7-1-20(第509話) 虹無対戦~白の国編その3~
あれから私は戦い続けた。
(本当に数が多過ぎる。実はループしているのではないか?)
そう錯覚してしまうくらい、魔獣共の数が減らない。
というか逆に増えていないか?
(・・・もしかして、誰かがこの魔獣共を召喚しているのか?)
ようやく戦闘以外の事も思考出来る余裕が持てるようになり、魔獣の異常な増加について考える。
(・・・いや、もしかしてこれまでこの魔獣の数が隠れ潜んでいたのか?)
私は魔獣の頭を矢で貫通させながら考える。
(!?ち!魔力量がかなり少ないな。魔力池で魔力を回復しよう)
私はアイテムブレスレットから魔力池を取り出し、魔力を回復させる。
(これが最後の魔力池、か)
魔力を回復させた後、私にはもう魔力を回復させる手段がないと理解した。
(さっきから魔力を節約しながら戦っていたのだがな)
そう愚痴ったところで何も始まらない。
愚痴ってもため息をついても、目の前には数を数えたくないほど無数の魔獣共がいる。
(一撃一殺で一体ずつ倒したとしても、どれほど時間がかかるだろうか?)
それに、この数の魔獣全員倒すまで集中力が持つだろうか?
そう考えた瞬間、私の体に異物が突き刺さり、体に痛みが走る。
(この痛み・・・私の体に矢が刺さっているのか。後は・・・斧か!?)
私は周囲を見渡す。するとそこにはさっきまでいなかったオーガがいた。
(それにあの緑色の体・・・カラー種か!?)
本当、嫌になってしまう。
私はすぐ緑色のオーガに向けて魔銀製の剣を突き刺そうと動く。
が、周囲のゴブリン共が邪魔をしてくる。
「うっとうしい!」
周囲のゴブリンを蹴散らしたら、いつの間にか緑色のオーガはいなくなっていた。
「どこに行った!!??」
私は緑色のオーガを探す。
が、すぐにやめて切り替える。
(気にしちゃだめだ。気にしていたら、目の前の魔獣共から攻撃をもらって、しまう!)
私は目の前の魔獣共の攻撃を間一髪で躱す。
(危なかった。一秒でも遅ければ直撃していたな)
冷静になるんだ、私!
(さっき見えた緑色のオーガに気をとられちゃいけない!今は目の前の魔獣共に集中、集中するんだ!)
そして私は、再び目の前の魔獣共の掃討に集中する。
(やばいな)
集中し直してから戦闘し続けてから時間が経った。
魔力の回復手段がない中で、魔力のほとんどを使ってしまった。魔道具もそこまで用意していないのが仇となった。
(こんなことなら、普段から魔獣討伐用の魔道具をもっと作っておくべきだった)
今までの自分の行動を嘆いていても仕方がない。
(どうにかして私の魔力を回復させたいところだが・・・、)
何分、魔力を回復する手段がもうない。
(【白色気】で魔力を節約しているが、それでももうもたないぞ・・・)
もって後数分。
その数分でなんとか打開策を考え、行動に移さないと・・・死ぬ。
(この魔獣共の中でもなんとか生き続けることが出来るのは、間違いなくこの【白色気】のおかげだ)
だからなんとしてでも、【白色気】を使い続ける為の魔力が必要なのだ。
(とはいえ、どうすればいい?)
魔力残量はほとんどなく、 頼みの魔力池や魔道具は使い切ってない状態。
(本当、自分の準備不足に嫌気がさすな)
後、今の私にあるものはなんだ?
(あるとすれば、手に持っている魔銀製の剣か・・・)
最終手段として、魔獣共に向けて投げてみるか?
(いや駄目だ)
そんな武器の使い方をしていたら、すぐ武器が駄目になってしまう。
だからどうにかして打開策を考え、実行しないと。
(それにしてもうっとうしい、な!)
ここに来てからずっと魔獣共が私に襲い掛かってくる。
最初に襲撃してきたのは私なのだから、襲われることは仕方ない。
このように反撃されることだって覚悟の上で襲撃したのだ。
そのつもり、だったのだが・・・。
(それにしたって多過ぎだろう!)
愚痴りたくなるくらい数が異常に多い。
どこにこれほどの魔獣が隠れ住んでいたのだろうか。
そしてどういうわけか、緑色のカラー種が他のカラー種より厄介に感じた。
(森の色と似ているから視認し辛いから、かもしれないな)
それを言うなら、黒いカラー種もかなり見え辛いから緑のカラー種同様厄介に感じるはずなのにな。どうして緑色のカラー種だけこんなに嫌悪感を・・・?
(待てよ?緑・・・緑!?)
私はあることに気づき、自身の手を見つめる。
(・・・そうか。まだその手があったな)
私はある可能性に気づく。
「ありがとな」
私は、姿が見えない緑色のカラー種に感謝する。
だって私はそのカラー種のおかげで、戦い続けられる方法を見つけることが出来たのだから。
私は地面に手を置く。
「力を貸してくれ、植物達よ」
私の声掛けに応えてくれたのか、植物達が急成長し、私の目の前に現れる。
「私に戦い続ける為の魔力を分けてくれ」
そうお願いすると、植物達から了承の意志が伝わり、私の体に触れる。
すると、私の体に何かが流れ込んでくる。
(これは魔力・・・じゃないな。けど、ありがたい)
私の体に流れ込んだのは魔力じゃなかった。
だがこの力は今の私にとてもありがたかった。
(これがあれば・・・この自然治癒力があれば、いける!)
それは、自身の体力、魔力、傷を自力で回復する自然治癒力だった。
(それにしても、私がただの人間じゃなくて、モミジに寄生されていて助かった)
私はただの人間ではない。
モミジに寄生され、人間と魔獣が混ざった存在だ。ジャルベ風に言うならキメルム、といったところだろうか。
そのおかげで私はモミジの力を得て、植物達と会話をすることが可能となったのである。可能といっても、モミジほど出来るわけではない。せいぜい、簡単な意思疎通、会話が出来る程度だ。今後の世界の在り方とか、幸せとは何か等の等の哲学関連の話は出来ない。
植物達は、私の自然治癒力を向上させた後、私達も手伝うと言い、茎から棘が多数生えてくる。
「これは強力な助っ人だな」
今の私にはありがたい助っ人だ。本当に、本当に感謝だ。
「それじゃあ植物達は魔獣共の足止めを頼む。その隙に私がとどめをさす。これでいいか?」
植物達は私の簡単な作戦会議に、了承の意志で答える。
「ありがとう。それじゃあ始めよう」
私は改めて魔獣共の群れを見る。
(すごい数だ)
絶望しか感じない。
けど、
(大丈夫だ)
少なくとも今の私には、植物達がいる。
「負ける気がしない!」
まだ私は戦える!
そう判断し、私は植物達と協力しながら魔獣共に抗っていった。
次回予告
『7-1-21(第510話) 虹無対戦~白の国編その4~』
白の国で戦っている白い彩人は、魔獣側の策略に嵌められてしまう。
嵌められた後も戦い続ける中、絶体絶命のピンチに、ある者がある術を放つ。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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