7-1-27(第516話) 虹無対戦~赤の国編その6~
(どうやらアヤトは行ったみたいですね)
本当なら私も・・・いえ、そのような我が儘を言っている場合ではありませんね。
(まずは目の前のカラー種をなんとかしないとなりませんね)
今はお父様方がなんとか相手していますが、じきに戦況は傾くでしょう。
(【赤色気】を使える私がカラー種を相手しないと、全員やられちゃう!)
私は【赤色気】を発動し、盾に攻撃しているゴブリンのカラー種に向けて移動し、【炎拳】を繰り出す。ゴブリンのカラー種は私の【炎拳】をくらい、盾を持っている冒険者から離れる。これにより、盾を持っている冒険者の安全がひとまず保障される。
「悪い」
「これくらいどうってことありません。それより次、来ます!」
「!?ああ!!??」
まだまだカラー種が後ろに控えていますね。
(本当に厄介!)
私は着実にゴブリンのカラー種達を絶命させていくが、本当に数が多い。それに、一匹一匹強いから、一切気が抜けない。
「すまない。私達が不甲斐ないばかりに、クリムに負担が集中してしまって・・・、俺も【赤色装】で戦っているのだが・・・、」
「お父様、大丈夫。カラー種は私に任せて、お父様達はカラー種以外の魔獣をおねが、い!」
正直、カラー種の攻撃を一部盾役の人達が受けてくれていてとても嬉しい。カラー種の攻撃をまともに受けたらひとたまりもありませんからね。
ですが、
「!!??ち!ちまちまと遠距離から卑怯な・・・!!!」
剣や斧みたいな近距離武器を使ってくるのはいい。けど、弓や魔法みたいな遠距離攻撃を主としてくるカラー種の攻撃が本当に厄介。
(!?やば・・・!?)
私がカラー種の剣や斧による近接攻撃を躱していたら、場所を誘導されていたらしいです。私が躱した瞬間、矢や魔法が飛んできました。
(【炎拳】で全て殴り落とせるかしら?例え出来なくても何個かは・・・!?)
そう考えていたら、突如全ての矢と魔法が地面に落ちました。
「お父様!?」
お父様なら出来そうですが、確か今も前線で魔獣と戦闘していて、私に助力出来ないはずです。カラー種の魔獣から目を離すことが出来ないので目視出来ませんが。
「私じゃないぞ?」
「え?」
それじゃあ誰が・・・?もしかしてレンカちゃん?
そう考えていたら、
「牛術が一つ、【午閃】!」
カラー種のオークが切り刻まれていました。この斬撃、私やお父様ではありませんね。カラー種を切り刻むほどの実力者がこの国にいましたっけ?
「お待たせいたしました、クリム様」
「「「!!!???」」」
この声にあの魔法、まさか・・・!?
私はその者の姿を見て驚きました。
何せその姿は、
「く、クロミルちゃん!?」
「いえ。私に名はありません」
クロミルちゃんとそっくりだったのですから。
(・・・いや、よく見たら違うかも)
胸の大きさや髪型とか・・・なにより、色が違う!
「私の同胞がこの事態を予言し、各国に牛人族達が向かっています。今頃、各戦場に到着し、力をふるっていることでしょう」
まさか、牛人族のカラー種が私達に協力してくれるなんて・・・!
「ですので、カラー種は私達にお任せください。他の魔獣達はこの国の住人達にお任せするおつもりです」
・・・あれ?
「私達ってどういう・・・?」
すると、魔獣の群れの後方が爆発する。一体何が・・・!?
「どうやら来てくれたみたいです」
この牛人はこの事態を事前に把握していたみたいです。
「一体誰が・・・!?」
私が牛人族に聞く前に、爆発の原因が分かりました。
「この気配・・・もしかして・・・?」
その原因とは、空を飛んでいる生物でした。
「ドラゴン!?」
「まだいますよ」
「まだ?」
このドラゴンとも牛人族とも異なる気配、どこかで・・・?
「あ!?」
「ぴよ!」
分かりました!この気配と鳴き声、あの時のフェニックスです。
「あなたも戦ってくれるの?」
「ぴよ♪」
どうやら今回の戦いにフェニックスも参戦してくれるみたいです。
「我が牛雄の、世界の危機に駆けつけてくれたのです。これだけあれば、カラー種にも対抗出来ると思いますが、どうでしょう?」
「・・・そうですね」
私の【気配察知】によると、フェニックスはいますし、ドラゴン、牛人族に至っては複数匹いるようですし、この戦力なら大量のカラー種とも対等に・・・いえ、圧倒出来そうです。
「この国の王女として、私個人としてもお願いします。力をお貸しください」
私はカラー種の牛人族と、空で翼を羽ばたかせているドラゴンに向けて頭を下げます。
「・・・私達牛人族は、牛雄の命を失うわけにはいきません。そしてなにより、我々の命を救ってくれた返しきれない恩があります」
ドラゴンの一匹が私の近くまで降りてきます。
「ドラゴンの中で最も強い黒竜帝の暴走をとめてくれたのだ。この牛人族からこの世界の、アヤト殿の危機と聞き、恩を返しにきた」
「・・・本当に、ありがとうございます」
私は更に深く頭を下げます。
「それよりクリム様、早く牛雄様の元へ行ってくださいませ」
「?どういうことですか?私はこのままカラー種を相手するつもりなのですが?」
「予言した同胞曰く、クリム様は牛雄の近くで戦っていたそうです」
「私がアヤトの近くで?」
「はい。相手までは分かりませんでしたが、もし相手が牛雄一人で敵わないのだとしたらまずいかと」
「!?」
確かヌル一族はアヤトですら勝てないほど強い相手でしたね。
「・・・なら、お任せします。どうかこの国をお守りください」
私はまた、牛人族とドラゴンに頭を下げます。
「はい、任されました。ですのでクリム様は牛雄を、この世界をお願いします」
「うむ、任された」
「それでレンカちゃん、今から転移してもいい?」
私がレンカちゃんに質問して数秒後、
「・・・たった今、6か国にいたそれぞれのアルジンが1か所に集結したようです。なのでいつでも転移可能です」
「ありがとう、レンカちゃん」
よかった。これでアヤトの元に転移出来るわ。
「それじゃあ私は行くわ」
「待ちなさい、クリム」
「?」
私に待ったをかけたのはお父様、スレッド=ヴァーミリオンでした。
「一瞬だけいいかね?」
「え、ええ」
そう言うと、お父様は私の手を握ってきました。その時間は十秒にも満たなかったです。
ですが、お父様から何か受け取ったことは分かります。これは・・・魔力?
(ですが、魔力というよりこれは・・・意思?)
「生きて帰ってきてくれ。それと、アヤトを頼む」
私の顔をまっすぐ見て言ってきました。
「もちろん。私の未来の夫ですもの」
私はお父様の手を離します。
「これから結婚の挨拶をしてもらい、模擬戦を心おきなくしたいですからね。それでは、行ってきます」
私は宝珠を使い、アヤトの元へ転移します。
(待っていてください、アヤト!)
私も一緒に戦います!
次回予告
『7-1-28(第517話) 虹無対戦~青の国編その5~』
彩人の危機に駆けつけたルリ。ルリは連れてきた青の国の者達と協力し、魔獣の軍勢に立ち向かう。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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