。
(今なら、使える)
俺は今まで使えなかった神色剣に手をかけ、鞘から抜く。
(やはり、抜けた)
今なら分かる。この剣が俺を認めてくれたのだと。
(やっと、話が出来るわい)
どうしてか、どこからか声が聞こえてくる。俺ともクリム達とも異なる、別の声が。
(誰の声だ?)
カラトムーガの声によく似ているような声だな。まかさカラトムーガが俺に直接語りかけているのか?・・・そんなわけないか。となると、本当に誰だ?
(我のことはひとまずいい。それより、あ奴のことを倒す可能性がある魔法を教える)
なん、だと!?あいつを倒す魔法があるのか!!??
(だが、この魔法を失敗すれば体は破裂し、確実に絶命するだろう。それでも、やるか?)
やるさ!だから教えろ!!
俺は迷わずに懇願する。誰が教えてくれるのかは不明だが、それでもカラトムーガを倒すことが出来るのなら構わない!
(・・・分かった。それではこの魔法について教えよう。この魔法はアヤトにしか出来ない魔法でな・・・、)
俺は何者かからある魔法について教わる。
(・・・そうか。分かったよ。それならもしかしたら、カラトムーガを倒すことが出来るかもしれないな)
(うむ。それと、周囲の仲間達との協力を忘れるでないぞ)
ああ。
ありがとうな。
・・・返事はなかったが、感謝の気持ちが俺の中に流れ込んできた。
一体、誰が俺にこの魔法を教えてくれたのだろうか?・・・いや、今は気にしている余裕はない。
「お前はこれから、俺達に負ける」
「どうした?現実と理想も区別出来なくなったか?」
「ああ。だってこれから、幸せな生活を送るという理想を現実にするからな」
俺は自身の体に力を入れ始める。
「その為に、お前は邪魔だ。だから・・・、」
魔力制御が今まで以上に上手くいっている。これなら、あの魔法を同時に使うことが出来る!
「お前を、倒す!」
次回予告
『7-1-55(第544話) 虹無対戦~無の国編その18~』
カラトムーガを倒すと宣言した彩人は、何者かの助言により、ある2つの魔法を掛け合わせる。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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