7-1-51(第540話) 虹無対戦~無の国編その14~
「そう、か」
ひとまず俺は死んでいなさそうだ。
だが、
「リーフ達は、もう・・・、」
いない、と言おうとした瞬間、俺の胸ぐらが掴まれる。
「だから!もっとよく周りを見ろと言っているだろうが!!」
俺は赤い俺に怒鳴られる。
「周り、を?」
俺は周りを見る。
(・・・色んな色の俺がいるだけじゃないか)
周りを見たって何も変わらない。俺以外の仲間が、大切な仲間の死は変わらない。
「周りと言っても、ただ俺達の顔を見ろ、という意味じゃない。もっと【魔力感知】に意識を集中しろ。そう言っている」
「【魔力、感知】・・・、」
「そ、そうすれば分かるはず、だよ?」
「そうだよ!なんだって【色分身】の僕達でさえ分かっているんだよ!」
「まったくだな」
「まずは何か胃に入れてから【魔力感知】した方が・・・え?いらない??あ、そう」
俺は【魔力感知】をする。
(やっぱり【魔力感知】してもリーフ達は・・・え?)
この魔力、俺の魔力でもセントミアさんの魔力でも、カラトムーガの魔力でもない。この魔力は、今まで何度も何度も感知した覚えのある魔力はまさか・・・!?
「生きている、のか?」
俺は周囲の俺に聞く。すると、六人の俺は一斉に頷いた。
「そう、か」
まだリーフ達は生きている、のか。ならこれから助ければ・・・助ける?
(一体どうやって?)
リーフ達全員、あのカラトムーガが放った【虚空】とかいう魔法で封じ込められているはず。その魔法から一体どうやって・・・?
「・・・やっと、やっと分かった気がするぜ」
「だな。少し落ち着いたら分かることだろうに」
「えと・・・大丈夫、だよ?」
「まったく。君は今、何も見えていないのかな?この僕という光を!」
「今、貴様の目に何が映っている?それが答えじゃないのかね」
「このホットケーキこそ答え・・・え?それは違う?そ、そう・・・、」
・・・本当にこいつらは俺の分身なのだろうか?時々、こんな状況でもボケている奴がいるのだが?いや、本人にはボケている自覚がないのかもしれない。
「俺達が、お前の代わりにクリムを助ける!」
「それじゃあ俺はルリを助けよう」
「リーフで。こんな自分に助けられたくないかもだけど」
「僕はモミジを助けるよ!」
「なら私はクロミルを助けるとしよう」
「それじゃあ俺はイブを助けよう。食べ物で上手く助けられるだろうか」
俺は俺自身の発言に戸惑う。
「ほ、本気で言っているのか?」
あの魔法、【虚空】がどういう魔法なのかも、突破方法も分からないのにどうやって助けるつもりなのだろうか。
「もちろんだ!」
「例え分からなくてもやるしかない」
「で、でも!やる価値はあると思う、な~?」
「目立ちに目立っている僕を見れば、きっと助けられるさ!」
「・・・相変わらず自分なのに、何を言っているのか分からないな。だが、助けることには同意だ」
「さて、これからも美味しいご飯を食べる為に頑張るとしよう」
だが、こいつらは全員本気らしい。
本気で、リーフ達を助けようとしているんだ。
(それなのにいつの間にか俺は、助けられない理由ばかり考えていた・・・!)
これは、助けられないかどうかじゃない。助けたいか助けたくないか、だったのだ。
「・・・俺は、何をすればいい?」
その声を聞いた他の俺達はというと、
「そこで待っていてくれ」
「肝心のお前が死ぬと、俺も死ぬからな」
「こっちは自分達に任せて、ね?」
「君に仲間の存在を教えてあげるよ!」
「そうだ。貴様には既に、数多くの仲間がいる」
「食べ物を一緒に食べてくれるような、そんな素敵な仲間を必ず助ける」
そう言い、他の俺達は俺に背中を見せ、その場から消えていった。
(・・・頼む。どうか、どうか!)
俺は全員の無事を願う。
「!?」
ここで急に視界が変化する。
どうやら心の中から現実へ戻ってきたらしい。
「この【虚空】に飲み込まれた者共はもう一生、生きてこの空を見ることはないだろう」
「どういう、ことだ?」
俺はカラトムーガの言葉に反応し、質問する。俺の質問にカラトムーガはニヤリと笑い、待っていましたと言わんばかりに答える。
「この【虚空】から出るたった一つの方法。それは・・・、」
(それは・・・、)
俺はカラトムーガの答えを集中して聴く。
「死ぬことだ。死んで初めて、【虚空】が自動的に解除される。それ故、一度【虚空】に閉じ込められたら二度と空を見られぬと思え」
このカラトムーガの言う事が正しいなら、この【虚空】で捕らえられたら死ぬまであの中から出られない、ということになる。
(そんな魔法を相手に、【色分身】の俺達はどう動くつもりなのだろうか?)
俺は改めて【虚空】を見る。その後、
「見られるさ」
「なに?」
俺はカラトムーガの後に言葉を続ける。
「俺がその【虚空】からリーフ達を開放し、またこの空の元で笑っていられるようにするさ」
「ふ。そんなことはあり得ん。絶対にな」
俺はその言葉を聞き流す。
(確かに今の俺独りならカラトムーガの言う通り、何も出来ずにリーフ達を死なせていたところだろう)
だが、今は違う。俺には、【色分身】で増えた俺達がいる。
(絶対、救ってくれ!頼む!!)
俺は心の中で祈り始める。リーフ達の笑顔をイメージしながら。
次回予告
『7-1-52(第541話) 虹無対戦~無の国編その15~』
【色分身】で分身した彩人達は、死ぬことでしか出ることが出来ない【虚空】に捕らわれてしまったクリム達を助けに向かう。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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