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色を司りし者  作者: 彩 豊
第7色 無の国 第一章 虹無対戦
529/546

7-1-39(第528話) 虹無対戦~無の国編その2~

「・・・は?」

 俺は今、こいつらの発言に混乱を隠すことが出来なかった。

(こいつ今、なんて言った?)

 俺の耳が間違っていなければ、セントミアさんを救ってほしい、と聞こえたぞ。今もこの世界を滅ぼそうと動いている人を救ってほしい、だと?

(ふざけている・・・とかではないか)

 こいつらが俺の前でふざけたり冗談を言ったりするわけないよな。そんなことを言い合う仲になったつもりはないからな。

「・・・一体どういうことだ?」

 考えても意味が分からなかったので、俺は正直に聞くことにした。

「・・・正直、この世界にもう期待などしていなかった」

「・・・期待をするくらいなら滅ぼしてしまおう、そんなつもりだったパラが、そうじゃなかった」

「・・・長期間にわたる戦いの中でようやく僅かな可能性を見つけることが出来たのだ」

「・・・なんの話をしている?」

 俺はこいつらの話の意味が分からず困惑する。期待とか可能性とか、本当に何の話だ?

「その希望、可能性というのはお前の事だ、アヤト」

 そう言い、メイキンジャー、パラサイダー、デベロッパーの三人は俺を見る。

「・・・俺が希望、可能性だと?」

 こいつら、俺を嘘で嵌めようとしているのか?

(そんなつもりには見えないな)

 ということはつまり、本心で言っている、ということなのか?

(本心だったとしても、俺を希望、可能性と言っている理由はなんだ?)

 皆目見当がつかないな。もしかして、俺の底知れぬ力に惹かれて・・・いや、絶対にないな。

「ああ。貴様なら、孤独の辛さを知っていて無魔法に適性があり、我が主と同等の強さとなる可能性を秘めているからな」

「・・・」

 えと・・・色々言いたいことはある。

 まず、孤独の辛さを知っている、という発言はもしかして、俺の地球での生活を示しているのか?

(どうやって俺が地球からこの世界に来たことを知った・・・、)

 そうか。セントミアさんから聞いたのか。もしくは、セントミアさんが見て聞いたことを自動的に共有した、ということなのか。

(無魔法に適性がある、というのは分かる。が、セントミアさんと同じくらい強くなる、という可能性はどこから湧いてきたんだろうな)

 俺はセントミアさんと直接戦ったことはない。だが、それより弱いと思っているメイキンジャーに負けたんだぞ?

(・・・いや、勝敗はついていないから、正確に言うと負けてはいないのか)

 それでも、デベロッパーに一発ぶちかました程度だ。もちろんこの後の戦いで負ける気などないのだが、同等の強さとなる可能性なんて望み薄だぞ?

「・・・それで、俺にどうしてもらいたいんだ?」

 俺は目の前の奴らの言葉を飲み込みつつ、どうしてほしいのか質問する。その内容によっては、俺がこれからするべき内容にこいつらの殺害が含まれることになる。出来ればセントミアさんとの戦いに全力を注ぎたいから、こいつらとの戦闘は避けたいところだ。

「・・・我が主を救ってほしい」

 さきほど聞いた言葉とまったく同じだった。

 俺はパラサイダー、デベロッパーに視線を移す。パラサイダーとデベロッパーは首を縦に振る。どうやら三人とも同じ意見らしい。

「詳細な説明をしてくれ。じゃないとさっぱり分からん」

 少なくとも今の情報だけでは何も判断が出来ん。

「・・・我が主は今、何者かの意志が干渉し、主の心が失われそうになっている」

「!?」

 俺はメイキンジャーの発言内容に驚きを隠すことが出来なかった。

(あれほど強い奴らの主であるセントミアさんの意志に干渉するとか、どれだけ強いんだよ)

 その何者かは不明だが、かなりやばい奴ということだけは分かる。

 だが俺は、素直にメイキンジャ達の話を信じることは出来なかった。

「・・・お前ら、今までお前ら自身がどれほどの人達を苦しめ、殺してきたか分かって、俺に言っているのか?」

 何せ目の前の奴らはいずれも俺達を苦しめてきた張本人。 そいつらのお願いを素直に聞くほど、俺はお人よしじゃない。

「それは、お前らが我が主を追い詰めて・・・、」

「そうやって追い詰められたから追い詰める。大切な人を殺されたからこちらも殺す。そんな負の連鎖の先にあるものを知っているのか?」

「「「???」」」

「覚えのない恨み、憎しみ。集団によるいじめだよ」

 地球では本当に辛かった。

 俺が小さかったころ、突然いじめられた。きっかけは何かあって、俺に原因があったかもしれない。だが俺からすれば、突然いじめられ始めたのだ。俺から何かやり返す、という思考はなかったけど、だんだん俺をいじめる人が増えてきた。もちろん、俺がいじめたからとか嫌がらせをしたからではない。俺がいじめられている様子を見て、こいつならいじめてもいい、そんな思考が植え付けていったのだろう。俺からすればこれ以上ないくらい迷惑だった。気づいた時には、学校にいるとき、俺の周りに味方はいなかった。先生も俺の事を無視し、どうすればいいのか分からなくなった。

「だから、ここでお前らを殺すのは簡単・・・ではないが、気持ち的には楽になる」

 目の前の三人を同時に相手し、倒すのは不可能に近い。各国にいる俺を集結させたとしても出来るだろうか。

「でも、それをしたところで何も変わらない。今の状況は何も変わらないし、なんなら悪化するかもしれない」

 ここでこいつらを倒すことが出来たとしよう。その後でセントミアさんと会いそのことを言ったら、セントミアさんからすれば俺は大事な人を殺した憎き相手となってしまう。そうなったらもうセントミアさんは俺の話を聞かず、問答無用で俺を殺しにくるだろう。俺だったらそうする。

(なら、俺がすべきことは・・・、)

 俺は改めてこいつらを見る。

 その目はいずれも真剣だった。

 だから俺は、過去の行いについて考えないようにした。考えず、今どうすればいいのかだけ考えるようにした。

「だからお前らの力を持って、俺に協力しろ。俺がセントミアさんを止められるように」

 俺はこいつらにアシストをお願いすることにした。全面的な信頼を置いたわけではないが、真剣な眼差しと態度に、嘘がないと思いたい。

「だが、私達が直接主に攻撃することは・・・、」

「別にそれは気にしなくていい。俺がセントミアさんを直接叩く」

「・・・いいパラか?今のお前では・・・、」

「そんなの、言われなくても分かっている」

 おそらくパラサイダーは、今の俺では力不足だと、敗北する未来しか見えないと言いたいのだろう。そんなこと、今の俺が一番理解している。

「だから、なんとしてでも止める」

「・・・勝算はあるのかね?」

「勝算?あるさ。とびっきり低いけどな」

 もちろん嘘だ。勝算なんてあるわけない。けど、なんとしてでも止める。その覚悟だけを持って臨むつもりだ。

(例え刺し違えてもな)

「・・・分かった。貴様の勝利を信じよう」

 メイキンジャーの言葉に、パラサイダーとデベロッパーは頷く。そして三人は体を動かし、俺の正面には誰もいなくなる。

「これは餞別パラ」

 パラサイダーは手?足?を差し出してきた。

(餞別ってなんだ?)

 俺はよく分からず、パラサイダーの足を掴む。すると、魔力が回復していくのが分かる。

(なるほど)

 俺に魔力が流れていく。パラサイダーが言う選別とはこのことだったのか。

「では私はこれを」

 そう言い、デベロッパーも手を差し出す。俺はデベロッパーの手を握ると、体力が回復していく。デベロッパーから手を離す。

「この道をまっすぐ進むと古びた城があります。その城の最奥の部屋に、我が主はいます」

「そうか」

 メイキンジャーからはセントミアさんに関する情報をもらった。

「それじゃあ俺は行く」

 俺は歩みを進めようとしたところで、また止めてしまう。どうしても聞きたいことがあったからだ。

「・・・本当に、いいんだな?」

 俺は確認の意味を込めて質問する。俺の質問の意図を理解したのか、

「構いません。これで主が救われるのなら」

「そうパラね。パラ達にとって一番の幸せは、主が幸せになることパラ」

「二人に同じである」

「・・・そうか」

 俺は三人の顔を見ず、そのまま出発する。

(馬鹿野郎が!)

 俺はそう思いながら、城までの道を走り始める。

 実は、パラサイダーとデベロッパーから魔力と体力をそれぞれもらった時、同時にある記憶、感情が俺の中に流れ込んできた。その記憶は、俺が本当に見ていいのか戸惑うレベルのものだった。

(お前ら、これから消えることを分かってやっていたのかよ)

 その記憶の内容は主に2つ。

 1つ目は、今まで過ごしてきた記憶だ。少し見えただけなので詳細は不明だが、あまり言葉を交わさずとも時折笑顔を見せながら過ごしているあたり、かなり信頼関係が築かれているのだと思った。

 2つ目は、自分達がこれから消える、という推測の記憶だった。

(この推測、外れていてほしいんだけどな)

 この推測は、俺がセントミアさんと会い、話をするというこれから少し先の未来の出来事だった。この未来を推測するということは、自分達がこれから消える、ということを承知の上で俺に協力してくれたことになる。

(自分達の命はどうでもいいから主だけでも助けてくれって・・・、)

 本当にセントミアさんへの愛が強いよな。自分の命をもっと大切にしてほしいところだ。だがまぁ、俺としては複雑な心境だけどな。

(俺を苦しめた奴らがいなくなるのだから嬉しいと思う。思うけど・・・、)

 これほど後味悪い経験あまりしたことないな。

「・・・行こう」

 俺は三人の視線を気にしないようにしながら進む。



「・・・行きましたね」

 彩人が去った後、メイキンジャーはポロリと言葉をこぼす。

「そう、パラね」

 パラサイダーはメイキンジャーの言葉を拾う。

「でも、本当にあの者でよかっただろうか?今の強さでは確実に・・・、」

「死ぬでしょうね」

 デベロッパーの言葉をメイキンジャーが繋げる。

「ですが、あの者ならなんとかしてくれるでしょう。あの者なら、主の心に言葉を届けることが出来る、そう思うのです」

「たいして会ってもいないのにパラか?」

「・・・そうですね。何故でしょうかね?」

 パラサイダーの質問に、メイキンジャーは失笑する。

「・・・もう任せたのだ。過ぎたことをいつまでも口にするでない。口にするとしたら、これからのことを言いたまえ」

「これからのこと、ですか?」

「うむ。これからのことだ」

 デベロッパーは数歩進み、空を見る。

「どうか我が主が幸せになりますように。多くの人に囲まれ、笑顔で生活出来ますように」

 そして、祈り始める。

「そうですね」

「我が主が幸せになること。それがパラ達にとって最高の幸せパラね」

 メイキンジャー、パラサイダーもデベロッパーと同じように祈り始める。

 三人の主が今後、幸せになりますように、と。

次回予告

『7-1-40(第529話) 虹無対戦~無の国編その3~』

 3人を後にした彩人は奥に進み、遂にセントミアと相対する。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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