7-1-49(第538話) 虹無対戦~無の国編その12~
(さて、まずはどういう相手なのか分析しましょう)
リーフは周囲を見渡す。
「クリム、ルリちゃんはとにかく攻撃して!イブ、モミジちゃんは後方支援!私とクロミルちゃんはクリムとルリちゃんを支援するわよ!」
「「「「「はい!!!!!」」」」」
クリムとルリはカラトムーガに向けて直進する。イブは全体を見渡し、モミジは彩人に寄り添い、リーフとクロミルは魔法の準備をする。
「なんと愚かな。その程度の力で我に挑むとは」
カラトムーガは目の前のリーフ達に呆れる。
「我が力を、死を以て理解するといい」
そう言い、カラトムーガは人差し指を上げる。すると、クリムとルリの頭上に無数の剣が出現する。
「まずは我に向かってくる二匹のハエを駆除しよう。貫け」
無数の剣は、クリムとルリに向かっていく。
「殴ってどかす!」
「邪魔!」
クリムとルリは拳を構え、剣を殴っていなそうとする。
「!?避けて!!」
「「!!??」」
リーフの指示に二人は驚くも、咄嗟に回避しようと体を捻る。その結果、剣が体を掠めてしまったものの、貫通することはなかった。
「ほぉ?今の攻撃を躱すか。勘がいいのだな。そのまま直撃していたら死んでいたものを」
「あの攻撃、拳で殴ってもどうにも出来なかった・・・助かった」
「ありがとう、リーフお姉ちゃん!」
「気をつけて!あいつの攻撃は全部躱して!」
「分かったわ!」
「うん!」
クリムとルリは再び直進する。
「クロミルちゃん、私達も行くよ!」
「は!」
リーフ、クロミルはクリム、ルリの後に続く。
「愚かなハエ風情が。我に向かうこと自体愚かであると知れ」
「「「「!!!!????」」」」
瞬間、リーフ、クロミル、クリム、ルリが地面に突っ伏す。
「まさか、私達の体重を自在に・・・!?」
「地面に突っ伏したまま無様に死ね」
四人の頭上に無数の剣と槍が出現し、そのまま四人に向かって直進する。
「危ない!?」
「!?私に任せて!」
イブは魔力で腕を四本形成し、その腕でリーフ、クロミル、クリム、ルリを掴み、自身近辺に移動させる。
「助かったわ」
「ありがとうございます、イブ様」
「たまには役に立つじゃない」
「ありがとー♪」
そう言うと、クリムとルリは迷いなくカラトムーガのところへ直進する。
「私達はどうしますか?引き続きあの二人を援護しますか?」
「う~ん・・・、」
リーフは迷っていた。
(あの防御不可能の攻撃、どうやって防ぐことが出来る?それに・・・、)
リーフはカラトムーガを見る。クリムとルリが攻撃をし続けているのに関わらず、カラトムーガは一切傷を負っていない。
(どうして無傷なの?その現象をどうにかして解明しないと!その為には・・・、)
リーフはクロミルを見る。
「クロミルちゃんはあの二人の支援をお願い」
「承知しました」
クロミルはクリムとルリの元へ向かう。
「モミジちゃんは引き続き、アヤトの看病をお願い」
「はい」
モミジは彩人に寄り添い、植物達と協力して彩人の体を癒す。
「イブは後方支援しつつ、あれの分析をお願い。何か気づいたことがあったらすぐに教えて」
「・・・ん。リーフは?」
「私もイブ同様、分析に集中するわ。でも、攻撃はしていくわ。それじゃあ」
リーフは今も前線で戦っているクリム、ルリ、クロミルの元へ向かう。
「【火球】!」
クリムの【火球】がカラトムーガに直撃した。
だが、カラトムーガは無傷だった。
「氷れ」
ルリはカラトムーガを氷漬けにした。
だが、氷は瞬時に砕かれる。
「牛術が一つ、【午閃】!」
クロミルがカラトムーガに向けて【午閃】を放つ。
本来、相手の体が無数に切り裂かれるはずだった。
だが、カラトムーガの体は、切り裂かれるどころか切り傷一つついていなかった。
「無駄な攻撃を。鬱陶しい」
そう言い、カラトムーガは再びクリム、ルリ、クロミルの頭上に無数の剣を顕現させる。
「クリム様、ルリ様!」
「分かっている!」
「うん!」
クリム、ルリは剣をひたすら躱し続ける。
(なんとか、なんとかしなくては!)
クロミルも、自身に無数の剣の脅威にさらされながらも、二人を助ける方法を考える。
(私の牛剣で!)
クロミルは、同じ牛人族から託された牛剣を握りしめ、二人の元へ行く。そして、牛剣をカラトムーガの剣に向けて振る。
(!?やはり駄目ですか・・・)
カラトムーガの剣はクロミルの牛剣をすり抜け、クロミルに向かっていく。が、突然何かにはじかれ、クロミルに剣が刺さることはなかった。
「一人で行っちゃだめよ!」
「そうだよ、クロミルお姉ちゃん!やるならみんなで、だよ!」
クリムとルリがカラトムーガの剣を弾いていた。
(!?あの二人が防御不能の攻撃を防いだ!!??)
リーフは二人の行動とその結果に驚く。
「圧死しろ」
「「!!??」」
クリム、ルリ、クロミルの両サイドに突如大岩が出現し、三人に迫る。
「私とイブで左を!三人で右を!」
「分かったわ!」
「うん!」
「はっ!」
リーフはイブを一瞬だけ見る。
「・・・」
リーフの言葉と視線で意味を理解したイブは、魔力で形成した腕を伸ばす。
「!?」
「!?・・・止まった?」
リーフの剣とイブの腕で、カラトムーガの大岩が止まる。
「そっちは・・・止まった!?」
クリム、ルリ、クロミルの方も、カラトムーガの攻撃を止めていた。
(どういうこと!?)
リーフは今の状況に、カラトムーガの攻撃を止めることが出来ているこの状況に理解出来ずにいる。
「邪魔な羽虫共だ」
瞬間、リーフ達の周囲の重力が強くなる。
「今度こそ、死ね」
リーフ達の頭上に特大の岩が複数出現する。
「避けて!」
リーフの言葉を聞いたクリム達は、この場から離れようと試みる。
「体が、重い・・・!」
「う~ん・・・、動き、辛い・・・、」
「クリム様、ルリ様、私、が・・・!」
(ここをどうにかしないと・・・!?)
リーフはこの状況をどうにかしようと思考する。
(あの岩を一人で・・・いや、一人じゃ駄目!)
「みんなであの岩を、壊すわよ!」
リーフは自身の細剣に風を纏わせる。
「うん!」
ルリは自身の拳に氷を纏わせる。
「もちろん!」
クリムは自身の拳に炎を纏わせる。
「・・・ん!」
イブは背中から魔力で形成した腕を生やす。
「承知しました」
クロミルは自身の牛剣の剣先を岩に向ける。
それぞれが自身の足で、意志で重力に抗う。
「終わるがよい、愚かな生き物共よ」
頭上にある岩が、リーフ達に迫る。
「イブ!」
「ん!」
イブは魔力で形成した掌にクリム、ルリ、クロミル、リーフを乗せ、思いっきり投げる。
「クリム、ルリちゃん、クロミルちゃん、後は任せるわよ!」
リーフは自身の細剣を思いっきり振る。すると風が発生し、クリム、ルリ、クロミルを後押しする。
「クリム様、ルリ様!私の剣にお乗りください!」
「分かったわ!」
「うん!」
クリムとルリは不安定な態勢の中、なんとかクロミルの剣の上身に乗る。
「いきます!」
クロミルは思いっきり牛剣を振り、クリムとルリを飛ばす。
「ルリちゃん、行くわよ!」
「うん!」
クリムとルリは自身の拳を強く握り締め直す。
「【炎、拳】!」
「いっけー!!」
クリムとルリの拳が同時に、岩に直撃する。その結果、岩は粉々に砕かれた。
「よし!」
「やった!」
クリムとルリは、岩が砕かれたことに喜ぶ。
「隙だらけだ」
「「!!??」」
いつの間にかクリムとルリに近寄っていたカラトムーガは、自身が手にしている剣を二人に向けて振り下ろす。
はなから見れば絶体絶命の状況。そのはずなのに、クリムとルリはまったく絶望していなかった。
(?何故こいつらは死を目前にして絶望していない?)
カラトムーガは二人の感情の違和感に気づきながらも、二人の命を奪おうとする。そのままいけばカラトムーガの剣は二人の命を奪うはずだった。だが、二人の命が奪われることはなかった。
「・・・なるほど。我の動きを読んでいた、というわけか」
「ええ。あなたならそうくると思っていましたので」
「流石はリーフ様です」
リーフとクロミルがカラトムーガの剣を防いでいたからである。
リーフ、クロミル、クリム、ルリの四人は怪我することなく、カラトムーガから距離をとる。
「・・・これでようやく分かりましたよ。」
「一体、何を分かったのかね?自分が死ぬという不変の運命を、かね?」
「違うわ」
そう言い、リーフは僅かに口角を上げる。
「あなたに対して、攻撃が効かない理由。そして、防御出来ない理由をね」
次回予告
『7-1-50(第539話) 虹無対戦~無の国編その13~』
あらゆる攻撃を無効化し、防御不可能な攻撃を繰り出すカラトムーガ。その攻撃と防御にはある仕組みがあり、リーフはその仕組みを見抜く。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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