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色を司りし者  作者: 彩 豊
第7色 無の国 第一章 虹無対戦
526/546

7-1-36(第525話) 虹無対戦~魔の国編その5~

 魔の国。

「それでイブ殿、まずはどうしますか?」

「・・・まずは両親に相談。その後、現場に直行」

「なるほど。確かイブ殿のご両親はこの国の王。力を貸してもらえれば百人力ですね」

「・・・ん」

 イブはレンカを連れて魔の国に向かう。

 魔の国に入城したイブとレンカはそのまま自身の両親と会い、事情を説明する。

「「・・・」」

 ゾルゲムとストレガはイブの言葉に終始黙る。重苦しい空気の中、ゾルゲムは無言で椅子から立ち上がり、部屋を出る。

「・・・」

「大丈夫。あなたの父親で、私の愛する旦那様だもの」

 ストレガの言葉を信じたイブは、ゾルゲムを待つ。少し待つと、ゾルゲムが入室し、複数の書類をテーブルの上に置く。イブは置かれた書類を手に取り、記載されている文字を読んでいく。

「・・・これってもしかして・・・?」

「ここ最近の魔獣の動きだ」

 ゾルゲムは書類の一部を指さす。

「森の奥で異常な数の魔獣がいたそうだ。近々、魔獣を掃討する予定だったのだが・・・、」

 ゾルゲムはイブを一瞬見る。

「早急に招集する必要があるようだ」

「!?いい、の?」

 ゾルゲムの言葉にイブは目を見開く。

「なに、強制はしない。人が集まらなくても、私達だけで行くつもりさ」

「もちろん」

 ゾルゲムの言葉にストレガは強く頷く。

「・・・きっと、命の危険が伴う戦いになる。それでも行くつもり?」

 イブは二人の身を心配する。

 が、ゾルゲムとストレガはそのイブの言葉に対し、眉間にしわを作る。

「私達を誰だと思っている?」

「そうね。私達はあなたに心配されるほど弱くないわ。だから、」

 ストレガはイブの頭を優しく撫でる。

「私達にも協力させて?ね?」

 ストレガの優しく、心沁みる言葉に、

「・・・ありが、とう」

 イブの消え入るような言葉に、ゾルゲムは首を横に振る。

「礼を言うのはまだ早い。礼を言う時は、全てが終わってからだ」

 ゾルゲムは自身の剣を手に取り、腰にかける。

「・・・ん!」

 こうしてイブは、ゾルゲムとストレガ2人の協力を得ることが出来た。

「・・・とはいえ、すぐに兵を出せるわけではない。出来るだけ早く行くつもりだが・・・、」

「・・・んん、協力してくれるだけでも嬉しい。それじゃあ、先に行っている」

 イブはゾルゲムとストレガに背中を向け、走り出す。

「・・・さて、私達も」

「ええ。行くわよ」

 ゾルゲムとストレガはすぐ兵達に連絡を取り始める。


(早く・・・もっと早く!)

 イブは【黒色気】を発動させながら全力に近い速度で走り続けている。目的地は当然、彩人のところである。

(!?・・・こんな痛み程度、気にしない!)

 時折木の枝が肌を掠め、切り傷が出来てしまうが気にせず走り続ける。

(・・・!?見つけた!!??)

 ついにイブは彩人を見つける。その様子はとても満身創痍で、いつ死んでもおかしくないくらいの重症だった。

「・・・アヤト!」

 イブは彩人の元へ全速力で近づく。彩人とイブの間にいる魔獣を、イブは躊躇いなく倒していく。そしてイブは、優しく彩人を抱き上げる。すると、彩人の体から絶えず血が流れていく。

「・・・ここまで傷を負っているなんて・・・。もう、大丈夫」

 イブは彩人に応急処置を施しつつ、回復薬を飲ます。

(・・・うっとうしいな)

 イブは彩人に治療をしつつ、周囲の魔獣を警戒する。警戒し続けた結果、早急に魔獣を倒した方がいいと判断する。そうしないと彩人の治療を満足に行うことが出来ない為である。イブは彩人を優しく地面に寝かす。

「・・・私がいるから!もうアヤトに指一本触れさせない!」

 イブは自身の右手に魔力を集中させる。

「・・・私達の前から失せろ。【破滅光線(デストロイレーザー)】」

 イブが放つ【破滅光線(デストロイレーザー)】により、周囲の魔獣が消えていく。まだまだ魔獣は無数にいるが、彩人と話す時間を確保出来たと感じたイブは、彩人に話しかける。

「・・・アヤト、大丈夫?」

 返事はないものの、イブはお構いなしに彩人を優しく抱きしめる。

「・・・もう大丈夫。私がいるから」

「え?」

 ここでイブは、彩人から反応がきたことに喜ぶ。そして、彩人とイブの目が合う。数日ぶりの再会のはずなのに、何十年も会えなかったような喜びが心の内から湧き上がる。その湧き上がる感情が、一滴の液体として体外に放出される。

「・・・よかった。生きていてくれて、本当によかった」

「ど、どうしてここに・・・?」

 俺は驚いていた。本来、イブはここにいないはずだ。それなのにどうしてここにいて、涙を流している?ついさっきまで俺は、最後の晩餐のメニューを考えていたはずなのに。

「・・・心配、だったから」

「心配?」

「アヤトがいなくて、いつ死ぬのか心配で心配で・・・!」

「別に俺の事なんか気にしなくても・・・、」

 そう言った瞬間、俺の頬がイブの両手に挟まれる。

「気にする!だって私にとって、私達にとって大切な人だから!!」

「!?」

 イブのこの顔、今まで見たことがないかもってくらい泣いているな。まさかそこまで俺の事を・・・。

「・・・アヤトは強い。けど、なんでも出来るわけじゃない。だから、出来ないことは私達に任せて」

 そう言い、イブは俺に背中を見せる。

「無茶だ!イブが【色気】を使えるからといって、この数を相手にするのは不可能だ!」

 俺ですら、【黒色気】を使った俺ですらこんなボロボロなんだぞ!?俺より弱いイブが立ち向かえるはずが・・・ん?

「私、達?」

 さっき、私達って言わなかったか?達って一体、誰の事を言っている?そう疑問に思った。

「・・・ん。私一人じゃきっと、アヤトと同じになると思った。だから、」

「私達が呼ばれた、ということだ」

「!!??」

 俺は突如聞こえてきた声に振りかえる。すると、その声の主が俺の元に姿を現した。その姿は、つい最近まで俺が見ていた姿で、とても身近な人物だった。

「お、お前は・・・!?」

「娘が命をかけてここにいるのだ。なら、親の私も命をかけて来るべきだろう?」

「それにしてもすごい魔獣の数ね。これは命をかけるくらい危険ね」

「・・・死ぬ気、じゃないだろうな?」

「まさか。命をかけるくらいの気持ちはあるけど、死ぬ気はまったくないわ」

 その人物こそイブの両親、ゾルゲム=デビルとストレガ=デビルだった。

「なんでここに・・・?」

 俺が呆けていると、二人は俺を見る。

「何故ここにいるかって?」

「そんなの、決まっているわ」

「「大切な人を助ける為」」

「・・・」

 俺は、重ねてしまった。

 もう会うことの出来ない俺の両親と、重ねてしまった。

(俺の父さん母さんが生きていてくれたら、こんな言葉をかけてくれたのだろうか?)

 そう考えただけで、もう俺の涙腺は限界だった。

「・・・大丈夫。私達がいるから、絶対に死なせない」

 イブが優しく頭を撫でてくれる。

「私達も大切な人を失うわけにはいかないからな」

「将来、義理の息子になる人を死なせたくないもの」

 二人は俺を優しい眼で見てくる。

(そうか)

 俺はいつの間にかこの世界でも手にしていたのか。

 地球にいた家族は失ったけど、それに近い大切な存在を。いざという時俺を支えてくれる大切な存在を。

(・・・頼ろう)

 本当は俺独りでかたをつけたいところだが、同時に縋りたい、と思う自分もいる。だから俺は、縋りたいと思う自分にそのまま委ねることにした。

「・・・俺と一緒に、戦ってくれないか?」

 俺のこの一言を待っていましたと言わんばかりの笑顔で、

「「「もちろん!!!」」」

 この一言を最後に、三人は魔獣の群れに向かっていく。

「あ、一つ言い忘れていたな」

 向かう直前、ゾルゲムは足を止めてこちらに向き直す。

「ここに来たのは私と妻の二人だけではないぞ?」

「・・・え?」

 だって今ここにはイブの両親しかいないぞ?他に誰がいると・・・。

 そう考えていたら、俺の後ろから音が聞こえてくる。

(魔獣共による挟み撃ちか!?)

 俺が警戒し始めていると、俺の肩に手が置かれる。

「大丈夫。あれは味方だ」

「味方?」

 よく見てみると、魔獣ではなく武装した魔の国の者達だと認識出来た。

「あれは・・・、」

「そうだ。魔の国の兵士達、それと有志で集まった者達だ」

「嘘、だろ・・・?」

 まさかあんなにいるのか?それもこんな時間に??

「なんで・・・?」

 この三人については、俺を助けに来る理由は分かった。だが、他の人達については本当に分からない。あの人達は一体どうしてこんな危険な場所に来たんだ?

「・・・色々理由はある。家族を守りたい。国を守りたい。友を守りたい。その理由の中にアヤト、お前を助けたいっていう人達が大勢いたよ。何故か分かるか?」

「・・・どうして、だ?」

 俺は分からず魔王に聞く。

「この魔の国に新たな食文化をもたらしてくれて感謝しているからだ。みんな、お前の料理を作り、食べ始めてからイキイキし始めてきた」

「それは言い過ぎじゃ・・・、」

 俺はただ、よく食べていたホットケーキを作って食べさせただけだ。作り方は・・・まぁ、色々な人に教えた気もするが、たいしたことはしていないはず。

「言い過ぎではない。だからこんなに多くの人が集まり、参戦しているのではないか」

「・・・」

 俺は改めて、ここに向かって走っている者達を見る。

「うおおおぉぉぉーーー!!!」

「俺達がやってやる!」

「この国は、アヤトさんは絶対に護る!」

「俺、この戦いが終わったらあいつと結婚する!」

 様々な声が聞こえてきた。・・・一人、死亡フラグを建築した者もいたような気はするが、気のせいにしておこう。

「アヤト、お前にはこれから行かねばならない場所があるのだろう?」

「!!??」

 魔王は全てお見通しだった、ということか。

「・・・いつから分かっていた?」

「なに、これまで様々な人を見てきた結果身に付いた勘、というものだ」

「・・・そうか」

「それでどうなんだ?これから行くつもり、なのか?そんなボロボロの状態で」

「ああ。ここはもう、みんなに任せるから、俺は俺でやるべきことをするさ」

 俺はゆっくり立ち上がる。さっきまでずっと休憩していたからさ、随分楽に立つことが出来た。

「・・・誰かが代わりにやってくれるかもしれないが、それでも行くのか?」

「・・・」

 魔王の言葉に、俺は即座に返答出来なかった。

(確かに、誰かが代わりにあのヌル一族をなんとかしてくれるかもしれない)

 現にこの魔獣の軍勢を、イブ達が俺の代わりにやってくれるというのだ。このままヌル一族も相手にしてくれるかもしれない。

(けど、俺がやらなきゃ)

 あんな強敵を他の人に任せていいはずがない。他の人が相手に出来るほど、ヌル一族は弱くない。

「俺がやらなきゃ駄目だ。あの相手を他の人に任せるのはあまりにも重荷過ぎるからな」

「・・・そうか。なら、私が言えることはこれだけだ」

「?」

 一体何を言うのだろうか?

「ここは俺達に任せて行ってこい。絶対生きて、その顔を見せにこい」

 そう言うと、魔王は俺の顔を見ずに走り出し、魔獣共を倒し始める。

「将来義理の息子になる子が死ぬ未来なんて、私は見たくないわ。だから、生きて帰って来てね」

 魔王の妻もそれだけ言うと、すぐ魔獣共を倒していく。

(頑張って、誰一人死なないでくれ)

 俺はそう願いながら、

「ああ。それじゃあ行ってくる」

 その場を後にした。

次回予告

『7-1-37(第526話) 虹無対戦~魔の国編その6~』

 黒い彩人が魔の国から去った後、イブは魔の国で魔獣の軍勢をなんとかしようと、魔の国の兵士、有志で集まった者達と協力し、立ち向かう。そんななか、更なる援軍がイブ達の元に現れる。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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