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色を司りし者  作者: 彩 豊
第7色 無の国 第一章 虹無対戦
532/546

7-1-42(第531話) 虹無対戦~無の国編その5~

 これは、彩人がこの世界に来る何年、何十年、何百年、それより前の話である。

「・・・はい。これで家は直りましたよ」

「本当だ!ありがとー!ほら、あなたも!」

「本当に感謝する。お前さん、子供なのに凄いな」

「あ、ありがとう」

 ある冒険者は家の修復依頼を受け、完了し、感謝されているところだった。家の持ち主である夫婦は家を修復してくれた冒険者、セントミアの手を握り、感謝の気持ちを伝えていた。

「あ、セントミアのお姉ちゃんだ!」

「昨日はありがとー♪」

「また遊んでねー♪♪」

「うん、またねー」

 そう言い、セントミアは小さな子供達に手を振る。その小さな子供達はいずれも孤児院で生活していて、慈善事業に近いこともしていた。

「今日も頑張ったな」

 セントミアの生活は充実していた。毎日冒険者ギルドで依頼を受け、陽が沈み始めるころに依頼を終え、報酬をもらい帰宅する。そんな当間のような日々を送っていた。

 そして、そんなゆったりとした日々は突如終わりを告げる。


「いたぞ!!」

「【無情】のセントミアだ!殺せ!!殺せー!!!」

「今ならだいぶ弱っているはずだ!!」

「くそ!どこかに隠れやがったな!?」

「なんとしてでも見つけ出せ!見つけ次第殺せー!!」

「「「おーーー!!!」」」

 武装した複数の者達がセントミアを追っていた。武装した者達の目に狂気が宿っており、誰かを殺さんとばかりの意志が強く込められている。

(どうして・・・ねぇ、どうして?)

 一方、セントミアは物陰にひっそり隠れながら自問する。

(どうして私を狙うの?どうして私を殺そうとするの?)

 自問内容は、セントミア自身を殺す理由である。

 セントミアには普通の人よりとても力があった。

 だがその力は、普通の人からすればとても恐ろしく、詳細不明だった。その詳細不明な力がよくない噂を呼び起こし、冤罪を生んだ。

 その冤罪の内容は、脅迫、殺人、無銭飲食等、日本だったら犯罪で逮捕されるような数々の罪だった。もちろん、セントミアはどの罪もやっていない。

 そして、

「・・・私以前、あの冒険者に脅迫されて、お金を盗られました」

「俺の大事な人、あのくそ女に殺されたんだ!」

「あたしの店で金払わずに食って、そのまま逃げていったよ!ほんっとに許さない!!」

 セントミアにとって、いずれもやった覚えのない罪だった。だからセントミアは自身の無実を知ってもらう為、強めに否定をした。その強めの否定が裏目に出てしまった。

 強めの否定が図星をつかれたように見られてしまい、一層疑われ、疑惑が確定に変わっていってしまった。そうなったらもう、いくら否定しても冤罪が確定してしまった。

「違う。私じゃ・・・、」

 そう言うセントミアに対し、周囲の人々がとった行動は、

「人殺し!」

「犯罪者!!」

「二度とこの町に来るな!!!」

 言葉と魔法による暴力だった。

「!?」

 セントミアはたまらず逃げた。

 そこから、セントミアの逃亡が始まった。


 逃亡し始めてからセントミアの生活は日陰のような生活を送っていた。

 冒険者として活動出来ないセントミアは、冒険者ギルドで扱えないような非合法の依頼を、裏の冒険者ギルドで受けることにした。そうやって日銭を稼ぎ、日々を過ごしていく。日々を過ごしていくうちに、罵倒され、魔法や武器による攻撃を受ける。そして、血や死体を見る回数も増えていく。そんな生活を過ごしていくうち、

「・・・」

 セントミアの心は次第に壊れていく。壊れていき、人殺しに躊躇なくなっていき、討伐隊が送り込まれる。

「・・・私の邪魔をするな」

 セントミアの討伐隊に向ける目は、無だった。何も感じない、怒りや悲しみを向けられても一切動揺している様子はない。

「打て!打てー!!」

「火よ、球となってその者を焼き尽くせ!【火球】!!」

 【火球】の他にも様々な魔法がセントミアに向けて放たれる。

 討伐隊から向けられる敵意、殺意に対して、

「・・・」

 やはりセントミアは何も思わなかった。裏切られた感情が、全てを無にしていたのだ。

 そして、セントミアは返り討ちにしていく。複数回返り討ちにしていたらいつの間にか触れてはならない相手として、恐れられるようになっていった。その後、様々な国を旅し、

「・・・我が主よ。一生仕えさせていただきます」

「私を選んでくださり大変感謝パラ」

「この知識、技術、生全てを捧げると約束しよう」

 様々な魔獣と出会い、何匹か無魔法で自身の眷属にしていた。

 そして更に旅を続け、ある城跡に着く。その城跡は、建物自体はとてもボロボロで人が住んでいる気配はない。

「・・・ここにしばらくいるか」

 だが、この城跡には書物があった。誰の物なのか、いつからある物なのかは不明だった。

 最初、誰かが自分達に仕掛けた罠の類であることを考慮し、徹底的に調べた。その結果、偶然そこにあっただけだと判明した。なのでセントミアは、周囲の警戒を怠らない程度に、目の前の書物に集中する。

(・・・この戦い・・・、)

 その中でセントミアは、気になる記載を見つけた。

 その内容は、この地域は以前、大きな戦いがあったということである。その大きな戦いの発端は、ある者の力の大きさだった。

 その者の力が強力過ぎるあまり、ほとんどの者が徒党を組み、その者を討伐しようという戦いになった。その戦いの規模がどんどん大きくなり、いつしか世界を巻き込んだ戦いとなったらしい。

 その戦いの勝者は、徒党を組んだ者達だった。が、大変大きな被害が出てしまい、勝者と呼んでいいのか分からなくなるくらいだった。

(悪者を殺した伝記、みたいな書き方だな。独りで戦った奴は本当に殺さなきゃいけないほどの悪人だったのか?)

 ここでセントミアは、ある者について焦点を当てる。

 何故置いたのかというと、この者を討伐する理由が分からなかったからである。

(強大過ぎる力を持っていたから討伐する、だと?)

 強過ぎる力を持っていることはこの書物からは分かった。だが、力を持っている、それだけの理由で討伐されなくてはならないのか?その理由が一切分からなかった。

(まるで、今の私みたいだ)

 セントミアはいつの間にか、討伐された者の人生に興味が湧いた。そしてセントミアはこの城跡を隅々まで捜索し、討伐された者の人生を出来るだけ知りたいと思った。


 しばらく時が過ぎ、セントミアなりの結果が出た。

(結局、力がある、それだけで殺されるのか)

 力を持つだけで理不尽に恐れられ、狙われ、殺される。人とはこのような理不尽な生物だった。

 セントミアはその結論を出し、改めて人間に、この世界に絶望する。

(・・・そういえば、ここに住み始めてからどのくらい時間が経ったのだろうか)

 いつの間にかセントミアには時間の概念を忘れていた。それくらい読書に集中していたのである。

(なんだか急に眠くなったな。それにお腹も空いた)

 今まで睡眠していなかったからか、時間の経過を自覚すると、急に今までしてこなかった睡眠欲と食欲が湧いてくる。

「我が主、これをどうぞ」

「あ、ああ・・・、」

 セントミアは、いつの間にか用意された食事を見る。

「・・・これ、どうしたんだ?」

 セントミアは、メイキンジャーによって用意された食事を指さし、質問する。

「私共が協力し、主の口に合うよう作らせてもらいました。口に合わないのであればどうぞ心置きなく残してください」

「あ、ああ。悪いな、用意させて」

「いえ、主の役に立てて私共は幸せです」

 その後、セントミアは十分に食事を堪能した後、

「それじゃあ何かあったら起こしてくれ。私はしばらく寝る」

「承知いたしました」

 こうしてセントミアは眠りにつく。


 どれほど寝ていたことだろう。

「ん?」

 セントミアはある異変に気付き、目を覚ます。

「何かあったか?」

「?いえ、何もございませんが?」

「・・・そうか」

 メイキンジャーに確認してみたものの、特に異変はないと報告を受ける。

(本当にそうなのか?)

 メイキンジャーの返事に納得出来ないのか、セントミアは苦い顔をする。

「・・・調べましょうか?」

「頼む。私の方でも心当たりを探ってみる」

「はっ!パラサイダーとデベロッパーにも調べるよう伝えます」

「ああ、よろしく頼む。何かあったら報告頼む」

「もちろんです!」

 そうして、セントミアが食事を始めた中、メイキンジャー達が動き出す。メイキンジャー達が調査している中、セントミアも独自に調べ始める。

 そして、

(・・・もしかして、こいつ、か?)

 セントミアはある者を見つける。

 その者は、自身より遥かに弱いと分かった。だが、どうにも目が離せない。何も持っていないと、他人と判断することが出来なかった。

(・・・なんだ?)

 今まで感じたことのない違和感に、セントミアはどうじる。

(・・・いや、どちらにしろ脅威とは思えないな)

 セントミアはどうするか考えた結果、放置することにした。今の強さ的に、脅威と捉えるほど強くなかったからである。

(それなのにどうしてここまで惹かれている?)

 セントミアは自身の感情に対して疑いながらも、そのまま城跡に戻ることにした。

「・・・」

 城跡に戻った後、セントミアは以前読んだ書物を再度読み直す。

(結局、あいつは何者だったのだろうか?)

 読み直している中、セントミアはさきほど見た者について考えていた。

「私に比べたら弱い。私の足元にも及ばないはず。そのはずなのにどうして・・・?」

 強さとは別の何かに惹かれた?だとしたら一体私はあの者の何に惹かれた?

「メイキンジャー、近くにいるか?」

「ここに」

 メイキンジャーはセントミアに呼ばれたからか、セントミアの近くに現れて跪く。

「ある者について調べてほしい」

「承知しました。それである者、とは?」

「ああ。それはな・・・、」

 セントミアはその者について教える。

「・・・畏まりしました。それではこれから調査させていただきます。主はどうしますか?」

「私か?私は・・・、」

 セントミアは少し考える。

「私はもう一度、この城跡にある書物を漁り直す」

「は」

 そしてセントミアはもう一度、書物を読み直す。

(・・・やっぱり)

 セントミアはある書物の記載に目がいく。その記載の内容は、追われていた者に対し、手を差し伸べていた者がいたというものだ。

(まさか、あいつが・・・?)

 セントミアは僅かな期待を抱く。それは、この状況をなんとかしてくれる者が、さきほど見た者ではないか、という期待。

(いや、それはないな)

 自己完結し、読んでいた書物を元の本棚に戻す。

(私も行くか)

 メイキンジャーに調査をお願いしたものの、自分の目で確かめたくなったセントミアも、さきほど見た者、彩人に関する情報を集めようと動き始める。

次回予告

『7-1-43(第532話) 虹無対戦~無の国編その6~』

 強者の余裕からか、自ら自身の過去を話し出すセントミア。

 そしてセントミアは、自身と手を組まないか、という提案を彩人に持ちかける。

 その提案に彩人は・・・。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

 感想、評価、ブックマーク等、よろしくお願いいたします。

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