7-1-31(第520話) 虹無対戦~緑の国編その6~
「・・・さて、」
リーフは、彩人がいなくなったことを確認し、再度周りを見る。
(アヤトがかなりの魔獣を倒したはずなのにこの数・・・アヤトはどれほどの魔獣を一度に相手していたのでしょう?)
周囲を見渡す限り、魔獣と魔獣の死体が視界を埋め尽くしている。
「それではみなさん、行きます・・・!?」
リーフが魔獣達と対面しようと剣を握り直した時、誰かが服をつかみ、後方に下げられる。
「誰です!?」
リーフを後方に下げさせたのは、エーガンだった。
「あなた、いつまでここで戦っているつもり?」
「え?」
エーガンの言葉にリーフは驚きを隠せない。
「そうです!早くアヤト様のところへ行ってあげてください!」
「そうよそうよ!こっちはもう大丈夫なんだか、ら!!」
タンカやウッドピクシーも、エーガンの意見に乗る。
「どうして?私がいないと、【色気】を使える私がいないとこの戦況を維持することが出来ないんじゃ・・・?」
現在、カーナやエーガン達を含んだ緑の国在住者達は魔獣の軍勢と戦っていえ。優勢となっている。
が、リーフが今の戦況に多大な影響を与えていることも事実。つまりリーフが抜けると、今の優勢な状況が一変し、劣勢になってしまうのではないか。
そのことをリーフは危惧しているのである。
「さきほどのアヤト様の目・・・おそらくですが、自分の命のことなんて微塵も考えていない様子でした」
「自分以外が助かればどうでもいい、そんな馬鹿げた考えをしているんじゃないかしら?」
「あんなアヤト様を独りにしてはいけません!行ってください!」
「でも・・・、」
リーフが悩んでいると、
「牛術が一つ、【牛閃】!」
突如、周囲の魔獣達が何者かによって切り裂かれる。
「なら、私達がいれば問題ありませんか?」
「!?あなた達は!!??」
その者達の顔を見たリーフ達は驚く。
なにせその顔は、とある者、クロミルの顔とそっくりだったのだから。
「私達の同胞が今回の戦いについて予知し、牛雄の為にこうしてはせ参じました」
「牛雄・・・もしかして、アヤト様のこと、ですか?」
「肯定です。我が牛雄の悲しむ顔なんて見たくありませんので」
外套を脱ぎ、戦闘態勢に入る。顔を見せた牛人族の中には、緑が混ざったカラー種もいる。
「魔法の準備・・・放て!」
牛人族から放たれた木製の無数の針は、様々な魔獣の体を貫通していく。
「【午閃】!」
牛人族は、自身が持っていた剣によって魔獣を切り刻んでいく。
「私達なら、カラー種でも対等以上に相手可能です。これでもまだ不安でしたら・・・、」
牛人族は上を指さす。
上空には、一匹のドラゴンが地上に降り立った。
「私達も共に戦います。行きなさい」
空にドラゴン達の雄叫びが轟く。
「どうしてドラゴン達まで・・・?」
「アヤト様が以前、黒竜帝を助けてくれたので、そのお礼に駆けつけました。なんでも、この戦いを乗り越えないとアヤト様の命が危ないと」
「!?」
ドラゴンの言葉に、リーフは自身の拳を固く握りしめる。
「ここは私達に任せて、アヤト様の元へ行ってください」
「どうか、アヤト様を死なせないでください。きちんと生きて、私達の国へ遊びに来てください」
「そうよ!このまま会えずじまい、なんてことは絶対、嫌なんだからね!」
「・・・リーフ殿、6か国にいたそれぞれのアルジンが1か所に集結したようです。なのでいつでも転移可能です」
エーガンの言葉の後、レンカがリーフに報告する。この報告の言葉こそ、リーフが待っていた言葉だった。
(これほどの強者がいるなら、この国は大丈夫そうね)
リーフは優しい笑みを浮かべ、
「ありがとう、レンカちゃん。ありがとう、みなさん」
リーフは剣を鞘にしまう。
「それじゃあ私、アヤトのところへ行ってくるわ。ここは任せるわ」
リーフの言葉に、
「もちろんです!」
「了解いたしました」
「守ろう、この場所を」
エルフ、牛人族、ドラゴン達が答える。
その答えを聞いて安心したリーフは、アヤトの元へ向かうため、この場を後にする。
次回予告
『7-1-32(第521話) 虹無対戦~黄の国編その5~』
彩人の危機に駆けつけたモミジ。モミジは連れてきた黄の国の者達と協力し、魔獣の軍勢に立ち向かう。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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