7-1-16(第505話) 虹無対戦~黄の国編その2~
黄の国。
暗い暗い夜道に魔獣共を見下ろしている者がいた。
「魔獣の数が凄いな」
その者とは僕のことである。
「さて、魔獣の位置は大体分かったことだし、雷を連続で落とすとするか」
僕は魔力を集中させる。
(出来ればこれで一網打尽に出来たら嬉しいけど、そう上手くいくかね)
そんな心配をしながら僕は、込める魔力量を更に増やしていく。
(さぁ、ショータイムの始まりだ!)
近年見る、日本の雷雨を再現してやる!
「【雷雨】!」
そう僕が魔法名を唱えた瞬間、魔獣共の群れに雷の雨が降り始める。
突如振ってきた雷の雨に驚く魔獣共は慌てふためき始める。
「次は暗殺、といこうか。【黄色気】」
僕は【黄色気】を発動させた後、魔銀製の剣を手に取る。
そして、
(はぁ!)
雷の雨の僅かな隙間を高速で駆け抜けつつ、魔獣共の命を刈り取る。
(いける!)
今のところ上手くいっている。このまま上手くいけば、この魔獣共を一掃出来る!そう確信していたのだが、事態はそう簡単にいかなかった。
「!?」
何者かによって僕の攻撃を防がれてしまう。僕は咄嗟に退き、攻撃を防いだ者を目視する。
「あれは・・・いの、しし?」
変な形の頭の猪だった。
何がどう変なのかと言うと、頭の形が剣と盾の二種類の猪だった。
(こんな魔獣、見たことないのだが・・・?)
見たことない魔獣なので、無計画に攻撃するわけにはいかない。
「とはいえ、やることは変わらない」
ここで魔獣を殲滅する!
そのためには、ここにいる魔獣共全員の注意を引きつけないと。
つまり、僕が目立てばいいのだ!
「さぁ!どんどん目立っていくよー!」
僕は自身の声を大きくし、魔獣共の視線を一身に浴びる。
本来なら、誰にも気づかれずに魔獣を殲滅するのが最善なのかもしれないが、これでいい。
「雷で気絶させればいいよね!」
僕は魔獣共の頭上から雷を落とす。
この雷により、ゴブリン共は倒れていったのだが、盾の形の頭をしている猪は、自身の顔で雷を防いでいた。
剣の形の頭をしている猪は、盾の形の頭をしている猪に守られて無事だった。
(剣の形の頭をしている猪と盾の形の頭をしている猪・・・名称が長いし知らない魔獣だから、それぞれかりで【盾猪】、【剣猪】と呼ぶことにしよう)
そして俺は再び盾猪と剣猪、二種類の猪の体を見て、気付いていたことを口にする。
「体が黄色い。やっぱカラー種、だよなぁ・・・」
あの二種類とも、体が黄色いのだ。
つまり、盾猪と剣猪はカラー種、というわけなのである。普通、黄色い猪なんて存在しないからな。少なくとも僕は地球で黄色い猪を見たことは無い。
(見た感じ・・・かなりいるな)
百匹以上いるのではないか?と思ってしまうくらいいる。
(一体誰がこんなにカラー種を用意したのやら)
そんなことを考えていても仕方がない。
「【黄色気】!」
僕は【黄色気】を発動し、盾猪に向けて魔銀製の剣を思いっきり振り下ろす。
「!?」
盾猪の顔の皮膚が相当硬いのか、僕の魔銀製の剣の刃がまったく通らない。この皮膚の硬さ、尋常じゃないな。
「!!??」
僕は咄嗟に剣猪の攻撃を躱す。剣猪の攻撃はあまりにも鋭かったのか、剣先が少し当たっただけで、木が紙切れのように切断されてしまった。
(そんじょそこらの武器よりよっぽどやばいじゃないか!?)
こんな攻撃をまともにくらったら、僕の体は豆腐を包丁で切るくらいお手のものだろう。
(どうしてこの僕がこんな魔獣を相手にしなくてはならないのだろうか?)
そんな今更な事を考えてしまう。
だが、そんなことを考えている余裕はない。
「頭上の雷を防ぐのなら、」
僕は雷を頭上から落としつつ、自身の指から雷を猪共に向けて放つ。
盾猪と剣猪は僕の横からの雷を直撃し、そのまま動かなくなってしまった。
(この調子なら、いける!)
自分は上からと側面からの二方向攻撃により、盾猪と剣猪共の数を減らしていく。
(・・・ん?)
二方向攻撃を何回か繰り返しているうちに、盾猪と剣猪の様子に変化が表れる。
それは、魔獣共が協力し始めた事だ。
盾猪が僕の攻撃を防ぎ、剣猪が僕に攻撃を仕掛けてくる。
(まるで連携を取った人間と戦っているみたいだな)
さしずめ、タンクとアタッカーを同時に相手しているような感覚だ。
(ヒーラーがいないだけまだまし、と考えるべきだろうな)
僕は剣猪に向けて雷を放つも、盾猪が僕の攻撃を防いでしまう。
(僕の魔法を、あの盾猪の盾を貫くくらい強力にすればいけるのか?)
なら試しに、もっと魔力を込めてみるか。
(これで駄目なら後はもう【黄色気】でゴリ押すくらいしかないけど、いけるかね)
そんな不安が残りつつ、僕はさっきより魔力を込め、猪共に向けて雷を放つ。
その結果、盾猪と剣猪は僕の雷に耐えきれなかったのか、盾で防ぎきらずに倒れた。
この方法なら行けると判断出来たのはいいが、
(魔力消費量がちょっと多いな)
この方法はあまり使えなさそうなので、【黄色気】で地道に倒すしかなさそうだ。
(結局、【黄色気】に頼らなくちゃいけない、てわけか)
そのためにはまず、
「覚悟しろよ、猪突猛進野郎ども!」
僕は出来るだけ大きな声を出し、周囲の魔獣共の視線を一身に浴びる。
「ここから、お前達の屍を量産していくからな!」
さぁ、どんどんカラー種を倒し、この場で一番目立ってやろう!
ここから一匹たりとも逃がさないために!
次回予告
『7-1-17(第506話) 虹無対戦~黄の国編その3~』
黄の国で戦い始めた黄色い彩人だったが、徐々に状況が悪くなる。
そんな時、自身のある可能性に気づき、魔獣達に抗い、尚も目立ち続ける。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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