7-1-38(第527話) 虹無対戦~無の国編その1~
「笛の魔道具が示していた場所は・・・まだ先か」
今俺は魔の国の外で、笛の魔道具が示している場所に向かっている。と言っても、今も六つの笛の魔道具を出して見ているわけではない。笛の魔道具が示した場所を地図に書き記し、その場所に向かって進んでいるのである。ちなみに笛の魔道具はアイテムブレスレットに入れている。もし道中この笛の魔道具が必要になった場合、手元になかったら取りに戻る、という手間が発生するからな。
「この先に一体何があるというのだろうか」
口に出してみたものの、何があるかなんて今更分かりきっている。
「ヌル一族・・・、」
あのでたらめな強さをもった一族が待っている。覚悟は決めているものの、どこか怯えている自分がいる。
「・・・今更怯えたところで始まらないな」
現在進行形で進めている足を加速させ、速度を上げていく。
「さて、そろそ・・・!?」
俺は急ブレーキをかける。咄嗟に嫌な予感がした為である。
(なんだ!?何が起きた!!??)
何が起きたかは不明だが周囲の空気が変わったことだけは分かる。
(何か来るのか?)
周囲を警戒するも、何かが来る気配はない。
(・・・何も変わっていないのか。それじゃあ俺の気のせい・・・?)
そう思い、一歩歩いた後、その変化に気づく。
(ん?・・・なんか地面が変わっていないか?)
足に地面を置いた感触がさっきと微妙に異なっていた。警戒していなければ気づかないくらい微細だ。なんなら気のせいと割り切ってもいいくらいだ。
(もしこの変化が違和感なら・・・、)
俺は周囲の地面を踏んで確認してみる。
(・・・どうやらここから別の土地に変わっているようだな)
原理は分からないが、ある境界から土地が変わっていることが分かった。
(誰がどんな意図でこの土地を買えたかは不明だが・・・いや、誰が、は分かるか)
十中八九ヌル一族が仕掛けたのだろう。だが、意図は分からない。一体どんな意図が・・・?
(いや、意図を考えている余裕はないか)
俺は首を左右に振り、今の考えを捨てる。
(今は進もう。進むことだけ考えろ)
今も各国で戦ってくれている俺の為にも、早急にヌル一族を止めて終わらせなければな。そう考えた俺は歩みを進めていく。その間も警戒を怠らない。
(・・・空気が変わったからてっきり襲いかかってくるのかと思っていたのだが、違ったのか)
この場で襲われる可能性を考えていたのだが、それは杞憂に終わったようだ。
(とはいえ、警戒しない理由にはならないな)
ここがどこか分かっていないからな。気を抜くには楽観的過ぎる。
(・・・ヌル一族だけでなく、周囲に魔獣の反応もないな)
本当にどうなっているんだ?まるでこの道を歩けと導かれているような・・・!?
(まさか、あの笛の魔道具から仕組まれていたのか!?)
あの笛の魔道具をわざと、俺の手元にいかせ、ここに来るように仕組まれていたのだとしたら、この先に進むのは危険か!?一旦撤退して作戦を練り直すべきか?
(・・・いや、例え仕組まれていようと関係ない。突き進むだけだ)
撤退して作戦を練り直すにしても、どんな作戦ならヌル一族に通用するの皆目見当がつかん。それに、そんな時間などない。そんな時間を作るくらいなら、前に進んだ方がいい。俺は足を前に進めていく。
(・・・後もう少しだな)
歩みを進ませ、目的地まで後もう少しの場所まで来ていた。
(・・・ところで、さっきから景色が変わらないような気がするのは俺の気のせいか?)
景色がずっと森の中で、木の配置が変わっていない気がする。これ、いつの間にか俺が迷子になっている可能性ないか?なんだか不安になってきたな。
「安心したまえ。貴様は間違いなく進んでいる」
「!!!???」
誰だ!!!???俺、【魔力感知】をいつの間にか解除していたのか!!??【魔力感知】に反応なんてなかったぞ!!??
「お前の魔法をわざわざ受ける馬鹿はいないパラ」
(パラ、だと!!??)
この口癖、聞き覚えがある!!まさか・・・いるのか!!??
「とはいえ、こちらから用事がある故、話しかけないわけにはいかないからな。こうしてわざわざ貴様に話しかけてやったのだ。感謝してほしいものだ」
・・・何故俺は上から目線でものを言われているのだろうか。
(いや、それ以上にどうしてこいつらがここにいる!?)
俺はただでさえ警戒していたのだが、更に警戒レベルを上げる。
「・・・それで、どうしてお前らがここにいる?俺をやる気か?」
俺は神色剣に手をかける。
(ん?)
俺はここである違和感に気づくが、その違和感に構っている余裕がない為、そのまま構える。
「やる気などありませんよ」
「そうパラ」
「やる気があるなら、あなたの命は既に絶たれていましたよ」
俺はデベロッパーの言葉に腹を立てるも、どこか納得していた。
(確かに、いつでも俺を殺すことが出来ていただろうな)
さっきまで俺はこいつらの存在に気づくことが出来なかったからな。というか、どうして【魔力感知】に引っかからなかったのだろうか?
「そんなに殺気をたてないでください」
「そうパラ。今回、パラ達はお前を殺しにきたわけじゃないパラよ」
「!?」
俺はパラサイダーの言葉に驚きを隠せなかった。
(俺を殺しにきたわけじゃない、だと!!??)
俺がセントミアさんを止めに来たと分かったから排除しに来たのだと思っていたのだが、違うのか?
(違うとしたら奴らはどうして俺に話しかけたんだ?いや、そもそも本当にこいつらは俺を殺さないのか?)
出まかせを言っている可能性だってあるからな。俺は警戒し続ける。
「話というのは我が主の件だ」
ま、そうだろうな。こいつらが個人で俺と関わりたいと思う事なんてないだろうからな。
(しかし、こいつらから話があるとは、一体何の用だ?)
もちろんセントミアさんに関する件だということは分かっている。だが、こいつらの強さなら、三人でかかれば今の俺を容易に殺すことが出来るはず。なのにそれをしないということは、俺を殺すことが目的じゃない?そう考えると、こいつらの行動も合点がいく。そう考えていた時、目の前の奴らから信じられないか言葉が出た。
「どうか我が主を・・・救ってほしい」
次回予告
『7-1-39(第528話) 虹無対戦~無の国編その2~』
かつて戦ったメイキンジャー、パラサイダー、デベロッパーと相対するも、その3人から想定外の事を言われてしまう。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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