7-1-15(第504話) 虹無対戦~緑の国編その4~
(はぁ、はぁ、はぁ・・・、)
自分は今、猛烈に疲れが溜まっていた。
さっきから植物達に協力してもらいずっと、それはもうずっと魔獣共を倒し続けてきたのだが、何故か緑のウッドマンの数が減っていないように見える。死体の数は増え続けているはずなのにどうして・・・?
(!?ちょっとやばいかも)
手が震え始めている。そろそろ長期的に休みたいところだが、そんなことは言っていられないだろう。
(ん?)
なにか植物達が自分に話しかけてきた。
・・・奥で緑のウッドマンが増えている、だと!?
(どういうことだ!?)
まさか、周囲に生えている木が緑のウッドマンに変貌している、とでもいうのか!?
(いや、だとすればおかしい)
そう考えるとなると、自分の周囲にも緑のウッドマンが続々と増えていないと辻褄が合わない。今周囲を見続けているが、緑のウッドマンが増えている様子はなさそうだ。
(となると、植物達が教えてくれた通り、この奥で緑のウッドマンが増えているという事になるな)
一体どうやって増えているのだろうか?
(!?やば・・・!!??)
植物達の助言内容について思考していたら体を止めてしまい、緑のウッドマン共から攻撃をまともにくらってしまう。
(気を付け、ないと!)
自分は、植物達が教えてくれた情報を元に視線を動かす。
(まずは魔獣共の攻撃を躱す。躱しつつ、緑のウッドマンが増えている原因を突き止めないと!)
自分は緑のウッドマンの攻撃を上手く受け流しながら原因を探す。
(なんとかして原因を、緑のウッドマンが増えている原因を・・・?)
ここで自分はある違和感に気づく。その違和感は、ある箇所だけ、妙にモヤのような何かが見えた。
(あそこだけおかしいな。なんだ?)
自分はその個所を注視する。
すると、そのモヤの先に何かがいた。
(あれはなんだ?)
「・・・」
「!?」
何かの正体を注視していたら、注視された何かは笑った。自分は直感でやばいと判断し、その何かに向けて急速で接近する。
自分と何かの間に、緑のウッドマンは行く手を立ちはだかる。
「邪魔を、するな!」
自分は緑のウッドマンに向けて剣を振る。
(!?)
ここで手の震えが悪影響したのか、力が上手く入らず、緑のウッドマンの体の途中で剣が止まってしまう。
(ち!この剣はもう諦めるしかない!)
自分はすぐ剣を手放し、緑のウッドマンを避け、何かに急接近する。
(こいつだ!)
今自分は剣を持っていないので、緑魔法の風で剣を作り、自身の手で上手く持つ。
そして自分は、何かの首らしき箇所を推測し、そこに思いっきり風の剣を振る。
「!?」
一瞬、何かがこちらに向けて笑ったような気がした。
(これで緑のウッドマンが増える事はないはず)
安堵し、少し気を緩めた瞬間、手が震え始める。
(まだ気は緩められないな)
自分はすぐ気を引き締め直す。
すると、
(ん?)
緑のウッドマンが続々と出現し始める。
一体どこから・・・と考えていたのだが、その原因はすぐに判明した。
(あの渦か!?一体誰が作ったんだ!?)
自分は、あの渦を作った張本人を探し、周囲を見渡す。
(まさか・・・!?)
自分は、先ほど倒した何かを見る。既に絶命しているはずなのに、こちらに笑顔を向けていた。
(こいつがあの渦を使って、緑のウッドマンをこの場に呼んでいたのか)
確証はないが、おそらく今自分の目の前で絶命しているこの魔獣が緑のウッドマンを呼んでいたのだろう。
(だけど、あの渦っていつ消えるんだ?)
今もあの渦から緑のウッドマンが続々と出てくる。自分は出来るだけ緑のウッドマンを倒していくが、それ以上にウッドマンが増える増える。
やっと消えたと思ったら、緑のウッドマンの数がさっきの何倍にも増えていた。
「はは」
もう笑うしかない。
ただでさえカラー種は、一匹でも倒すのに苦労するというのに、自分は体感百匹以上倒してきた。それなのにこの仕打ちか。
(罰が、当たったのかね)
ここに向かう直前、自分はレンカ、モミジと酷い別れ方をしてしまった。その報いが今、、魔獣の軍勢となって返ってきているのかもしれない。そう思うと、自業自得に思えてくる。
「え?・・・そうか。今までありがとう」
不幸は連続してやってくる。
ここで植物達は力尽きたのか、これ以上自分に協力出来ないらしい。確かに何度も植物達に助けられたからな。これ以上無理に付き合ってももらうわけにはいかないと考え、自分は植物達に感謝した。すると植物達は、自分に感謝の意思を送った後、地中に潜る。
「諦めない」
例え、体がボロボロでも。
【緑色気】が発動出来ないほど、魔力が無くても!
「手に力が入らなくて、も!」
自分は足で緑のウッドマンを蹴り飛ばす。
が、緑のウッドマンは自分の足を容易く受け止めていた。
(ち!)
【緑色気】が解除されているからか、さっきより力が弱くなっていた。
(ここはひとまず距離を置いて、どのように攻める練り直さないと・・・!?)
そう考えながら足を動かしていたら、突如足に激痛が走る。
痛みの原因は、鋭利な気の枝だった。
(あいつら・・・!)
自分は緑のウッドマン共を睨みつける。
「!!??」
緑のウッドマン共は、負傷した自分を見て好機と思ったのか、自分への攻撃がここぞとばかりに襲い掛かり、全て命中してしまう。
(いきが、くる、しい・・・)
肺はやられていないと思うが、傷がひどくて息するにも痛みが走る。
「ま、だ・・・、」
諦めるわけにはいかない。
諦めたくない。
そう思っていても、意識が朦朧とし、視界が不安定。
もう勝てる未来が、生き続ける未来が見えない。
今の俺に見えるのは、敗北と死の未来のみ。
(さよなら、みんな。さよなら・・・、)
自分は自身の瞼を閉じ、死を覚悟する。
「アヤト!!」
出来れば、もっとみんなと遊んでいたかった。
話がしたかった。
「酷い怪我!?でももう大丈夫よ!一人で飲むことは・・・難しそうね。なら失礼して・・・、」
「!?」
な、なんだ!?突然口が何かに塞がれた!!??自分は咄嗟の出来事だったので深く考えずに飲み込んでしまう。
(ん?なんか、傷が癒えていく、だと?)
一体どういうことだ?
「これで大丈夫ですか?」
「・・・」
だ、誰だ?まさか自分に話しかけている、のか?
「・・・どうやらまだ意識が朦朧としているようですね。仕方がありません。ならそこで見ていてください」
自分の気のせいか。さきほどから懐かしい声が聞こえてくる。
何度も聞いた覚えがあるような、懐かしい声。
「これ以上、アヤト独りにだけ辛い思いはさせませんから!」
「・・・!?」
ここで自分はようやく、あることに気付く。
自分は今、助けられているのだと。
そして、自分を助けた者の正体を。
次回予告
『7-1-16(第505話) 虹無対戦~黄の国編その2~』
黄の国の深夜。
彩人は無数の魔獣の軍勢を見つけ、奇襲を仕掛ける。
黒く染まった夜の空に、彩人の孤独で目立つ戦いがなり始める。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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