7-1-21(第510話) 虹無対戦~白の国編その4~
植物達と共闘して戦い始めてどれほど時が経過しただろうか。
(植物達の協力もあってかなり戦いやすいし、数も減っているはず)
そのはずなのにどうして状況が変わらない!?
(魔獣の数、多過ぎるだろう!!??)
原因は分かっている。
異常なまでの数の多さだ。
これまで何度も実感していたのだが、また思ってしまった。
(こっちの魔力や体力だって無限じゃないんだぞ!?)
常に【白色気】を常に使用しているおかげで、魔力が今も減少し続けている状態だ。
(このままだと流石に・・・ん?)
なんか植物達が私に話しかけてくるな。
なになに・・・あいつらを呼び出している何かが奥にいる、だと!?
(まさか本当に、この魔獣共を召喚している奴がいるとはな)
少し前にその可能性を考慮していたのだが、いつの間にか考えることをやめてしまっていた。
私はなんて愚かなのだろうか。つくづく自分の無能さにがっかりしてしまう。
(て、今は自分の無能さに呆れている余裕はない)
まずはこの魔獣共を召喚している魔獣の特定だ。
(と言っても、その魔獣が召喚しているのかなんて見当がつかないぞ)
せめてヒントとかないのか?
そんなことを考えていたら、植物達が更に教えてくれた。
(・・・そうか。この魔獣共の奥にいるんだな)
植物達から貴重な情報をもらう。
それともう一つ教えてもらった。
(・・・そうか)
その情報とは、もう植物達は力を使い果たしてしまった、という残念な知らせだった。
「今まで、ありがとう」
私の言葉を聞いた植物達は、地面の中に潜っていってしまった。
(さて、これで本当に独りだな)
だが、植物達から渡された情報と言葉がある。
(だけど、独りじゃない)
まずは目の前の魔獣共を殲滅しよう。それから私は奥に行く!
その後、私は懸命に魔獣共を切り続けた。
切って、切って、切りまくった。
あらかた魔獣共を切りまくったところで、ある魔獣が見えた。
(あの魔獣、どこかで・・・あ!!??)
まさか、メイキンジャーなのか!?
どうりで切っても切っても魔獣が減らないわけだな。こいつが減った魔獣を召喚して補充していたのか。
(ならこの魔獣を倒せば・・・、)
そう考えていたら、
「助けて!」
「!?」
助けを呼ぶ声が近くから聞こえた。
周囲を見渡すと、ボロボロの少女がフラフラとこちらに向かって歩いていた。
(どうしてこんなところに子供が!?)
そんな疑問が湧いたものの、私はその少女に近づく。
(出来れば魔力を温存しときたかったのだが、まぁしょうがない)
私はその少女に白魔法をかけようとする。
が、
「!!!???」
その少女のても手元が一瞬光ったと思ったら、私の体に何かが刺さる。
その何かの正体を、私はすぐに理解する。
(ナイフだと!?しかもこの違和感・・・毒か!!)
一体、どういうことだ!?
そんな疑問はすぐに解消された。
「小さな少女に擬態していたのか!?」
少女は、少女から緑色のオーガへと変貌した。
おそらく、小さな少女に擬態し、私に接近したのだろう。
小さな少女なら、私が油断すると確信して。
(本当に嫌な戦法を使う、な!)
私はすぐに剣を振るも、緑色のオーガは躱し、どこかに消えてしまう。
(ち!なんとも卑怯な奴だ!)
そんな風に感じてしまう。
だが、私も人の事は言えなかった。
(襲撃した私が言えるわけないか)
なにせ、私はこの魔獣共の軍勢に襲撃してきたのだ。襲撃してきた私が不意打ちで文句を言うのは違うだろう。
(だからといって、このままやられっぱなしの私じゃ、ない!)
私は、今持てる限りの力で魔銀製の剣をメイキンジャーに向けて投げる。
複数のゴブリン共が、私の投げた剣を止めようと間に入ってきたのだが、時既に遅し。ゴブリン共の妨害を受けることなく、魔銀製の剣はメイキンジャーの体に突き刺さる。
(よし!これでもう・・・!?)
私は、メイキンジャーによる魔獣の増加を防ぐことが出来、喜ぼうとしたのだが、メイキンジャーの顔を見て驚く。
なにせ、自分の体に剣が突き刺さったというのに、目の前のメイキンジャーは笑っていたのだ。
死を目前にしているというのに笑っていられる。一体どういう心境なのだろうか?
(まさか・・・!?)
私は周囲を見渡す。
すると、周囲には渦が複数出現していた。そしてその渦から魔獣共がわんさか出現してきたのだ。
(あの野郎、とんだおき土産をしていったものだな!)
せっかく今の今まで魔獣共の数を減らしてきたというのに!
(・・・さて、腹を括るか)
私は自身の死を覚悟する。
これだけの魔獣に囲まれている上、今の私は満身創痍である。こんな状態で複数の魔獣共を倒せるわけがない。
「ぐ!?」
ゴブリン共が私を矢で複数回射抜いてくる。
そして、私が反撃してこないと理解すると、近くにきたオーク共が自前の斧を私めがけて振り下ろす。
(せめて、せめてものあがきだ!)
私は体を回転させ、即死しないようにしつつ、唾を吐きかける。
私の唾に対し苛立ったのだろうか、見るからに怒っていた。
(これで私のあがきは終わりだ)
私はオークに両腕をつかまれ、徐々に大きな音がなり始める。そしてその音は、私を更なる苦痛に導く。
「あああぁぁぁ!!!???」
その音は、私の両腕が折れた音だった。
(こいつら、私をいたぶっているな!?)
さっさと殺せばいいものを!
(・・・いや、それなら私もさきほどの攻撃を下手に躱さなければ楽に死ぬことが出来ていたな)
そう考えると、私の感情を読み取り、魔獣共は気を利かせたのかもしれないな。まぁ、気の利かせ方は最悪なのだが。それになにより、魔獣共は笑っていた。
(・・・はやく、殺せ)
私はもう、最後のあがきすら出来なくなり、早く楽になりたかった。
その意思を汲み取ったのか、緑色のオークがどこからか現れ、鋭利な斧を振り上げていた。
(みんな、悪いな。私は先に逝く)
自身の死をようやく自覚し、死を受け入れようとした。
だが、いつまでたっても自分の死が訪れない。
「牛術が一つ、【午閃】!」
その原因は、今の私には分からなかった。
ただ、何かが私と魔獣共の間に入ったような、そんな気がした。
「ご主人様、大丈夫・・・ではなさそうですね。早急に治療いたします」
ん?何か温かい光が私を包んでいるような・・・?それに、傷が少し癒えているような、そんな気がする。
(もしかしたら、もう既に私は・・・、)
「長らくお待たせいたしました。ご主人様、少しお休みください。私が、私達がこの魔獣共をなんとかして見せます」
死後の世界にしては、さっきまで見た景色とよく似ているな。
「もう少し魔獣を片付けましょう。牛術が一つ、【牛象槌】!」
さっきからなにか見知った声が聞こえてくるような気がする。この声、どこかで・・・?
「さて、これで少しは、話が出来そうです」
私は視界を少しずつ上げていく。
「ま、まさか・・・!?」
ここで私は驚きの人物を目にする。
次回予告
『7-1-22(第511話) 虹無対戦~魔の国編その2~』
魔の国の深夜。
黒い彩人はホットケーキでカロリー摂取しつつ、無数の魔獣の軍勢を見つけ、奇襲を仕掛ける。
この静かな深夜に、彩人の孤独な戦いの音がなり始める。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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