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色を司りし者  作者: 彩 豊
第三章 桃色脳であるエン公爵との決闘
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1-3-2(第52話) ブラッド公爵との決闘

 俺とルリはクリム王女に連れられ、城に向かっていた。


「えっと、それで用とは?」

「はい。前々から、エン公爵との婚約を申し込まれておりまして…」

「こ、婚約!?」

「?」


 ルリは分かってないようだな。

 俺はぼっちだと自覚している上に、未成年だ。だから、地球でも「婚約」というものに憧れがある。もし、婚約が人生の墓場でも一度は言ってみたい。

 俺、婚約しました、と。

 だからそんな話をこんな間近に聞けるとは思わなかったな。

 それにしても、戦場で俺はクリム王女に好意を抱いていることを自覚して以来、なんとなく避けていた。

 だけど、こうして見ると改めて綺麗だと思う。

 紅に輝く髪が光り輝く太陽によって、その輝きがさらに増し、歩き方というか、作法が綺麗というか、動作に艶めかしさを感じてしまう。


「お兄ちゃん?」

「ふぁっ!?」


 ルリからの返事に、思わず変な声で返してしまった。

 もしかして、クリム王女を見過ぎていたのか?


「?何しているのですか?もうすぐ着きますよ?」

「あ、ああ…」


 ようやく、お城が見えてきたところで、見慣れた少女がきょろきょろしていた。その少女はこちらを見ると、体全体がいきなり棒になったかのように硬直していた。

 そして、


「アヤト!」

「ぐほっ!?」


 俺にタックルしてきた。

 そう、魔の国の王女、カナ=デビルことイブだ。


「アヤト!アヤト!アヤトぉ」

 それは神を妄信している信者のようなすがりっぷりだ。

 そういえば、イブは何故ここにいるのだろうか?同盟を結んだわけだし、大使ってことなのか。


「…アヤト。ここ数日何していたの?」

「何って、依頼とか、魔道具作成とか、色々だよ」

「…寂しかった」

「え?」

「…アヤトがいなくて、寂しかった」

「それはまぁ、悪い」


 ちなみに何故俺が悪いのか、俺自身もわかっていない。こういう時は言い訳せずに謝っておくのが無難だ。ほんと、俺が何したっていうんだ…。


「…なぐさめて」

「は?」

「…私を、なぐさめて」


 なぐさめる…。それで具体的に何をしろと言うのか?

 そういった後、イブは目をつぶり、今か今かと何かを待っていた。

 とりあえず俺は、頭を優しくなでなでしておいた。


「…むっ。もっと性的な…」


 なんか過激なことを要求されそうだったので、もちろん無視した。

 およそ一週間ぶりにイブと再会したのはいいのだが、まさかクリム王女が困っている原因はイブなのか?

 いや、それはあり得ないな。イブの真名はカナ=デビルであり、エンという家名ではないはず。そもそもイブとクリム王女が結婚って。女同士でどうやって子供を作る気なのだろう?

 …これ以上考えるといけない気がする。女の子同士の恋愛も悪くない…。


「アヤトさん?」

「ひゃい!?」


 また変な方向に考えてしまった。今後気を付けよう。

「それで、エン公爵?て誰?」


 俺達三人と再会したイブの計四人で城の中に入り、見慣れた玉座まで来ると、そこには知らない男がいた。


「あの人です」


 そう言って、クリム王女はスレッド国王と対峙するような形で立っている人を指さす。


「ですから、最強の赤魔法を使える私、ブラッド=エン公爵こそ、クリム=ヴァーミリオン王女と結婚すべきなのです!」


 そうか、こいつがさっきから言っているブラッド=エン公爵とやらか。

 俺は静かに敵対心を抱きながら、その男を観察した。


「ならん!エン公爵がいくら最強の赤魔法を扱えたとしても、我が娘と結婚なんて許すわけにはいかんのだ!」

「何故です!?我がエン家の血とヴァーミリオン家の血でこの国も安泰になるのですぞ!?」

「国の安泰か…。そういえばお主、我が戦争のために貴公ら貴族を招集したのに、何故我の命を拒否したのだ?」

「そんな虚偽の報告をするほど、あの時の国王はご乱心だったのです。現に今、こうして我が国の民は平和に暮らしているではありませんか?」


 その言葉に、俺だけでなく、ここにいたクリム王女、イブ、そして、スレッド国王まで呆れていた。

 そりゃそうだ。あんな死ぬほど痛かったり、自分の力の無さを痛感したり、イブ達が危険な目に遭っていたのに、こいつらはのうのうと過ごしていたんだ。別にここに住んでいる人達に戦争をするから力を貸せ、というわけではない。だが、この国の貴族というからには、この国の一大事に参戦し、助けるべきだと俺は思う。

 そういえば、あれだけの戦いをしておいて、ここに住む人達のほとんどが戦争が起きていたことにすら気づいていなかったな。だったら、戦争が起きていないっていう解釈をしても仕方ないと思うけど…。

 ちなみにルリは笑いを堪えている。理由はあの公爵の頭だ。


「…ぶふ」


 イブまで笑いを堪えきれず、口に出てしまう。

 俺はこいつの頭をおもいっきし馬鹿にしたいのだが、さすがにこの場で言うのはいけないだろう。なので、心の中でおもいっきし馬鹿にしている。


「はぁ…。それにお主以上の赤魔法使いがおるし、何より、クリム自体、お主との結婚を望んでいないのだよ」

「そんなバカな!?私以上に強力な赤魔法を使える者など、いるはずない!」


 こいつ、自意識過剰すぎやしませんか?こいつが何者かは知らんが、上には上がいるものだぞ。

 現に俺は、あの黒い一つ目巨人(サイクロプス)に力で負けていたし。魔法使わなければ、ここにいる人達全員死んでいると思し。そう考えると、俺もまだまだだな。


「そこにいるアヤト殿がそうだ」

「なにぃ!?このガキが!?」

「そうだ」

「ちぃ!」


 何故俺を鷲のような鋭い目で睨み付けているのだろうか。

 怖いなー。すごく怖い。


「あり得ません!こんなガキが私より上など、納得いきません!」

「なら、決闘でもすればいいだろう?その許可はぐらいはだそう」

「決闘か…よし。おい、そこのガキぃ!」

「…はい?」

「十日後、我と貴様で決闘だ!拒否や逃亡は許さん!殺してやるから覚悟しておけ!!」


 そう言うないなや、高笑いしながら、俺達の視界から消えた。

 ちなみに俺は入城してから、「はい」と言うまで、俺の意思はもちろん、言葉すら発していない。

 あ。そういえば、エン公爵は誰かって質問していたよ。間違えちった。

 そんなことはどうでもいい。まずは俺のおかれた状況について説明してもらわないとな。


「んで、もちろん説明ありますよね、国王様?」

「ひぃ!?ひゃ、ひゃい!」

「お父様…」


 俺が仕返しとばかりに怒気を込めて言ったら怯えてしまったよ。でも仕方ないよね?

 こうして俺達は、スレッド国王に話を聞くことにした。

ここでようやくエン公爵の登場です。

名前だけなら、すでに登場しています。

(1-36(第40話) 赤の国と青の国の戦争 ~南編~)を参照してください。

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