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色を司りし者  作者: 彩 豊
第ニ章 魔の国での日常、将来に鉄黒が差し込む夢
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6-2-16(第486話) 最悪な戦いに備えて~VSモミジ&レンカその1~

「植物さん達、アヤトさんを拘束してください!」

 モミジがそう言うと、俺周辺の地面から植物が急成長し、俺の足に絡みつき始める。

 俺は赤魔法を発動し、絡みついてきた植物を燃やす。

「植物は燃えるんだ。まさか知らない、なんてことはないだろう?」

「ええ。ですが、時間稼ぎ出来ました。レンカさん!」

「はい!」

 レンカはいつの間にか魔力を一点に溜め込み始めていたらしい。

(なるほど。レンカの一撃をくらわす為にモミジが時間を稼いでいたのか)

 だが、甘いな。

 俺は自身とレンカの間に複数の【結界】と【魔力障壁】を展開する。

 そして、レンカの溜め込んだ魔力が俺めがけて発射された。

 俺の【結界】と【魔力障壁】が活躍し、俺に届く前に魔力が霧散した。

「それじゃあ届かない。その程度じゃあ、他の相手に通じても、ヌル一族には通じんぞ?」

「ならこうします!【葉吹雪】!」

 瞬間、俺の視界に大量の葉が舞い始める。

(まさか、また時間稼ぎのつもりか?)

 さきほどまで使っていなかった【魔力感知】を発動する。すると、レンカとモミジの魔力の反応が出る。

(・・・どうやら大きく移動はしていないようだな)

 魔力量も変動なし。となると、葉を舞わせて一体何を企んでいる?

「燃えて下さい!」

 すると、俺の目の前で舞っていた葉が一瞬で燃え盛る。

(俺を火の渦に閉じ込めたつもりか?)

 この火の渦を強引に突破してもいいが、それだと魔力の消費が多いと思い、上から脱出しようと想い、上を向く。

(思いっきりジャンプすればいけるな・・・ん?)

 火の渦の上になんかあるな。あれは・・・棒?

(まさか!?)

 俺はすぐにその場から離れる。

 すると、先ほどまでいた場所に棒が降り注いだ。

(この棒、魔力で出来ているな)

 となるとレンカの仕業か。

(出来ればこの一回で終わってほしいところだが・・・そんな訳ないか)

 再度上を見ると、先ほどより多くの棒が見える。あれで俺を突き刺すつもりだろうな。さっきもそのつもりであの棒を俺めがけて落としたのか。

(上からの脱出は諦めた方がよさそうだな。となると方法は一つだな)

 強行突破だ!

「打ち消しあえ!」

 俺は、先ほどから起きている火の渦とは逆方向に回転する渦を発生させてぶつける。

(念のため、【結界】を展開しておき、身の安全を確保しておこう)

 渦がぶつかった結果、モミジが作った火の渦と俺の渦は共に消滅した。

 その後、上から棒が複数本降り注いだが、全て躱した。

「・・・まさかこの程度でヌル一族と張り合おうとか思っているんじゃないだろうな?」

「アヤトさんこそ、随分躱すのに必死だったじゃないですか?それも独りだったから、ではないですか?私達の協力があれば・・・、」

「大丈夫だ」

 俺はレンカとモミジを囲むように渦を発生させ、渦に葉と火を加える。

(さらにこいつを加えるか)

 そして俺は、モミジとレンカ目掛けて雷を放つ。

 雷は、俺が発生させた渦を貫き、モミジに直撃した・・・と思う。

(俺も火の渦で直接見えないんだよな)

 【魔力感知】で大体の位置は把握しているので的外れなところに撃ってはいないと思うのだが、効いたのだろうか?

「アヤトさんこそ、この程度ですか?」

 どうやらモミジは、俺の雷をくらってもピンピンしているようだ。

(どうやって防いだのだろうか?)

 俺の雷がモミジに届かなかったのだろうか?それとも、何か魔法や植物を使って俺の雷を防いだのか?

(どちらにしても、今の俺だとモミジは防いでくるのは分かった。なら、今以上の力を出すだけだ)

「確かに、今の俺はこの程度だが、」

 俺は【三色装・赤緑黄】を発動する。

「これでさっきよりも強くなったが、お前らはこれを超えられるか?」

 俺は空気を指先に圧縮し、モミジの横に発射させる。

(見た限り、俺の魔法に気づいた様子はないな)

 つまり、当てる気になれば、さっきの俺の魔法はモミジに直撃していたことになるな。

「大人しく俺に魔道具を渡してくれないか?」

 これでもう、俺の力が分かってくれたはずだ。

「それが【色装】ですか。【色気】、ではないのですね」

「ああ」

 正直、何度も【色気】を使いたくないからな。ここでは出来れば【色気】を使いたくないのだ。

「私の気持ちを、私を舐めているのですか?」

「!?」

 なんだ?モミジの雰囲気が徐々に変わっていく。

「私相手ですと、【色気】を使わなくても勝てる。そうアヤトさんは判断したんですよね?」

「ああ」

 もしモミジが【色気】を使えるようになったら、俺も【色気】を使わないと勝つことは出来ないだろう。

「そうですか。私が、弱いから」

 俺はモミジの言葉に対し、首を横に振る。

「モミジ、お和えは弱くない。【色気】が使えなくても、お前は十分に強い」

 ただ、【色気】を使う相手に対してはちょっと力不足だと個人的には思う。だが、そう簡単に【色気】を使う奴なんていないのでそこまで気にしなくていいはずだ。

「ですが、これから戦うヌル一族の方々は全員、【色気】を使ってくるのですよね?」

「全員とは限らないが、高確率で使ってくるだろうな」

 メイキンジャー・ヌルが【色気】を使っている場面なんて見たことないのだが、おそらく使ってくるだろう。そして、セントミアさんとも戦っていないが、【色気】は使えるだろう。

「私が【色気】を使えないから。私に、覚悟が足りないから・・・!」

「モミジ、それは違う。【色気】を使えないことは恥ずべき事じゃない」

 【色気】という魔法は、血と涙を吐きながら死ぬ覚悟をもって何度も練習してようやく習得出来るかもしれないくらい、習得に難しい。故に、この魔法を習得しようとして何人もの死人が出たとして禁術に指定された、なんて話を聞いたな。

(まぁ俺は禁術なんて一切知らずに練習し、出血しまくったけどな)

 俺みたいな馬鹿が多くいたから、禁術に指定されてしまったのだろうな。

「それでアヤトさんを救えないなら意味が無いんです!意味が・・・ない!」

 いきなりモミジの後ろから鋭利な木の枝が飛んでくる。

 飛んでくる木の枝に対し、俺は赤魔法で燃やしていく。

「意味はあったぞ。これまでモミジは何度も俺を助けてくれた。そこに【色気】が使えるかどうかなんて関係なかったはずだ」

「でも!今のままじゃあアヤトさんの力になれない!アヤトさんを見殺しにしちゃう・・・そんなの、私が嫌なんです!」

 モミジの後ろから大木が急成長し、そこから黄色い何かが飛んでくる。あの黄色い何か、もしかして花粉か?

(【結界】で守っておくか)

 俺は【結界】を展開し、黄色い花粉の様なものから身を守るようにする。

「レンカさん、私の後ろに」

「はい」

「これでもまだ、私が弱いか見ていてください。お願いします!」

 モミジは後ろの大木にそう言った後、黄色い何かが爆発し始めた。

(まさかさっきの黄色い花粉、花粉じゃなくて火薬か!?)

 黄色の火薬なんて見たことないが、そんな火薬があるのか!?いや、今はそんなことどうでもいい。

(【結界】をもっと展開しておいた方がいいな)

 俺は更に【結界】を展開し、守りを強固にする。

 そして、俺の周囲が爆発の連鎖を起こしていく。

(あの大木、火薬を振りまくとかどんな種類の木だよ・・・、)

 あんな木、地球で聞いたことないぞ?

「驚いたな。あんな木、どこで見つけてきたんだ?」

「私が色んな植物さん達と話した時に、こんな植物さんがいると教えてもらったんです」

「へぇ」

 俺、そんな話一切聞いたことないんだけど?

 こういうところで俺、対話能力の無さを実感してしまった。

「!?」

 突如、俺の意識外から攻撃が飛んでくる。

(この攻撃、レンカか!?)

 レンカの奴、俺がモミジに意識を向けている間に気配を消していたのか。

「余所見厳禁、ですよ?」

「ああ、まったくだな」

 こんな調子では、ヌル一族相手に勝つことなんて出来ないよな。

「これで終わりです!」

 レンカは俺に向けて、剣に変形させた腕を振り下ろす。

「残念だが、終わらないぞ?」

 俺は易々とレンカの腕を魔銀製の剣で受け止める。

「いえ、これで終わらせ、ます!」

 レンカは剣に変形させた腕を動かし、俺に連続攻撃を仕掛ける。

「無駄だよ、レンカ」

 俺はレンカの攻撃を全て受け流すか防ぐ。

「・・・どうやら私の剣技では、アルジンに届かないようですね」

「ああ。だから無駄なことはむ辞めて、俺に魔道具を・・・、」

「いえ、別に私の剣技がアルジンに届かなくていい。私達がアルジンを倒せばいいだけですから」

「私、たち?」

 ここで俺は、レンカに意識を向け過ぎたせいでモミジのことを気にしていなかったことに気づく。

「ありがとうございます、レンカさん」

 レンカはある魔法の準備をしていたのだ。

(あの魔法、確か黄の国で使っていたな)

「この魔法で、アヤトさんを止めます!」

 モミジは俺に向かって移動を始める。

(レンカがここに来るまで時間があるな。今の内に躱す準備を・・・!?)

 ここで俺は、足元に違和感があることに気づく。

 足元を見ると、魔力の鎖みたいなものが俺の足を縛っていた。

「!?レンカ・・・!?」

 俺がモミジに意識を向けた一瞬の隙にこんな姑息な真似をしやがって!?

「アルジン、終わりです。モミジ殿!」

「はい!」

 やばい!?モミジがもうすぐそこまでいる!

(避ける余裕はないな)

 なら、真正面から受け止めるしかないな。出来ればあの魔法、【三樹爪撃】は受けたくなかったが仕方がない。

「【三樹爪撃】!」

 俺は魔銀製の剣でモミジの【三樹爪撃】を受け止める。

(ぐ!?)

 お、重い!?モミジの力だけでなく、モミジの想いの強さも上乗せされているみたいだ。

 けど、

「はあああぁぁぁ!!!」

 俺はモミジの【三樹爪撃】を受け止め続け、腕を思いっきり振り切る。振り切った事でモミジの【三樹爪撃】を弾くことが出来た。

「嘘!?私の、渾身の魔法だったのに!!」

「これで分かったか?モミジ、お前は十分に強いが、この程度ではヌル一族相手に戦う事なんて出来ない。戦っても無駄に死体を作るだけだ」

 俺はモミジに向けて手を伸ばす。

「だから、もう俺に魔道具を渡してくれないか?頼む」

 もう戦う必要はないと思った。

 俺の記憶が正しければ、さっきの【三樹爪撃】より強力な魔法は無かったはず。

(・・・いや、確か一つあったな)

 その魔法は確か・・・【三樹爪無限撃】、だったか。でもあの魔法は、他の者の協力が無ければ打てなかったはず。

「・・・嫌だ」

「え?」

「私は今、自分がもてる最大火力の【三樹爪撃】を放ったつもりでした。それでもアヤトさんに容易く止められてしまいました」

 容易く、ではなかったけどな。

「なら、どうすればいいのでしょう?答えは簡単でした。今の私がさきほどの私を超えればいい。覚悟をもって!」

 覚悟をもって?

 さっき、覚悟が足りないとか言っていたが、それとなにか関係あるのか?

「私が今一番怖いのは、アヤトさんをこのまま行かせて、二度と帰ってこなくなることです。そんな事になるくらいなら・・・!」

 ん?モミジの魔力に動きが出てきたな。

(この動き、なんか見覚えが・・・!?)

「モミジ殿!?その魔法は・・・!?」

 どうやらレンカも気付いたようだな。

(モミジの奴、【色気】を使おうとしているのか!?)

 モミジが【色気】を使うための特訓をしている姿なんて見たことがない。

 つまりモミジは、失敗すれば死ぬかもしれない魔法を、ぶっつけ本番で使おうとしているのだ。さきほどレンカがモミジに対して心配の声をかけたことに納得がいく。

「モミジ、お前がそこまでする必要なんてないんだ!頼むからこれ以上は、」

「アヤトさん、私はアヤトさんに寄生しているのですよ?だから、アヤトさんがどのように【色気】を使っているのか、体感で分かっています」

「だからといって、練習もなしに使える魔法じゃない!失敗すれば死ぬことだって・・・!?」

「今私が死ぬより、アヤトさんを死なせることが怖いです。だから私は、」

 まさかモミジ・・・。

「今ここでアヤトさんを倒します。この【色気】を使ってでも!」

 ・・・発動に成功、だと!?

(しかもあの目の色、【赤色気】、【緑色気】、【黄色気】と、三種類の【色気】を同時に使用しているのか!?)

 ぶっつけ本番で【三色気・赤緑黄】の発動に成功させたのか。

(一体どれほど危ない橋を渡ったのだろう)

 モミジだって死ぬ恐怖はあるはずだ。

 その恐怖より、俺を助けたいという意志が上回った、ということなのか?

(だとしたら嬉しいが、それでも行かせられない)

 どちらにしろ、今のモミジを止めないと魔道具をもらえそうにないな。

(俺も、【色気】を使った方がいいのか?)

 今の【色装】のままだとおそらく、俺は負ける。

 出来れば【色装】で勝ちたいのだが、果たして勝つことは出来るだろうか。

次回予告

『6-2-17(第487話) 最悪な戦いに備えて~VSモミジ&レンカその2~』

 なんとしてでも彩人を止めたいというモミジの願いが、【色気】発動へ繋がる。

 その様子を見ていた彩人は、今発動している【色装】で勝つことが出来るか不安になる。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

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