1-3-1(第51話) 魔銀と新たな厄介事の予感
今回やった依頼は魔獣討伐関連の依頼ではない。店番やお使い、荷物運びなど、様々な雑用をこなし、お金を貯めた。その間、何を作ろうかずっと悩んでいた。
「何作ればいいのかなぁ?はぁ、だれか俺に名案を出してくれないかな」
「そしたらお兄ちゃん!ホットケーキが二倍になる魔道具作ってよ!」
「却下。そんな魔道具どうやって作ればいいんだよ」
「気合で!」
こいつに聞いた俺が馬鹿だった。だが、二倍か………。
相手を攻撃する魔法だけでなく、自分を補助する魔法も必要だと考えると、「二倍」という単語で何か閃きそうな気がするのだが。
………。何も思いつかない。自分の思考回路を疑いたくなるな。
だが、数日考えていると、作る魔道具のアイデアを思いつく。
「そういや、乾電池みたいに魔力も溜めることもできるのでは?」
そう考えた俺の行動は早かった。
まず、そこいらに落ちている石に魔力を込める。
ばきっ。
石にひびが入った。どうやら普通の石では魔力を込めることはできないらしい。
「何しているの、お兄ちゃん?」
俺が行き詰っていると、ルリが顔を出す。
「あぁ、ルリか。実は乾電池…じゃないや。魔力を溜められる物はないか?」
「魔力を溜める?あ、それならいいものがあるよ!」
「ほんとか!?それはどこにある!?」
「ここ」
「へっ?」
そう言ってルリは自分のお腹を指さす。
どこを指さしているんだ?もしかして、お腹とか言うのではないだろうか。
「今から出してあげるね!」
「は?」
そう言うと、ルリはペッと何か吐き出す。
って急に吐くなよ!びっくりするじゃないか!まさか、胃の中に何かあるのか?
「はい!これなら大丈夫だと思うよ」
「え?でもこれって、え?」
俺は動揺している。だって、口から出たものを「はいどうぞ」と言って、「ありがとう」と言いながら受け取る人はいないだろう。というかこの嘔吐物はなんだ?なんか銀色に光り輝いているし。もしかして、ルリの体内で銀でも生成しているのか?
「え~と、確か、【魔銀】っていう物質で、魔力を溜められると思うよ」
「【魔銀】?なんだそれ?」
地球でも銀はあったが、魔銀は知らないな。きっと異世界に出てくる物質だろう。今は名前よりもその魔銀の性質について知りたいのだが。
とりあえず俺は、ルリからもらった魔銀に魔力を込める。
………。どうやら、無事に魔力が込められたようだ。
なんとなくだが、この魔銀から、さっきとは比べられないほど魔力を感じる。実際、俺が魔力を込めたのだから、当然といえば当然か。
「ありがとなルリ。これで万が一、魔力不足になってもすぐに魔力が回復できるようになるぞ」
「ほんと!?」
「たぶんだけどな」
そう言いながら、俺はルリの頭を優しくなでる。
ルリの髪って、さらさらしていて、触っているだけで気持いいな。
次に考えた物は、何かを「増幅」させる魔法だ。だが、
「何をイメージすればいいだろうか?」
そう、俺の脳みそでは、増幅のイメージを魔法にするのが難しい。もっと具体的に考えた方がいいのか?いや、増幅させる物によっても、イメージが違うのか?紙とか、魔法とか、ホットケーキとか、全部をまとめて増幅させようとするのは無理なのか?
「う~」
彩人の考察は続く。
そして、ゆるゆると働きながら、新たな魔法を考えること数日。
「出来た!」
「良かったね、お兄ちゃん!それでその魔法は?」
「ん?ああー。この魔法はな…」
「アヤトさん!私、変な人に付きまとわれているのです!助けてくれませんか!?」
どうやらまた、一悶着あるらしい。
すいません。厄介事の具体的な話は次のお話しでします。