7-1-12(第501話) 虹無対戦~青の国編その4~
俺は【青色気】を発動しようと試みたが、【青色気】が発動出来なかった。
(今の俺にはもう、【青色気】を発動出来るほどの魔力すら残っていないのか)
植物達の力も借りる事が出来ず、【青色気】も使えない。
つまり、目の前に広がっている魔獣の軍勢を、俺の素の力とこれまでの経験でなんとかしなければならない、ということである。
(気を抜かずにいくぞ、俺!)
俺は気を引き締め直し、魔獣の軍勢に単身で突っ込んでいく。
俺は複数の魔獣共に囲まれながらも剣をふるい続ける。
「!?」
いきなり俺の後ろから一撃をもらってしまい、全身の動きが鈍り始める。
(やべぇ!今ここで体を止めたら・・・!)
一撃をもらっても尚体を動かし続けようと試みるが、それでも動きにキレがなくなり、隙がうまれてしまう。そして、隙だらけの俺に何もしないほど、魔獣共は優しくない。
「!!!???」
俺の傷跡を執拗に狙って攻撃するのは本当に辞めてほしい。
そして、
「あ!?」
とうとう、俺の武器である魔銀製の剣が折れてしまった。まだ予備の武器はあるのだが、心が折れてしまった。
(もう無理、なのか?)
動きを止めてしまった俺に、続々と攻撃が突き刺さってしまう。
「が・・・、」
もう呼吸をするにも痛みが走るくらいボロボロだった。
指先もろくに動かすことが出来ず、無理に動かしてしまうと激痛が走る。
(ここから逆転する方法は・・・!)
・・・いや、冷静になれ、俺。
この状況から今にも死にそうな俺に、目の前の魔獣共を殲滅する方法なんてあるわけない。もっと現実を見た方がいい。
(これでもう、終わりだな)
・・・地球にいた時、いつ死んでもいいと思っていた。
だが今の俺は、死にたくないと思っていた。
それは何故か?
答えは簡単だ。
(今俺が死んだら、青の国の人達がこの魔獣の軍勢に襲われてしまう!俺のせいで!!)
俺のせいで誰かが死ぬのが嫌だからだ。
もう、大切な人を悲しませたくないのだ。
悲しませるくらいなら、俺が傷つき、死ねばいいと。
(死にたく、ない・・・、)
今、多くの顔が浮かぶ。
この青の国に住んでいるラピスの顔が浮かび、これまで旅をしてきたクリム達の顔が浮かぶ。
(助けて)
自分の感情も分からない。
死んでいいと思っているのか、死にたくないと思っているのか。
「お兄ちゃん!」
その想いは、幻聴となって耳に聞こえ始める。
「お兄ちゃん、酷い怪我・・・でも大丈夫!回復薬があるからね♪」
突如、頭から何か液体をかけられる。これは・・・血?それにしてはサラサラしているような・・・?
「さて、もっとお兄ちゃんの状態を診たいんだけど・・・邪魔な魔獣を片付けないと。氷れ」
それにしても、さっきから聞き慣れた声が聞こえているような、そんな気がする。俺の耳は死ぬ直前になっておかしくなってしまったようだ。
「まだいるけど、これで少しは時間を稼ぐことが出来るね」
・・・そういえば、どうして俺はいつまで経っても死なないんだ?それとも、俺はいつの間にか死んだのか?
「お兄ちゃん、お待たせ!」
そういえばさっきから聞こえてくるこの声、もしかして・・・?
俺は、声が聞こえてきた方向を見ると、そこには何度も見慣れた者がいた。
次回予告
『7-1-13(第502話) 虹無対戦~緑の国編その2~』
緑の国の深夜。
彩人は無数の魔獣の軍勢を見つけ、奇襲を仕掛ける。
この静かな深夜に、彩人の孤独な戦いの音がなり始める。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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