表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
色を司りし者  作者: 彩 豊
第ニ章 魔の国での日常、将来に鉄黒が差し込む夢
486/546

6-2-15(第485話) 最悪な戦いに備えて~彩人の身の上話~

「そうか。モミジは全部知っているんだな?」

「はい」

 この返事、嘘はついていなさそうだな。

「レンカはどのくらい知っているんだ?」

 モミジから話を聞いているのだろうか?出来れば何も知らないでいたら嬉しいが、どうなのだろうか。

「レンカさんに詳細なことは話していません。ですが、アヤトさんに協力してほしいと強くお願いしただけです」

「そうか。ならレンカ、今から耳を塞ぎ、何も聞くな」

「嫌です」

 俺の言葉を、レンカは真っ先に拒否してきた。

「どうして嫌がる?」

「私はアルジンの魔道具です。アルジンに命の危機が迫っているなら、アルジンの魔道具として助けたいのです」

「・・・別に今から死のう、なんて気はさらさらないさ」

「ならどうして少し前から嘘をつき続けているのですか?」

「嘘、だと?」

 俺自身、嘘をついている自覚はないのだが?

「さきほど、死ぬ気がないと仰いましたが、嘘ですよね?」

「別に俺は嘘をついていないぞ?」

「それこそ嘘です」

「どうして分かる?」

「私がアルジンの魔道具だからです」

(ふざけて言っているわけではなさそうだな)

 そう断言したレンカの目は真剣そのものだった。

「・・・聞いたら、もう二度と後戻り出来ないぞ?それでも、聞くか?」

 俺は出来るだけ圧をかけてレンカに言う。

「構いません」

 俺の圧に対して、レンカは真っすぐ俺を見て返答してきた。

(こりゃあ、モミジだけでなくレンカにも言った方がよさそうだな)

 俺は諦め、口を開く。

「数日前、ある夢を見たんだよ」

「夢、ですか?」

「ああ。その夢は・・・、」

 俺は夢の内容や、夢に出てきた人物。そして、ヌル一族のセントミアさんが六か国に魔獣の軍勢をぶつけて世界を滅ぼそうとしている事。そのために六か国それぞれ向かい、笛の魔道具を見つけセントミアさんの言ったことが真実味を帯びた事。様々な事を言った気がする。

(なんだかスラスラ言えている気がするな)

 今まで溜めていたものを吐き出しているからか、半ばやけくそだ。

「・・・アヤトさん、隠している事、まだ!ありますよね?」

「まだ?」

 一体俺が何を隠していると言うんだ?夢の件はさっき一通り話したはず。となると、無意識で俺が話していない事とか覚えていないことを言っているのか?だとしたらしょうがないのでは?

「・・・アヤトさんは、この世界とは別の世界の住人、ですよね?」

「!?」

 まさかモミジの奴、俺が地球から転移・・・いや、転生か?ま、この際細かいことはどうでもいいか。そのことを知っているというのか!?

(俺、この世界に来てから、自分が今いる世界とは異なる世界から来た、なんて言っていないぞ!?)

 一体誰から漏れたと・・・あ!?

(夢の中で言っていたのか)

 この世界の住人。

 おそらくモミジはこの言葉に疑問を抱いてしまったのだろう。

(それも、言わないといけないのか・・・)

 今まで特に指摘とかなかったからずっと言わずに過ごしてきたのだが、ついにいわなくてはいけなくなったか。

「?モミジ殿、今の言葉はどういう意味でしょうか?」

「それはきっと、アヤトさんが教えてくれますよ。ですよね、アヤトさん?」

「・・・簡単な話だよ。俺はこの世界とは別の世界で生まれ、あることがきっかけでこの世界に来た。それだけさ」

「・・・つまり、モミジ殿が言っていることは本当である、ということですか?」

「ああ」

「・・・なるほど。これで今までのアルジンの行動に合点がいきます」

「?どういう意味だ?」

「今まで、アルジンから孤独さを感じていました。最初は気のせいかと思っていたのですが、私達がどれほど近くにいても、共に笑っていても、どこか一歩遠くで見ているような、そんな違和感がありました。アルジンは分かっていたのですね。自分だけ違う生い立ちだということをずっと、ずっと気にされていたのですね」

「・・・本当、お前はよく見ているよな」

 レンカの言葉に図星をつかれてしまった。

 そうだよ。俺は今まで独りで、これからも独りなんだよ。

「そしてどういう訳か、アルジンはさきほど話してくれた件を自身のせいだと感じ、独りで戦い、解決しようとしているのですね」

「・・・」

「沈黙は肯定と捉えさせていただきますね」

「アヤトさん、私も共に戦わせてください!私、力になれます!」

 モミジは、自ら協力を申し出てくれた。

(レンカに自身の思惑を暴露された上に、モミジ自ら協力を志願してくれた)

 とても嬉しいことだし、心強い。

 だけど、

「駄目だ」

 俺はモミジの申し出を拒絶する。

「ど、どうしてですか!?私、弱くないです!」

「ならモミジ、お前は俺を寝ながら圧倒出来るか?」

「え?」

「俺を指一本で行動不能に出来るか?一切動かずに俺の意識を刈り取ることが出来るのか?」

「あ、アヤトさん?一体何を言っているのですか?」

「出来ないだろう?俺は今からそんなデタラメな強さを持っている相手と戦うんだぞ?そんな相手と戦うのなら、さっき言ったことが出来るくらい強くないと無理だ」

「だからってアヤトさんだけに行かせるなんてこと、出来るわけないじゃないですか!?」

 なんとも素敵な言葉だ。昔の俺なら感動していただろう。モミジの提案を素直に受け入れていたことだろう。

 だが、

「なら少なくともモミジ、お前は俺より強いのか?少なくとも俺より強くないと、あのヌル一族と戦っても瞬殺される未来しか見えないぞ?」

「・・・確かに、少し前のアヤトさんだったら、私は負けていたでしょう。ですが、今のアヤトさんなら余裕で私が勝てます」

「なんだと?」

 今の俺に余裕で勝てる、だと?今の俺は【六色気】を使えるんだぞ?この【六色気】でヌル一族に一発くらわしたんだぞ!?

「そうです!何も見えていない今のアヤトさんなんかに負けるほど、私は弱くありません!」

「・・・要するに、今の俺がモミジより弱いから、魔道具を渡せられないと。そういうことなんだな?」

「アヤトさん、お願いですから周りを見て下さい。私達を頼ってください」

「もう既にこれ以上ないってくらい協力してもらった。後は全部、俺に任せてくれたらいい」

 そうだ。

 この戦いに誰も巻き込むわけにはいかない。

 ヌル一族の奴らは本当に、本当に危険だから。

「それですべて任せて結果としてアヤトさんを死なせてしまったら、私、絶対に後悔します」

「死ぬことは無いから大丈夫だ。俺は絶対、生きて帰ってくるからな」

 ・・・正直、ヌル一族の奴らと正面からやりあって、無事に帰ることが出来るなんて思えない。もしかしたら、俺はもう二度とこの場に戻ってこられないかもしれない。

(それほどの覚悟をこいつらに持たせるなんて、今の俺には出来ない)

「嘘ですよね?アヤトさん、死ぬ気、ですよね?」

「!?」

 どうしてモミジの奴、俺の嘘をいとも簡単に見抜くことが出来るんだ!?

「そんなアヤトさんを、弱いアヤトさんを独りにさせるわけにはいきません!どうしても行くつもりなのなら、」

 モミジは周辺の植物に何かしたのか、植物が急成長し始める。

「私が無理矢理止めてみせます。私がアヤトさんを倒してでも!」

「・・・そうか」

 モミジは今、必死なのだろう。

 俺をなんとしてでも止めたい。

 その必死な思いが俺の胸に届く。

 出来れば、モミジの気持ちに答えたいし、答えるべきかもしれない。

「レンカ、お前はどっちなんだ?」

「私は、モミジ殿と同じ考えです。アルジン、ここはみんなと協力するべきです」

レンカもモミジと同じ考えか。

 俺は今、独りよがりの考えで行動しているのかもしれない。

けど、

「なら、無理矢理突破してやるよ。お前らを守るために」

 無理にでも魔道具をもらい、行かせてもらうぞ。

「絶対に、絶対ここで止めてみせます!アヤトさんを守るために!」

「モミジ殿、私も協力します」

 その独りよがりでみんなを守ることが出来るのなら、思う存分独りよがりでい続けてやる!

 こうして俺は、モミジ達を守るためにモミジ、レンカの二人と戦うのだった。

次回予告

『6-2-16(第486話) 最悪な戦いに備えて~VSモミジ&レンカその1~』

 モミジ達を守る為に戦う彩人

 彩人を守る為に戦うモミジとレンカ。

 魔の国の外にいる3人は、互いを守る為に戦いを始める。

 その戦いの中である者は覚悟を力に変え、守る為に尽力する。


 こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。

 感想、評価、ブックマーク等、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ