7-1-37(第526話) 虹無対戦~魔の国編その6~
彩人がその場から消えた後、
「・・・やはりアヤト一人だけは心細いな。もう一人、行かせるべきだろうな」
「・・・そうね。あの子、多分死ぬ気よ」
「!?」
イブは自身の両親、ゾルゲムとストレガの会話の内容に驚きを隠すことが出来ない。
「だからイブ、あなたがあの子を守りなさい」
「!?・・・でも、私がこの場を抜けたら・・・!」
今、この戦況はほぼ拮抗している。この場に集まっている兵士や有志で来てくれた者達もそうだが、【色気】を使うことが出来るイブ、ゾルゲム、ストレガの三人が大きく影響していた。その一人のイブが抜けることで戦況がどうなるか。イブはその戦況を気にして抜けることが出来ず、今もカラー種相手に奮闘しているのである。
「大丈夫。私達はあの魔獣達にやられるほど弱くない」
「私達だけでも十分やれるわ。だからあの子を、将来私達の義理の息子になる子を守ってあげて」
「そうだ。将来、イブの婿になる大切な子なのだから」
「・・・だからといって、私の大切なお父様、お母様を見捨てていい理由にはならない。私は・・・、」
イブが決めあぐねていると、
「なら、私達が参戦すればか行けますか?」
「・・・え?」
イブの言葉に突如、何者かが乱入する。その言葉は、イブが聞く限り魔の国の民でないと瞬時に分かり、何者かと混乱する。乱入した者は、イブの横を走り去り、そのままカラー種の魔獣を倒す。
「この力があれば十分だと思いますが、どうでしょう?」
「・・・えっと・・・誰?」
イブがそう聞くと、乱入した者は自身の顔を明かす。
「!?・・・その顔、まさかクロミル!!??」
「いえ。私達に名はありません。ですが、そのクロミルと同じ牛人族です」
乱入した者の正体は、牛人族だった。牛人族は複数いて、続々と顔を見せていく。
「私達は牛雄の危機を予言し、こうして各国に赴き、参戦しに来ました」
「・・・かっこく・・・?」
イブが疑問に思っていると、
「どうやら他の国でも牛人族が助力しているらしいです」
「・・・そう」
イブはレンカの報告を受け、顔が緩む。
「牛人族だと!?」
「言い伝えでしか聞いたことがなかったのに!?」
「まさかこんな場所で目にかかれるとはな・・・、」
各々の反応を見せる。
「そして、私達だけじゃありません。空にもいます」
「!?・・・空にも牛人族が・・・!!??」
イブは驚いて空を見る。そのイブの様子に対し、牛人族は首を横に振る。
「いえ、空にいるのは牛人族ではありません。空にいるのは・・・、」
牛人族が話している途中、大きな遠吠えが聞こえる。その遠吠えに聞き覚えがあったイブは、その遠吠えの主を推測で声にする。
「・・・まさか、ドラゴン?」
イブの発言を聞いていた周囲は、
「まさか、ドラゴンまでいるのか!?」
「ドラゴンも敵ってこと?だとしたら相当分が悪いんじゃ・・・?」
「聞いている限りだと、俺達の味方っぽいけどどうなのだろう?」
「味方だったら、これ以上ないってくらい心強いよな!」
各々興奮する。
「ええ。どうやらドラゴン達は牛雄に救われた恩を返すべく、私達の話を聞いて協力してくれるとのことです」
牛人族の報告に、
(・・・これほどの戦力がそろったなら・・・、)
「これほど強力な助っ人がいるなら、イブが抜けても問題ないだろう」
「!?」
自身の考えを見透かされたゾルゲムの発言内容にイブは意表をつかれる。
「だからイブ、お前はアヤトを支えてやってくれ。あいつはこれから、死ぬかもしれない戦いをするだろうからな」
ゾルゲムの言葉に、ストレガは無言でうなずく。
「行ってあげてください。どうか、牛雄を死なせないでください」
「私達の力では、この場の魔獣の掃討しか出来ません。ですから、私達を救ってくれたアヤト殿の命を守ってあげてください」
牛人族、ドラゴンも言葉を放つ。
「・・・アヤトのことは任された。だからこの場は任せる。みんな、お願い」
イブの言葉に、全員が無言で頷く。
「・・・イブ殿、どうやら各国にいたアルジンが一か所に集まったようです」
「・・・分かった。ありがとう、レンカ」
レンカの報告を受けたイブは、
「・・・それじゃあ、行ってくる」
みんなに報告をした後、みんなの視界から消えた。
次回予告
『7-1-38(第527話) 虹無対戦~無の国編その1~』
オリジナルの彩人は笛の魔道具の手がかりからセントミア・ヌルの元へ行こうと足を動かす。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
感想、評価、ブックマーク等、よろしくお願いいたします。




