7-1-18(第507話) 虹無対戦~黄の国編その4~
「はぁ、はぁ、はぁ・・・、」
あれからどれほど戦っているのだろうか。植物達から力を借りているにも関わらず、どうして魔獣共の数が一向に減っていないんだ?
(いつの間にか死体がゾンビ化して蘇っている、なんてことはなさそうだな)
僕は周囲を見渡し、盾猪と剣猪の死体を確認する。先ほどの僕の推測は間違っていないらしく、今も周囲に盾猪と剣猪の死体が転がっている。
(だとしたら一体・・・?)
そう僕が考え込んでいたら、
「!?」
植物達から焦りの意思を受け取った。
急にどうしたのかと思っていたら、後ろから剣猪が走ってきて、僕めがけて剣を振り下ろそうとしていた。
「あぶなっ!?」
僕は慌てて剣猪の攻撃を躱す。
「ありがとう」
僕は植物達にお礼の言葉を言う。その後、植物達から返事をもらった後、別の意思を受け取る。
「・・・なんだって?」
別の意思とは、奥にいる何かが目の前の魔獣、剣猪と盾猪を召喚?しているらしいのだ。
「・・・そうか」
そしてもう一つ、今の僕にとって残念なお知らせを聞いてしまった。
それは、もう植物達から力を借りることが出来ない、ということなのである。
「今までありがとうな」
そう植物達にお礼を言うと、植物達から返事の意思を感じた。その意思を受け取った後、植物達は地中へと潜っていった。
「・・・さて、」
ここからは本当に独りだ。
独りで何とかしなくちゃいけないんだ。
(まずは、奥で盾猪と剣猪を召喚?している何者かを討たないと)
姿形は分からないが、奥に行けば誰が召喚しているのか分かるだろう。
そう思い、僕は奥に向かう。
向かう途中、剣猪と盾猪の猛攻が僕を襲ってくるが、魔力と体力が回復した今の僕には当たらない。
「!?」
ただし、他の魔獣は除く。
僕は剣猪と盾猪に集中し過ぎるあまり、ゴブリン等他の魔獣への注意が散漫になってしまっていた。その結果、ゴブリンの矢をくらってしまった。
(!?この感じ、矢の先端に毒が塗られているな!?)
僕はゴブリンに向けて雷を放つ。ゴブリンは僕の雷をくらい、倒れていく。攻撃してきたゴブリンを倒したものの、僕の体に毒が残ってしまった。
(このままだと死ぬな。一刻も早く回復したいけど、解毒剤なんて持っていないぞ?)
こんなことなら状態異常対策をしてくればよかった。
(いや、今は僕のことより召喚している何かをなんとかしないと!)
僕は、毒が全身に巡る前になんとかしようと、盾猪と剣猪を召喚している何かを探す。
(・・・ん?)
魔獣共の攻撃を躱しながら探していたら、おかしな気配が目に入った。
なにかがいるはずなのに霧がかかって見えないような、おかしな感覚だ。
「!?」
僕はそのおかしな気配に向けて雷を放ったら、盾猪が僕の魔法を防いでいた。
(さっきの雷じゃあ防がれても仕方がないな)
僕はさっきより魔力を込め、放つ雷の威力を強めて放つ。
さっきと同様に盾猪が僕の雷を防ごうとしてきたのだが、強力だったあまりに盾猪の盾を貫通し、盾猪が守りたかった何かに直撃した。
「よし!」
感触はあったぞ!思わず声にだしてしまった。
「こいつは一体・・・?」
僕は、さきほど雷を当てた何かがなんなのか見てみる。
(この見た目・・・なんだかメイキンジャーに似ているな)
まさか、剣猪と盾猪を召喚していたのはメイキンジャーだったのか!?
(なるほど)
メイキンジャーは他の魔獣を召喚することが出来る。そのことはヌル・メイキンジャーで痛いほど分かっている。
そうか。植物達が教えてくれた魔獣はこいつのことだったのか。
(これで脅威の一つは取り除くことが・・・!?)
安堵しようとした瞬間、絶命したはずのメイキンジャーが笑った、気がした。もちろん、絶命しているので動くなんてことあるはずない、つまり、絶命直前で笑ったということになる。
(面白いことを想い出して思い出し笑いでもしたのか?それとも・・・!?そうか、未来のことを考えて笑っていたのだろうな)
僕は目の前にある渦巻いている穴を見る。その渦巻いている穴から続々と盾猪と剣猪が出てくる。
「くそったれめ!」
僕は穴に向けて雷を放つ。
(やば!?)
咄嗟のことで思わず魔力を込め過ぎてしまった。おかげで少ない魔力がさらに少なくなってしまった。
穴から出てき続けている盾猪と剣猪を切り続けていたら、いつの間にか穴は消えていた。穴が消えるのは嬉しいのだが、それ以上に残念なことがあった。
「まじかよ」
それは、盾猪と剣猪の数がさっきよりかなり増えていたことだ。
(これ、やばくないか?)
今の僕は、さきほど回復し体力も魔力もほとんどないんだぞ?【黄色気】だっていつまで続くか分からない。
(それでも、やるしかない。やるしかないんだ!)
僕は魔銀製の剣を強く握り直し、魔獣共へ向かう。
「さぁ、いくぞ!」
僕は魔獣共の殲滅を目指し、その剣を振り下ろしていく。
「や、やべぇ・・・、」
魔獣共と戦い続け時間が少し経ち、僕はボロボロだった。
なんとか剣猪の攻撃を躱すようにしているが、そうしているとゴブリンやスライム等他の魔獣共の攻撃をくらってしまう。
物理攻撃だけならまだマシだったと思う。だがあいつらは姑息にも、矢や剣の先端に毒を塗っていたのである。
そのおかげで僕は今、フラフラで視界が安定せず、全身に痺れが出ているのだ。
「あっぶ!?」
そして、その状態異常のせいで、魔獣共の攻撃をさらにくらってしまい、さらに強い毒をもらってしまう。最悪の悪循環だ。
「ま・・・だ!」
僕は諦めず、剣猪に向けて剣を振り下ろそうとした。
「!?」
だがその時、嫌な予感がして咄嗟に体を横にずらす。
「あああ!!??」
嫌な予感の正体は、剣猪の剣だった。僕は体をずらしたのだが間に合わず、片腕を切断されてしまう。
(まだだ!)
今の僕に回復手段はないので、魔力で疑似的に腕を形成しようとする。
だが、出来なかった。
(・・・そうか。もう、魔力がないのか)
理由はすぐに分かった。その理由とは、魔力の枯渇である。
ただでさえ体はボロボロで毒状態。
ここから勝つ方法なんてあるのか?あるなら是非俺に教えてほしい。
(もう、見えない・・・)
視界の確保すら難しい状態だった。
(最後の、いしゅ、がえし、だ!)
俺は何もない箇所に向けて拳を放つ。当然何もないので、拳には何の感触もない。
(失敗、か・・・)
これで僕は終わりだな。
自身の死を覚悟した時、
「いました!」
・・・あれ?もうそろそろ魔獣共の攻撃が僕を体を貫いてもおかしくないのだが・・・?
「アヤトさん!無事ですか!!??」
声が、聞こえてきた。だが、誰の声なのか判断出来ないほど意識が朦朧としている。立っている事もままならず、僕は態勢を崩してしまう。
「危ない!?」
ん?下がやけに柔らかいな。ここの地面、こんなに柔らかかったか?
「怪我は・・・ひどい。植物さん達、私の魔力でアヤトさんを癒して!」
なにか僕、光に包まれていないか?
「その間に、周囲の魔獣達には消えてもらいましょう」
なんだ?周囲の植物達が急成長している?
「植物さん達、私の魔力を使って倒して!」
・・・さっきから聞こえてくるこの声、どこかで・・・?
「私もやります。これ以上、アヤトが傷つくなんて我慢出来ません!」
俺はどこでこの声を聞いたんだ?確か・・・?
「【三樹爪撃】!」
さん、じゅ・・・まさか!?
「アヤトさんは絶対、死なせません!私が、助けます!」
僕はようやく、目の前の者が何者なのか判別出来るようになる。
その者は・・・。
次回予告
『7-1-19(第508話) 虹無対戦~白の国編その2~』
白の国の深夜。
彩人は無数の魔獣の軍勢を見つけ、奇襲を仕掛ける。
ここから、正義感が強い彩人の孤独な戦いがなり始める。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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