7-1-9(第498話) 虹無対戦~赤の国編その4~
植物達との共闘からどのくらい時間が経っただろうか。魔獣の数にして一、二千くらいかね。植物達は様々な方法で隙を作ってくれた。
蔓で魔獣共の動きを止めてくれたり、有毒な枝を魔獣共に放ち、動きを鈍らせてくれたり、協力してくれなかったらここまで魔獣を減らす事は出来なかっただろう。
だがここで事態は急変する。
「何!?・・・そうか。今まで協力してくれてありがとう。後でお礼はするから、今はゆっくり休んでくれ」
植物達が限界を迎えたらしい。植物達からもう限界、もう力を貸すことが出来ないという意志が伝わり、その植物達の意思を汲み取り、俺は感謝の言葉を伝えた。
(さて、これで正真正銘、これからは独りで戦わないとな)
ただでさえさっきまで植物達の力を借りてなんとか倒し続ける事が出来たのに、植物達の力を借りる事が出来なくなったらどうなるか。
「ぐ!?」
魔獣共の攻撃をくらい、瀕死になるのである。
もう何数千匹の魔獣を倒し続けてきたのだ。集中力、体力共に限界を超えていた。
(ん?)
ふと、魔獣の誰かがこちらを見て、薄気味悪い笑みを浮かべていた。
(あの笑み、どこかで・・・?)
そうか。
あの既視感ある薄気味悪い笑み、どこか見覚えがあると思ったら、地球にいた時、俺にいつも向けられていた視線だ。
(このままだと俺は死ぬ)
なら最後の最後くらい、意地を見せてやる。
あの薄気味悪い笑みの元凶を、
「ぶっ潰す!」
俺はボロボロの体から僅かな力を抽出し、【赤色気】を使い、薄気味悪い笑みの元凶の懐に潜り込み、残りの力全てを魔獣にぶつける。
するとその魔獣は吹っ飛び、ものすごい衝撃音が周囲に響き渡る。この音からして、あの魔獣は即死したことだろう。
「へへ、やってやったぜ」
これでもう思い残す事は・・・ん?
さきほどまでいた魔獣の近くが歪み、歪みから剣と盾を持った赤いスケルトンが出てくる。
(まさかあいつ、あの赤いスケルトンを呼び出していたのか!?)
どうりでやけに数が多いと思ったら、あの魔獣が召喚していたのか。
いや、さっきから召喚し続けているとしたら気付くと思うけど、どうして気付かなかったんだ?
(まさか、自身に隠蔽の魔法でもかけたのか?)
だとしたら自分が見つけられなかった事にも納得だ。
(というか、)
もう、無理だ。
俺は腕を脱力させ、無防備な状態を晒してしまう。
本当は戦わないといけないのに、力がはいらねぇ。
「ぐ!?」
俺の後ろから痛みが全身に広がる。
(この痛み、矢でも刺さったか)
本当は今すぐ引っこ抜きたいのだが、全身の痛みと疲弊疲労により、体が思うように動かすことが出来ない。
(やばい!?)
赤いスケルトンの奴、俺に向けて剣を振り上げてやがる!このままだと俺は、赤いスケルトンに切られる!
(・・・ああ。俺、死んだな)
こんなことならもっと腹いっぱい美味しいものを食っておけばよかったな。
後、もっとリーフ達と爛れた夜を過ごしたかった。
後、ルリ達に一言でもお別れの挨拶をすればよかったな。
後は・・・、
(死にたく、ないな)
俺は虚空を掴むように手をあげようにも手があがらない。もう体が限界を超えているのか。
「さよなら」
俺は目の前の光景を見たくなくて、目を瞑る。
「【炎拳】!」
その時、どこからか声が聞こえた。その声はどこか聞き慣れていた声だった。
「ああ!?こんなにボロボロで・・・ええい!!」
「!!??」
突如、口が何かに塞がれ、液体が口の中に入ってくる。
(なんだ、これ・・・え?)
体力が回復している、だと!?
(まさか俺、回復薬を飲んだのか!?)
回復薬って確か貴重で高額だったはず。
「勝手に死なれては困りますからね。色々話を聞きたいですからね」
「!!??この声、まさか・・・!!??」
俺は姿を見て改めて驚愕する。
なにせその姿は、俺がこれまで何度も見てきた者の姿だったのだから。
次回予告
『7-1-10(第499話) 虹無対戦~青の国編その2~』
青の国の深夜。
彩人は無数の魔獣の軍勢を見つけ、奇襲を仕掛ける。
ここから、彩人の孤独な戦いが静かに始まる。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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