7-1-25(第514話) 虹無対戦~彩人の仲間達編~
時は少し遡る。
「それで、どうやって別の国に行かせてくれるの?」
リーフはレンカに質問する。
「それは・・・これです」
レンカはリーフの質問に対し、ある魔道具を出す。その魔道具は、
「それって・・・?」
「黄の国で拾った宝珠、だよね?」
「はい。この宝珠には、【転移】が付与されています。この宝珠を使い、みなさんにはそれぞれの国に転移してもらう予定です」
レンカはリーフを含め、クリム、イブ、ルリ、クロミル、モミジに説明する。
「・・・その宝珠、確か青、緑はあったと思う」
「ということは、今レンカちゃんが見せている黄の宝珠を含め、3か国に行けるということ?」
「・・・この魔の国を含めると4か国になる。けど・・・、」
「赤の国、白の国はどうやって行くつもりなのですか?さきほどの宝珠はもうないと思うけど?」
「リーフ殿の言う通りです。ですからこれから私が、ここの宝珠の代わりとなる魔道具を作るつもりです」
「・・・作れるの?」
レンカの宣言に、イブは心配して質問する。
「問題ありません。私が責任を持って、みなさんを各国に送り届けます。ですからみなさんはその後のことに集中してください」
「その後のこと・・・、」
「お兄ちゃんを助ける、だよね?ね??」
「その通りです」
ルリの質問にレンカは優しく答える。
「アルジンは間違いなく魔獣と戦っているでしょう。なので、戦闘は避けられないとお考え下さい。最悪、ヌル一族と戦っている可能性もありますので、十分過ぎるくらいの準備をしてください」
「「「はい」」」
レンカの言葉をみんな受け止める。
「それでは私はこれから魔道具を製作しますので、牛宝珠をなん何個か使わせてもらいますが、構いませんか?」
「もちろんです。いくらでもお使いください」
「ありがとうございます、クロミル殿。それでは」
レンカは独り、別室に籠り始める。
「・・・さて、これで助けに行く手段は確保出来ました。次は・・・、」
「・・・誰がどの国に行くか、決める?」
「はい」
リーフの言いたいことをイブが先取りする。
「それでは、誰がどの国に行くか話し合いましょうか?」
こうして、誰がどの国に行くか、その話し合いが始まる。
話し合いの結果、
「それでは結果を確認するわ。まず赤の国はクリム」
「任されました。全力で行きます!」
クリムはガッツポーズをし、頑張りますアピールをする。
「次に青の国はルリちゃん」
「青の国は任せて!お兄ちゃんは、ルリが守る!」
ルリは拳を固く握る。
「黄の国はモミジちゃん」
「絶対にアヤトさんを見つけて助けてみせます!」
モミジはリーフの言葉に強く頷く。
「白の国はクロミルちゃん」
「は!この命に代えても、ご主人様を見つけ、お守りしてくみせます」
クロミルはリーフに対して頭を下げる。
「魔の国はイブ」
「・・・ん!」
イブはいつも以上に大きな声で返事をする。
「そして私は緑の国です。みなさん、それぞれ行く国は分かりましたか?」
リーフの質問に、リーフ以外の全員は首を縦に振る。
「それではこれから私とイブで回復薬を調達し、みなさんに配りますので、それぞれ大切に保管し、アヤトに飲ませてください。これまでの経験から推測に、大怪我している可能性大ですからね。準備が出来次第、それぞれの国に向かいますので、各自、準備をしてください」
「「「はい」」」
「それではイブ、回復薬が販売している店に案内してください。そこで回復薬をありったけ購入しますので」
「・・・ん。それじゃあ私に付いてくる」
こうしてイブとリーフは部屋を出ていく。
「それじゃあ私は、いつでも全力を出せるよう、周辺を走ってきます!それじゃあ!」
クリムは足早に部屋を出る。
「それじゃあルリは・・・戦っている間にお腹が空かないよう、いっぱいご飯を食べる!
ルリは自前のアイテムブレスレットから大量のホットケーキを食べ始める。
「それじゃあ私は・・・レンカさんの様子を見てきます!」
モミジは部屋を出ていく。
「モミジ様、私もお供致します」
クロミルはモミジの後を追う。
時間は過ぎ、日を跨いだ次の日。
「・・・や、やっと出来ました・・・」
「お、お疲れ様です、レンカさん・・・」
「モミジ様も十分頑張られていたかと思います」
レンカ、モミジ、クロミルの三人が、宝珠を手にして部屋から出てくる。
「三人ともお疲れ様です。回復薬、飲みます?」
リーフはレンカ、モミジ、クロミルの3人に回復薬を手渡そうとする。
「いえ、私は魔力さえもらえればそれで充分ですので不要です」
「私もいりません。その分はアヤトさんのためにとっておいてください」
「私も不要です。この程度の疲労、なんともありません」
「分かったわ」
三人の言葉を聞いたリーフは、手元にあった回復薬をしまう。
「それでレンカちゃん、結果は?」
リーフの質問に、レンカ以外の視線がレンカに集中する。
「無事に完成しました。完成したのがこの宝珠です」
レンカは二つの宝珠を置く。
一つ目は赤い宝珠で、もう一つは白い宝珠である。
「この二つの宝珠を使えば、赤い宝珠は赤の国、白い宝珠は白の国に転移出来ます」
「ありがとう、レンカちゃん!お疲れ様!本当に凄い、凄いわ!」
リーフはレンカに抱き着き、労う。
「ちょ、ちょっとリーフ殿、きついです・・・」
「あ、ごめんなさい。つい興奮してしまって・・・」
「とにかくこれがあれば、アヤトを助けることが出来る、ということね!」
「・・・ん。だけど、他に持っているその宝珠は何?」
イブは、モミジやクロミルが持っている宝珠を指さす。その宝珠は、赤、緑、黄と複数の色が折り重なっている。
「これも転移を【付与】した宝珠です。ただ、この宝珠の転移先は、モミジンです」
「「「モミジン?」」」
クリム、リーフ、イブ、ルリはモミジンが分からず、頭の中に疑問符を浮かべる。
「それはですね・・・、」
レンカは全員に、モミジンという魔道具について簡単に説明する。
「・・・要するに、アルジンの命を繋げる魔道具なのですが、効果はもう一つあります」
「もう一つ?」
「・・・その効果って?」
「はい。その効果とは、ある魔力を発することです」
「・・・それだけ?」
クリムは、レンカの言葉が分からず質問する。
「ええ。ただ魔力を発する、それだけです。ですが、その発する魔力が、この宝珠の鍵となります」
「?どういうことですか?」
「モミジンの発する魔力が、この宝珠の転移先に設定しているのです。そしてこのモミジンを持っているのは、私を除いてアルジンのみ!」
「・・・つまり、この宝珠を使えば、ご主人様のところへ転移出来る、そういうことですね?」
「その通りです、クロミル殿!」
レンカはクロミルを指さす。
「・・・あの~、一つ、聞いてもいいですか?」
「モミジ殿、なんでしょう?」
「最初からそのモミジンへ転移出来るその宝珠を使えば、この黄の国に行ける宝珠は不要になりません?」
「・・・確かにそうかも。どうして?」
モミジの質問にイブは納得し、レンカに質問する。
「・・・モミジンへ転移出来るこの宝珠には一つ、欠点があります」
「「「欠点?」」」
「はい。それは、転移先のモミジンを設定出来ないことです」
「・・・つまり、この三色の宝珠を使うと、確実にアヤトの近くに転移出来るが、どの国に転移するかは選べない、ということ?」
「はい。例えば、このまま全員がこの三色の宝珠を使って転移すると、魔の国にいるアルジンのところへ全員転移してしまう、なんて可能性があります」
「「「!!!???」」」
レンカの言葉に驚きを隠せない。
「それじゃあ、お兄ちゃんを助けられないの?」
ルリの言葉に対し、レンカは首を横に振る。
「いいえ。先にこの宝珠、ルリ殿なら青い宝珠を先に使い、青の国に転移出来れば可能です」
「それじゃあどうしてこの三色の宝珠を作ったのです?」
「アルジンの近くにヌル一族がいない場合、間違いなくアルジンはヌル一族の元へ転移するでしょう。その時に使うのがこの三色の宝珠です」
「「「・・・」」」
レンカ以外の者達は、静かにレンカの言葉を聞く。
「この三色の宝珠を使えば、確実にアルジンの元へ転移することが出来ます。ですが、使用する場面を間違えないようお願いいたします」
「・・・一つ、いい?」
「どうぞ、イブ殿?」
「・・・例えば、魔の国にいるアヤトがヌル一族の元へ転移したとして、私は直接見たから分かる。けど、他の国にいるリーフ、モミジ達にはどうやって分かる?」
「・・・つまり、それぞれの国にいるアヤトが一か所に集まる瞬間をどうやって知ることが出来るのか、イブはそのことを聞きたいのですね?」
リーフが要約すると、イブは首を縦に振る。
「確かに、魔の国にいるアヤトが転移したからと言って、赤の国にいるアヤトが転移したとは限りませんね」
リーフの質問内容に、レンカは納得しつつ、首を縦に振る。
「・・・それじゃあこの作戦、破綻することにならない?」
「いえ。手はまだあります。分からないのなら、誰かが直接見て伝えればいいのです」
「・・・?誰が?」
「私が、です!」
「「「!!!???」」」
瞬間、レンカ以外の全員が、レンカの行動に驚く。
何せ、レンカは自身の核となっている指輪を6等分にしたからである。みんな、レンカの頭がおかしくなったのではないかと心配する。
「だ、大丈夫ですか!!??」
モミジは真っ先にレンカの近くに駆け寄り、レンカを心配する。
「大丈夫です。心配していただきありがとうございます」
レンカは軽くモミジに会釈する。
「この状態の私なら、他の私と情報共有出来る私なら、アヤトが一か所に集まった瞬間を把握、みなさんにお伝えすることが出来ます」
これなら問題ありませんよね?という意味を込めた視線を送る。イブはその視線に対し、首を縦に振って応える。
「これで問題点は解決しましたし、後はそれぞれの国に行くだけです。ですが、最後に私から一つ、みなさんに聞きたいことがあります」
「「「???」」」
レンカの聞きたいことってなんなのだろうか?レンカ以外の者達はそう考える。
「この戦いが終わった後、アルジンにしたいことはありますか?」
レンカ以外の者は質問の意図が分からず、沈黙の時間が流れ始める。
「私はそうですね・・・アルジンに過去に類をみないほどの説教をさせていただきます。まったくアルジンは、何度私を心配させればいいのやら・・・」
レンカはその後、彩人に対する文句をぶつぶつと言う。
「それで、リーフ殿はアルジンに何かしたいことはありますか?」
レンカは気分を切り替え、リーフに質問する。
「私もレンカちゃん同様、説教ですかね。今回の勝手な行動はみんなを困らせましたからね。お咎めなしになんてさせません。ええ、絶対に!まったくアヤトはどうして・・・、」
リーフも先ほどのレンカ同様、文句をぶつぶつ言い始める。どうやら彩人に対して色々不満が溜まっているようだ。
「イブ殿は?」
「・・・私もリーフ同様、説教する。そして、一緒に食卓を囲み、ホットケーキを食べたい」
イブは自身の胸に手を当て、ある情景を思い浮かべる。その情景は、イブと彩人が笑顔でホットケーキを食べ、味の感想を言い合っている光景である。
「私もリーフやイブ同様、私を心配させたわけですからね。今回の奇行の理由を一から十まで問い正し、反省してもらいましょう!後、私と一対一の模擬戦に、私が満足するまでとことん、それはもうとことん付き合ってもらいます!」
クリムは自身の拳を見つめ、何もないところに何度も拳を突き出す。
「ルリはね、ずっと一緒にいたいって言う。ずっと、ずっと一緒にいてね、何度も寝たり、ご飯を食べたり、笑いあったりしたい。お兄ちゃんにこの思いを言いたい」
ルリは今までの旅を思い出しながら、胸に手を当てる。
「私も今回ばかりは説教です!アヤトさんにはもっと自分を大切にしてもらいたいです!だからもう、こんなことを二度としないで・・・、」
モミジは感極まってしまい、涙腺が緩んでしまう。その様子を見たクロミルは何も言わずに、モミジの目の近くにある水分を優しくふき取る。
「私はそうですね・・・ただただご主人様の隣にいたいです。それはもう、寝起きから就寝まで、一生一緒にいさせてもらいます、ふふ」
「そ、そうですか・・・」
クロミルのただならぬ雰囲気に、レンカは何も言えなくなっていた。
「それでは各々アルジンにしたいことがあるということなので、そのことを胸に秘め、絶対にしたいという意思を忘れないでください」
レンカの言葉に全員が頷く。
「それでは行きましょう!我がアルジンを救う為に!」
「「「はい!!!」」」
こうして各々、各国に向かい始める。
その一方、
「そろそろ行きましょう。それぞれの国へ」
ある者達が各国へ移動を開始する。
「待っていてください、我が・・・、」
最後の言葉が聞こえぬまま。
次回予告
『7-1-26(第515話) 虹無対戦~赤の国編その5~』
彩人の危機に駆けつけたクリム。クリムは連れてきた赤の国の者達と協力し、魔獣の軍勢に立ち向かう。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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