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色を司りし者  作者: 彩 豊
第7色 無の国 第一章 虹無対戦
524/546

7-1-34(第523話) 虹無対戦~白の国編その5~

 白の国。

「・・・どうやらここは白の国のようですね」

「ええ。それではクロミル殿、これから私は、戦闘面においてはしばらく使いものになりませんので。申し訳ありませんがよろしくお願いいたします」

「気にしないでください。それに、この魔道具のこの魔道具の製作には大変苦労されたことでしょうし、しばらくお休みください」

「お気遣い、感謝します」

(さてまずは・・・、)

 クロミルは事前に決めていた通りに動き始める。

(ヴァーナ、ジャルベ様達の元へ話をしましょう。それからシーナリ様の元へ向かい、力を借りることが出来るか聞いてみましょう)

 以前あった者達の元へ足を向ける。


「お久しぶり、クロミルお姉ちゃん!」

「会いたかったよ~」

 キメルム達との再会の挨拶もほどほどに、クロミルはジャルベとヴァーナに話を切り出す。

「・・・なるほど」

「親分、これは・・・、」

「分かっているさ」

 ジャルベは立ち、クロミルに手を差し出す。

「俺達も協力する。そんな危険な戦いに大親分独りで戦わせるなんて、俺が許せない」

 ジャルベの発言にヴァーナは頷く。

「私だって、大親分には一生かけても返しきれない恩がある。その恩を少しでも返すことが出来るのなら、いくらでも力を貸すわ」

 ジャルベとヴァーナの言葉に、

「ありがとうございます、ジャルベ様、ヴァーナ」

 感謝の言葉を述べつつ、二人の手を取る。

「これからみなに話をするつもりだが、全員参加すると思うぜ?な?」

「ええ。みなも、大親分に返しきれない恩を感じているはずですから」

「ありがとうございます。本当に、ありがとうございます・・・」

 クロミルは、二人から前向きな返事を聞くことが出来、思わず涙腺が緩んでしまう。

「まだ泣くのは早いぜ」

「親分の言う通りです。泣くのは、大親分を救ってからにしてください」

 ジャルベとヴァーナはクロミルから手を離す。

「それじゃあ俺達は、これから他の奴らに事情を話し、準備が出来次第向かう」

「クロミルはこれから大親分のところへ向かってください」

「いえ、私にはまだやるべきことが・・・、」

「シーナリ達にもこの件を話し、協力を仰ぐつもり、だよね?」

「!?」

 ヴァーナの言葉にクロミルは驚きを隠せない。

「大丈夫。私達がシーナリ達に話を通すわ。というか・・・、」

「!?この気配、まさか・・・!?」

 第三者の手により、部屋の扉が開かれる。

「・・・失礼を承知で、話を外から聞かせてもらいました」

 部屋に入ってきたのは、シーナリだった。

「本当は依頼の報奨金や物品をお届けするために来たのですが・・・、」

 シーナリはクロミルを見る。

「まさかアヤトさんがそのような目に遭っていたとは・・・、」

 シーナリは目を伏せる。

「大丈夫です。私が必ず説得してみせます。もちろん、私も協力するつもりです!」

 シーナリは自身の胸を強めに叩く。

「だからクロミルさんはアヤトさんのところへいち早く駆けつけてあげてください」

 シーナリの言葉を聞いたクロミルは、自身の胸に手を当てる。

「この御恩、必ず返させていただきます」

 クロミルの言葉に、シーナリは首を横に振る。

「恩なんてそんなことおもわなくていいよ。これくらい、アヤトさん達に助けてもらったことに比べればなんてことありませんから」

 それでは失礼しますね。そんなことを言いながら、シーナリは部屋を後にする。

「俺達もすぐに話を通さないとな」

「そうですね、親分」

 ジャルベとヴァーナも立ち上がる。

「それでは私も・・・、」

「必ず、必ず生きて帰ってきてね」

 クロミルの発言を遮るように、ヴァーナはクロミルに進言する。

「もちろんです」

 クロミルはヴァーナに笑顔を向けた後、部屋を出る。

「ご主人様、今向かいます。それまでどうか、どうか死なないでください」

 外に出た後、クロミルは走り始める。自身のご主人様の元へ。


(ご主人様はどこに・・・?)

 クロミルは森の中を走りながら、自身のご主人様を探す。

(!?見つけた!!)

 クロミルが見つけた時には、彩人は既に五体満足な状態だった。

(あの魔獣がご主人様を・・・!)

 クロミルはアイテムブレスレットから魔銀製の剣を取り出す。

「牛術が一つ、【牛閃】!」

 クロミルは、彩人の前にいた魔獣を切り刻む。

「ご主人様、大丈夫・・・ではなさそうですね。早急に治療いたします」

 クロミルは彩人に白魔法をかける。

(・・・まだまだ魔獣がいますね)

 クロミルは周囲を見渡し、自身と彩人がおかれている状況について考える。

「長らくお待たせいたしました。ご主人様、少しお休みください。私が、私達がこの魔獣共をなんとかしてみせます」

 クロミルはまず、周囲にいる魔獣達をどかそうと考え、ある牛術を使おうと思いつく。

「もう少し魔獣を片付けましょう。牛術が一つ、【牛象槌】!」

 【牛象槌】を使ったことで、クロミルの拳を直撃した魔獣は潰れ、周囲の魔獣達は【牛象槌】発動による風圧で吹っ飛ぶ。そして、彩人とクロミルの周囲に魔獣がいなくなる。

「さて、これで少しは、話が出来そうです」


(まさか、本当にクロミル、なのか・・・?)

 私は今、とても驚いている。その理由は、本来この場にいるはずのない人物がいるのだ。その者の名はクロミル。私の従者だ。

「どうしてここに・・・?」

 私の言葉を最後まで聞くことなく、クロミルが話し始める。

「それはこちらの言葉です!どうして私達を頼らなかったのですか!?」

「!?」

 クロミルの鬼気迫る言葉の圧に、私は思わずたじろいてしまう。

「私はこれから一生、ご主人様にお仕えしていくつもりです。それなのに突如いなくなってしまうなんて・・・!!」

 クロミルは私に抱きつく。

「もう、もう私の傍からいなくなるなんて真似、しないでください」

「だが、今回の戦いは本当に危険で・・・、」

「危険だろうがなんだろうが関係ありません!私はご主人様に仕えると、一生をかけて仕えると決めたのです!」

「そんなこと、関係ない。逃げ、逃げるんだ・・・、」

「ご主人様はそこで見ていてください。私の今の力を!」

(!?あのクロミルの目、まさか・・・!?)

 あのクロミルの目、間違いない!!

(【色気】を使っているのか!?それもただの【色気】じゃない!?)

【白色気】と【黒色気】を同時に発動させた、【二色気・白黒】を使っている、だと!?ただでさえ【色気】一つだけでも尋常じゃない負担だというのに、それを二つ同時に、か。もの凄い魔力制御能力だ。

「牛術が一つ、【牛象槌】!」

 クロミルがはなった【牛象槌】により、周囲の魔獣共が潰され、吹き飛ばされる。その力は魔獣共だけでなく、周囲にはえている木も吹き飛んでいた。

「牛術が一つ、【牛閃】!」

 魔銀製の剣を構え、吹き飛んだ魔獣共に向けて剣を振る。何回か振った後、魔獣共は細切れにされていた。

(これが、【二色気・白黒】を使ったクロミルの力、か)

 本当に凄い。これならヌル一族とも対等に・・・、

(いや、駄目だ)

 ヌル一族との戦いは私個人の戦い。クロミル達を巻き込むわけにはいかない。

「ありがとう、クロミル。十分過ぎるくらい助かった。後は・・・、」

「ご主人様独りに任せろ、と?さきほどまで死にかけていたご主人様に、ですか?」

「!?」

 空気が読めない俺でも分かるくらい、クロミルの言葉に棘を感じる。

「この力があれば、ご主人様を守ることが可能です。ですからどうか、隣で戦わせてくれませんか?」

「だが・・・、」

 ヌル一族は本当に手強い。おそらく、私が全快の状態で【六色気】を使っても勝つのは難しいだろう。そんな相手に、私とクロミルの2人で勝つことが出来るのだろうか?

(無理、だろうな)

「!?ご主人様、後ろ!!」

「な!!??」

 しまった!!クロミルが来てくれたことで気が緩んでしまっていた!私は背後の魔獣の殺意に気づいたものの、時は既に遅し。

(今からでも間に合うか?間に合ったとしてもギリギリか!?)

 そんなことを考えながら、私は魔銀製の剣で魔獣の攻撃を受けようと構え始める。

(・・・駄目だ。間に合わない)

 すまない、クロミル。クロミルに助けられたにも関わらず、私は死ぬことになってしまった。恨まれるかもしれないが、出来れば恨まないでほしい。

(じゃあな)

 私は自身の死を覚悟した。

(・・・あれ?)

 だが、いつまで経っても私に死が訪れない。その理由を知る為に目を開けると、

「大親分、お待たせしました」

「俺達が来たからには、もう大親分には傷一つつけさせないぞ」

「お、お前らは・・・!?」

 私は目を見開いて驚く。

 何せ、目の前にはキメルムであるヴァーナとジャルベがいるのだから。

(一体誰が呼んだ・・・そうか、クロミルか)

 クロミルが助けを呼んでくれたおかげで、私は助かったということか。私は独りで戦うと決めながら、周囲の人達に助けられていたわけか。

「ふざけんじゃないわよ!」

 ジャルベとヴァーナの後ろから大きな声が聞こえたと思ったら、突然何かに掴まれた。

「なに独りで、死ぬ気で戦っているのよ!?」

「お前は、ピクナミ!?」

 白の国にいた時、モミジとよく一緒にいたキメルムだったな。

「いい!!??いつか、全員で大親分に恩を返そうと思っているの!それなのに死んじゃったら私達、大親分に恩を返せないじゃない!!」

 ピクナミの声が周囲に響く。

「だから、何があろうと生きなさい!死んでも生き返って、私達に恩を返させなさい!絶対に、死ぬんじゃ、ないわよ・・・!」

 ピクナミは掴んでいた手をはなし、目を数回こする。

「さぁみんな、ここを乗り越えるわよ!」

「「「おお!!!」」」

 ジャルベとヴァーナの後ろから更にキメルム達が前に出てくる。

「私の青魔法をくらいなさい!」

 スライムのようなキメルムは、水を刃の形にして飛ばす、魔獣共を切断していく。

「俺のこの拳でどんな魔獣も粉砕してやるぜ!」

 ゴリラのような太い腕を携えたキメルムは、意気揚々と腕をふるい、魔獣共を吹き飛ばしていく。

「どうしてここに・・・!?」

 言われるまでもなく、ここは危険な場所だ。子供が来ていい場所じゃない。

「こんな危険な場所に子供が来ちゃいけない。ここは大人である私に・・・、」

「この事態に大人も子供も関係ない!子供だろうと大人だろうと、大切な人を守りたい気持ちは変わら、ない!」

「お前ら・・・、」

 この場にいてくれて、本当に頼もしいと心から思う。

「あいつらだってわざわざ死ぬような真似はしないし、ゴブリンやオーク程度の魔獣にやられるほど弱くはないし、いざという時は、俺達が守るから大丈夫だ」

「ジャルベ、お前独りでキメルム全員を守りきるなんて出来ないだろう?」

 私のこの言葉に、ジャルベは首を横に振る。

「俺だけじゃない」

「え?」

 直後、カラー種がキメルム達に向けて行動を始める。

(!?あいつら・・・!)

 私は回復した体力を使い、【白色気】を使おうとしたが、ジャルベとヴァーナに止められてしまう。

「だが・・・!?」

「大丈夫だ。ここに来たのは俺達だけじゃないからな」

「え?」

 お前達だけ、じゃないのか?

(!?いや、まさかそんな・・・!?)

 私は一瞬、ある人物が脳内に浮かび上がる。だがその可能性はすぐに潰す。その可能性は自分にとって都合のよい夢だと自覚したからだ。

「待たせたね」

「!?」

 その者は、カラー種の攻撃を自身の盾で防いでみせた。

「いや、こっちこそ俺達の大切な家族を守ってくれて助かる」

「これくらいならいつでも助けるさ」

 キメルム達の後ろから、金属製の鎧を纏い武装している男性が現れる。

「怪我しても大丈夫!私達が白魔法で回復します」

 その男性、グードの後ろから続々と武装した男性とシスター達が現れる。

「グード、シーナリ・・・、」

 まさかジャルベ達だけでなくシーナリ達も来ているなんて・・・。

「この国の未来を担う子供達が生死をかけて戦っているのに、大人である我々が見て見ぬふりなど出来ぬはずがないだろう?」

「ジャルベさん達は思いっきりやっちゃってください!怪我しそうになったら守りますし、怪我しても私達が回復します」

「お前ら!思う存分やってこい!」

「「「うん!!!」」」

(このメンツと連携なら、カラー種もいけるかも)

 任せてもいいのなら、今の私は何をすればいい?・・・ヌル一族を止めよう。あの人を止めるには、私じゃないとだめだ。

「ご主人様、これほどの人物が集まっているのですから・・・、」

「・・・ああ、そうだな。みんな」

 私のみんな、という言葉に反応し、多くの者が私を見る。

「私は元を叩く。だから、ここはみんなに任せたい。お願いしてもいいか?」

 私のこの言葉に、

「もちろんだ!」

「当然です!」

「安心しなさい。私がこの子達を守ってみせる」

「回復なら任せて!」

 自信に満ちた返事がきた。

(みんな、死ぬなよ)

 私は声に出さない思いを胸に秘め、この場を後にする。

次回予告

『7-1-35(第524話) 虹無対戦~白の国編その6~』

 白い彩人が白の国から去った後、クロミルは白の国で魔獣の軍勢をなんとかしようと、ジャルベ等のキメルム、シーナリ達と協力し、立ち向かう。そんななか、更なる援軍がジャルベ達の元に現れる。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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