7-1-23(第512話) 虹無対戦~魔の国編その3~
あれから俺は、食事を気にせずひたすら戦い続けた。
その結果、
「はぁ・・・、はぁ・・・」
食事だけでは回復出来ないほど、疲労が蓄積されてしまった。
正直、今すぐ休んでゆっくり食事をしたい。
が、
(このまま休んだら・・・、)
俺は、この場から逃げた後のことを想像する。
今も底が見えないほどの数がいる魔獣共。その魔獣共が一斉に魔の国に押し寄せたら、間違いなく魔の国は大混乱するだろう。
その様子を想像しただけで、俺は今罪悪感が生じている。なら、その大混乱を目撃したらどうなる?
間違いなく俺は、あの時もっと頑張っていればと後悔するだろう。
だから俺は・・・俺は!
「諦めない!」
将来、イブ達と楽しく食卓を囲む為に強く、強く足を踏む。
魔力量だって、こいつら共と戦ってってきたおかげでほとんど残っていないし、魔力池は・・・今使ったので最後か。
(これでもう、魔力回復は出来ない)
時間経過によって少しなら回復するが、期待は出来ないな。
(なら、これしかない!)
俺は【黒色気】を再度発動させる。
この魔法は、俺が使える魔法の中で最も魔力消費量が少ない魔法である。その上、自分をとても強化出来るという便利な魔法だ。
(その代わり、魔力制御に失敗すれば一瞬でお陀仏してしまう諸刃の剣なのだが)
そんなことは百も承知だ。それくらいのリスクを背負わないと、目の前の危機を乗り越える事なんて、出来ない!
(ひとまず、目の前の魔獣共の数を減らそう。魔力に関する問題は・・・後回しだ!)
俺は問題を先送りにし魔獣共の減らそうと、魔銀製の剣を握りなおして駆け出す。
(やば、もう魔力がほとんどない。体力も・・・う!?)
魔獣共と戦い続け、もう俺の魔力が底を尽きかけていた。体力もかなり消耗したからか、魔力制御に乱れが生じ始めている。その乱れのせいで、俺の体から出血してしまう。
(ただでさえ魔獣共から攻撃を何度も受けて生傷だらけっていうのに!)
俺は魔獣共の魔法と矢による攻撃を受け流しつつ、なんとか攻撃に転じようと試みる。
が、魔獣共が多過ぎて、全ての攻撃を受け流すことが出来ず、体にもらってしまう。
「鬱陶しい!」
俺はオークを切り捨て、魔獣共から距離をとる。
「う!?」
流石にここまでか!?
そう思い、ついつい視界が下を向いてしまう。
(駄目だ!今魔獣共から視線を外してしまったら・・・!?)
俺は魔獣共から攻撃を背中でもらってしまう。
「!?いっつ・・・?」
苦痛のあまり、声が漏れ出てしまう。そして、自身の体から垂れている血が視界に入る。
「ん?」
ここで俺は、自身の血と共にあるものを見る。
「・・・そうか」
そして、あることを閃く。
「俺は、独りじゃなかったんだ」
そのあることを実行する為に、俺は地面に手を置き、呼びかける。
「植物達、悪いが俺に力を貸してくれないか?」
俺はあるもの、植物達に声をかけると、地面から急成長して現れる。
(ん?)
なんだろう?急に体力が回復していく。
いや、体力だけじゃない。魔力も回復していく。
これは間違いなく、植物達がしてくれているのだろう。
「ありがとう、植物達。それと図々しいと思うが、俺に力を貸してくれないか?守りたい、ものがあるんだ」
俺は魔獣共を睨みつける。俺はこいつらを蹴散らして、イブ達と温かい食事を囲む。あの場所を、時間を守りたい!
「・・・ありがとう」
植物達が了承の意を受け取り、感謝の言葉を返す。
「それじゃあ、植物達は魔獣共の隙を作ってくれ。その作ってくれた隙に、俺が剣を叩き込む」
俺が簡単に作戦を再び植物達から了承の意が伝わる。
「ありがとう。それじゃあいくぞ!」
俺は少しながらも体力と魔力を回復させ、植物という強力な味方をつけ、魔獣共と相対する。
次回予告
『7-1-24(第513話) 虹無対戦~魔の国編その4~』
彩人は自らの死期を悟り、最後の晩餐について考え始める。
だが、死期を悟ったにも関わらず、いつまでも死なない自身に違和感を覚え、その正体を探る。
その正体は、彩人にとって身近な人物だった。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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