7-1-14(第503話) 虹無対戦~緑の国編その3~
(地形を活かして戦うのって、とても難しい・・・)
今自分は、低空且つ高速で移動し続けている。その移動も、周囲に生えている木々を利用して軌道を変えている。
(それに、そろそろ体力がきついな)
さきほどからずっと全力で移動し続けている為か、体力の消耗が激しい。これ以上は無理、かな。
自分は思わず自身の足を止めてしまう。
「も、もう足が・・・!?」
自分が肩で息をし始めたら、緑のウッドマンが自身の体を俺に向けて伸ばしてくる。
(やばい!?)
自分は緑のウッドマンの攻撃を躱す為、自身の足から空気を思いっきり噴射し、自身の体を無理矢理動かす。
(この移動方法だと、周囲の木が邪魔で動きづらいな。上に行こう)
そう考えた自分は魔獣共を上から見下ろす形にする。
(目視だけだと見づらいな・・・!?)
そう考えていたら、さっきまで自分がいた場所から何か飛んでくる。
まさかあれは・・・木の枝か!?しかも緑色をしている。さっきまで戦っていた緑のウッドマンの攻撃か。
自分は咄嗟に緑魔法で風を起こし、木の枝の勢いを殺す。
(というか、空中で木の枝の勢いを殺したらどうなるかくらい考えなかったのだろうか?)
そして更に風の勢いを強める。そうすることで自分に放たれた木の枝を武器に転用出来るのである。
(これで幾分か倒れてくれたら・・・というか、そろそろ魔力量もピンチだな)
自分の魔力量が心配なので地面に降りる。地面に降りると、さきほど自身に向けて放たれた木の枝が大量に刺さっている。
(危ないな)
そんなことを気にしながら周囲を警戒していると、
「!?」
急に背中から痛みが拡がっていく。
自分は慌てて後ろを振り向くと、さきほどまで自分に向けて放たれていた木の枝が再度自分に向けられていた。
(まじかよ!!??)
一体どういう仕組みなのか不明だが、まさかまた自分を狙って飛んでくるとは思わなかったな。正直、油断した。こんな傷を負うくらいなら、魔力の消費を抑えるなんて考えるべきではなかった。
(邪魔、だ!)
自身に刺さっている鋭利な木の枝を抜いたものの、抜いた先から血がしたたり落ちる。
(このままだと出血多量でやばそうだな。何とかして止血し、体力を回復させないと)
自分は白魔法を使い、回復しようとする。
が、
(そういえば今の自分って、白魔法が使えないんだった)
本当に自分はどこか抜けているな。こんな自分が嫌いだ。
さて、今は自己嫌悪している場合じゃないな。それよりどうやって自分の体力を回復させるか考えないと。
(出来れば考える時間が欲しいけど、悠長に待ってくれないか、な!)
自分は緑魔法で風を起こし、魔獣共の動きに制限をかける。出来ればこの風で魔獣共の動きを完全に止める事が出来ればよかったのだが、緑のウッドマンが想像以上に強い。
(大人しく人面樹みたいに、地面に根を生やしてじっとしてくれれば嬉しいのだけどね)
地面に根を生やす?
自分で考えておいてなんなのなのだが、何か思いつきそうな気がする。
(なにか・・・!?)
ほんの少し考えていただけなのに、緑のウッドマンから思いっきり叩かれてしまう。唯一の救いは、緑のウッドマンが自分の体を突き刺そうとしなかったことだ。緑のウッドマンがその気になれば、自分の体など容易に貫通することが可能だろう。
「いった・・・、」
だが、これで分かった。
自分が今すぐやるべきことを。
自分は地面に手を置き、植物達に呼びかける。
「どうか、自分に力を貸して」
植物達は、自分の呼びかけに応じて急成長し始める。
(モミジが自分に寄生してくれて本当に良かった、これで自分も、モミジの力を使う事が出来る)
自分はただの人間ではない。人間と魔獣のハーフなのである。魔獣側にはモミジの血を引いている。だからこそ、自分は植物の力を借りることが出来る。その事実にどうして今まで気付かなかったのだろうか。思考する力の不足がここにきて悪影響しているな。
と、そんな反省はしていられない。
(まずは自分の傷を癒したい。お願い)
そう願ったら、植物達は自分に何かくれた。その後、自分の傷が急に治り始めた。
(これは・・・そうか。自然治癒力を上げてくれたのか)
おそらく、植物達は自分に養分を与え、その養分で自分の自然治癒力を上げてくれたのだろう。傷が治り始めていくのと同時に、だんだん活力が戻っていくような気がする。
(あまりこの力を使った記憶がないからか、新鮮だ)
そんなどうでもいい感想を抱くのは後回しだ。今のこの状態なら、
「【緑色気】!」
自分は魔銀製の剣を握り直し、緑のウッドマンに向けて走り出し、一閃する。
すると、緑のウッドマン共は一閃され、真っ二つに切られた。
(これなら、いける!)
植物の力を借りたおかげなのか、さっきより【緑色気】の効果がいつも以上に出ていた気がする。
(それに、今の自分には心強い協力者がいる)
自分は後ろを見る。すると、植物の蔦がウネウネと動いている。
「さっきはありがとう。これから力の限り、協力してくれないか?」
植物から了承の意思が伝わった。
さぁ、この勢いで魔獣共を殲滅するとするか。
次回予告
『7-1-15(第504話) 虹無対戦~緑の国編その4~』
植物達から力を借り、更に多くの魔獣を倒していく。
だが植物達からの協力がなくなると、魔獣達の数の暴力が彩人に襲い掛かる。
そんな時、彩人を心配したある者が駆けつける。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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