7-1-13(第502話) 虹無対戦~緑の国編その2~
緑の国。
その王都、シンペキから離れた地で、一人の男が魔獣の軍勢を見ていた。
「あの魔獣の数、暗くても分かるくらいいるな」
その者は彩人。彩人は無数にいる魔獣の軍勢を倒す為、暗闇の中移動し手盛りの奥まで来たのである。
「今の自分に殲滅なんて出来るのかな?」
いや、出来るか出来ないかなんて関係ない。やらなくてはならないのである。やらなくてはならないのだが、もし出来なかったらどうしよう?そんな考えが何度も脳裏をよぎってしまう。
「それでもやらなきゃ駄目、駄目なんだ」
自分を奮い立たせ、魔力を溜め始める。
「さぁ、魔獣共の命を刈り取ろうか」
自身の右手に十分すぎるほど溜めた魔力を緑魔法の風に変換し、魔獣の軍勢に向けて放つ。
放たれた鋭利な風の刃は、多くの魔獣の体を引き裂いていく。
(出来ればこの魔法で全ての魔獣が倒れてくれたらいいけど)
そう望んだのだが、自分の魔法は何者かの攻撃により消えた。
(あの魔法をかき消したのは誰だ?)
自分は、自身の魔法を撃ち消したものの姿を見る。
(あまり見ない魔獣だな。人を模した・・・木?)
その魔獣の全身は木で出来ていて、俺みたいな人型だった。体の色は・・・緑?
(確かあの魔獣と似た魔獣なら見たことがある。確かその魔獣は・・・、)
【ウッドマン】、だったか?
でもその魔獣って確か全身が茶色じゃなかったか?だが目の前にいるのは緑色のウッドマンだ。
(まさか、カラー種!?)
最悪だ。
ここにきてカラー種がいるなんて。しかも見る限り、一体二体の話じゃない。
まるでカラー種のウッドマンの群れだ。
(ただでさえここにヌル一族の者がいる可能性だってあるのに、カラー種までいるの!?もうヤダ)
本当に嫌になる。
出来ればこの場から逃げ出したいし、何もかも忘れて幸せになりたい。
けど駄目だ。この戦いをどうにかして乗り越えないと、明日の幸せなんて絶対に来ない。
(そういえば、さっきからヌル一族の者気配が感じられないな)
自分の勘違いの可能性もあるが、自分の勘が正しいのなら、この場にヌル一族の者がいないことになる。
(もしこの場にヌル一族がいないのなら、まだ可能性はある)
自分でも、目の前にいる魔獣共の軍勢を殲滅出来るかもしれない。こんな自分でも。
「まずはあのウッドマンのカラー種を倒そう」
そう言い、緑魔法で鋭利な風をウッドマンに向けて放つ。
(げ!?)
緑のウッドマンは自身の腕を振り下ろし、自分の緑魔法の風を断ち切った。あのウッドマンの腕、かなり腕が強いな。
(なら、ウッドマンの後ろにいる魔獣共を殲滅しよう)
その考えにシフトチェンジした自分は、三度緑魔法で風を発生させ、後ろのゴブリン共を殲滅しようとする。
(魔獣が、連携している?)
だが、盾を持っていたゴブリン共が自分の攻撃を防ぎながら時間を稼ぎ、ウッドマンが自分の魔法を断ち切る。
(自分の緑魔法の攻撃に耐えられるほどの盾を自前で持っているのか)
あの盾をゴブリンはどうやって用意したのだろうか?
・・・もしかして賢猿か?ここ周辺にはいなかったと思うけど、魔獣の軍勢の奥に潜んでいるのかもしれない。
(盾の方は納得できたけど、目の前にいる緑のウッドマンはどうしてここまでいるのだろうか?)
・・・いや、今はそんなこと気にしてはいられない。まずはなんとしてでも魔獣共の連携を崩し、殲滅しなければ!
「【地棘】!」
自分は地面から土の棘を生やし、魔獣共を殲滅しようと試みる。
ゴブリンは何匹かやられていたようだが、緑のウッドマンはほとんど躱していた。
(やはりカラー種だけあって、自分の魔法をいとも簡単に避けるな)
やはり単発で魔法を撃つのではなく、幾重にも罠を張った方がよさそうだ。とはいえ、罠なんてどこにも張っていないし、今から張るにしても、どのように張ればいいのだろう?
「!!??【緑色気】!」
どうやら呑気に考え続ける暇は与えてくれないようだ。自分はウッドマンの攻撃を躱す。
(そういえば自分、ウッドマンの攻撃方法をあまり把握していないな)
罠を張るついでによく見てみよう。
自分はウッドマンに向けて鋭利な風の刃を飛ばしつつ、地面に魔力をおくる。
ウッドマンは、自身が放った風の刃を、自身の腕でどんどん断ち切っていく。
(その手はさっきから見続けていますよ)
自分は周囲の景色を大量の葉で埋め尽くし、視界を緑で埋め尽くす。
(これでウッドマン共の視界は潰した。今なら・・・!?)
そう思った瞬間、大量の葉が一瞬にして散っていった。
(・・・なるほど。そんなことも出来るのね)
私はウッドマンの変化に驚いた後、感心していた。
なにせウッドマンは、自身の腕を肥大化させ、その肥大化させた腕を思いっきり振ることで、無数に舞っていた葉をどかしたのだから。
(なら後もう少しだけ、時間稼ぎをさせてもらおうかな)
自分はもう一度、無数の葉を宙に舞わせ、魔獣共の視界を奪う。
(今の内に・・・!?)
流石一度見せただけあって、対処する速度がさきほどより早くなっている。
だが、それでも僅かな隙が出来た。
自分は、その隙を待っていた。
(今こそ力を貸してくれ!【地棘】!)
自分は地面に流しておいた魔力を使い、【地棘】を発動する。さきほどより【地棘】の棘のサイズが大きい気がする。これも事前に魔力を地面に流していたからだろうか。
(そういえば、どうして事前に魔力を流しただけで魔法の威力が増したのだろうか?)
魔力が地面と馴染んだから、だろうか?魔力が地面に埋まることで、魔力量が多くなるのだろうか?聞いたことないが、そんなものなのか?
(そんなことはどうでもいいか)
自分は今浮かんだ疑問を胸にしまい、魔獣共殲滅の為に動き出す。
(いくぞ!)
自分は体制を極限まで低くし、【緑色気】を発動させる。
(低姿勢で、魔獣共に見つからないように、高速で!)
そして自分は、出来るだけ高速で動きつつ、魔獣共の首を体から切り離していく。
(このまま限界まで!)
そして自分はこのまま、自分の体が許す限り動かし続ける。
次回予告
『7-1-14(第503話) 虹無対戦~緑の国編その3~』
緑の国で戦い始めた緑色の彩人だったが、徐々に状況が悪くなる。
そんな時、ウッドマンや人面樹を見て、自身のある可能性に気づき、魔獣達に抗い続ける。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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