7-1-7(第496話) 虹無対戦~赤の国編その2~
赤の国。
周囲は暗く、闇に包まれている。
「まったく。いくら奇襲が得策だからって、夜に奇襲するとか全然熱くないぜ」
そんな中、俺は魔獣の軍勢の近くで息を潜めていた。
(見る限り、一万以上はいそうだし、カラー種もチラホラ見えるから、真っ向から行かなくて正解なんだろうけど)
それにゴブリンだけでなく、紫色の猪や熊なんかもいるな。
(・・・よし、魔獣のおおよその位置は分かったし、やるか)
俺は右手に魔力を集中させる。
(これを撃ったら最後、もう引き返す事は出来ない)
そういえば、この軍勢の中にヌル一族はいなかったな。どこか別の国にいるのだろうか。
(今はヌル一族のことは後回しだ。今は目の前の魔獣殲滅だけに集中だ)
・・・よし。右手に溜める魔力はこれくらいでいいかな。
(!?)
今、揺れたか?
いや違う。
俺の体が震えているんだ。
(どうして?)
まさか、死ぬかもしれないと恐怖しているのか?この俺が?
(しっかりしろ、俺!)
俺は自身の顎に力を込め、気合いを入れ直す。
(やるぞ!)
「ファイヤー!!!」
俺は広範囲の炎を魔獣の軍勢に向けて放つ。
「さて、さっきの炎でどれくらい倒れてくれたかね」
出来れば全滅してもらいたいところだが、
(まぁ無理だな)
これくらい分かっていたことなのだが、現実を目の当たりにしてしまうと、少し残念に感じてしまう。
「けどまぁ、ここからが本番だ」
何故だろう?すごいピンチのはずなのに、感情が昂ってきている自分がいる。
「限界まで暴れてやるぞ!【赤色気】!」
俺は【赤色気】を発動する。この【赤色気】の発動で、俺の感情が最高潮にまで到達した。
「魔獣共、俺が一匹残らず駆逐してやる!」
さぁ、熱くなってきたぜ!
俺はこの後、【赤色気】を発動させた状態で、徹底的に魔獣を殴り倒していった。
「まだだ!もっと!!もっと!!!」
体を動かせば動かすほど体は熱くなっていくのだが、熱さが足りない。もっと熱さを!
「【炎海】!」
俺の周囲に炎の海が広がり、魔獣を呑み込んでいく。
「俺に攻撃が通じると思うな!」
俺に矢が放たれたのだが、俺はその矢を赤魔法の炎で焼き尽くした。
「矢は、こうやって撃つんだよ!」
俺は炎で弓と矢を形成し、矢を射抜く。魔獣は矢によって射抜かれ、焼かれて死んだ。
「まだまだやるぞ!」
俺は炎の矢を空中に何百本も生成する。
「もっと熱く、燃え上がろうぞ!!」
俺はさきほど生成した炎の矢を全て魔獣共に放つ。
「ん?」
なんか、飛んできていないか?
(あれは・・・フクロウ?)
もしかして、夜でもはっきり見える魔獣がいるのか?いや、いてもおかしくないか。それがただ、フクロウと見た目が似ている、というだけだ。
「やることは、変わらねぇ!」
俺は拳に炎を集中させる。
「【炎拳】!」
俺が【炎拳】で殴り落とそうとした時、フクロウみたいな魔獣から何か飛んできた。
(あれは・・・羽か?もしかして、羽を飛ばして攻撃するのか?)
だがそんな羽など今の俺には通じん!俺は邪魔な羽を炎で燃やし尽くし、俺とフクロウの間にある異物を消し飛ばす。
「そんなちゃちなもので、俺を殺せると思うなぁ!」
その勢いのまま、俺はフクロウみたいな魔獣を【炎拳】で殴り落とす。その後は分からないが、絶命しているだろう。
「まだ、いるのか」
落とされたフクロウみたいな魔獣を見ていたら、いつの間にか俺の前にさっきと同じ魔獣が何十・・・いや、百匹以上はいるな。
「しゃらくせぇ!」
俺は一瞬で拳に炎を集め、放射する。
「これで飛んでいる奴ら全員倒したか」
と思ったのだが、何匹か生き残っていた。
(後ろにいた魔獣が生き残っているな)
もしかして、前方にいた魔獣を肉壁にして生き残ったのか?
(ここでもう一度炎を噴射してもいいが、)
俺は足から炎を噴射し、空中を移動し、魔獣共との距離を詰める。
「殴り落とす!」
俺は力の限り、フクロウの魔獣を殴りつけ、地面に叩き落とす。
「このまま終わらせる!」
俺は緑魔法と赤魔法を組み合わせようとしたが、
(・・・あ)
今の俺は、赤魔法しか使えないことを今更思い出す。
(本当、一種類の色魔法しか適性がないというのは不便だな)
これではあの魔獣の軍勢に隕石を落とす事が出来ないじゃないか。
「でもまぁ、やることは変わらない」
俺は両腕両足に炎を纏う。今更だが、自身が発どうした炎って、自分が触れても火傷しないんだな。・・・本当に今更なことを想うな、俺。
「まだまだいるなら、その分殴って減らせばいいだけだ!」
俺は地上に降り、近くのゴブリンを殴る。
「さぁ!もっと。もっと!もっと!!」
俺は興奮しながら魔獣共と応戦していく。
次回予告
『7-1-8(第497話) 虹無対戦~赤の国編その3~』
赤の国にいる赤い彩人は、自身が赤魔法しか使えないこと、魔獣の数の多さに困ってしまう。更にカラー種も多数出現し、打つ手がないと思っていたのだが、自分がどんな存在だったのか思い出し、地面に手を置く。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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