6-2-12(第482話) 最悪な戦いに備えて~魔獣一掃手段~
まず、複数の魔獣を一掃する魔法を考えよう。と思っていたのだが、その前に考えなければならないことがある。
(どうやって六か国一斉に向かい、魔獣を討伐するか、だ)
おそらく、今もこうして悩んでいる間にも、魔獣の軍勢の規模が大きくなっていく。つまり、一国ずつ向かい、魔獣を討伐していたら、最後の国の魔獣の数はとんでもない数となり、一掃が難しくなるだろう。そうなる前に、六か国一斉に魔獣を討伐しようと考えているのだが、
(簡単なのは、俺以外の誰かに頼る、だ)
だが、この方法は駄目だ。
(この件にヌル一族が関わっているかもしれない可能性が出てきた以上、魔獣の軍勢の中にヌル一族が紛れ込む可能性が出てくる)
ヌル一族の戦闘能力は群を抜いてやばい。おそらく、今の俺が【六色気】を発動して勝てるかどうか。
(そんなやばい奴らをこの世界の人達に戦わせるわけにはいかない)
ヌル一族は、俺が全てなんとかする。
(なんとか、しなくちゃ!)
俺はふと、緑の国の出来事を思い出す。
俺に力が無かったばかりに、イブ達に辛い記憶を植え付けてしまった。
あの時、俺にもっと力があれば、イブ達を守ることが出来た。
出来たんだ!
(・・・いや、今は過ぎたことを考えている場合じゃない)
あんな出来事をもう体験しないために、この件は全て俺独りでかたをつけよう。
つけた時に報告をして、みんなに怒られよう。
(て、なんでもう終わった後の事を考えているんだよ、俺!)
今はどうやって六か国同時に向かうか、だ。
(当たり前だが俺は独り。どうやったって六か国同時に行くなんて芸当は不可能)
こういう時、俺がもっといたらいいのに、なんて非現実的な事を考えてしまうな。
(ん?俺がもっといたら・・・?)
俺をもっと増やせる術なら、あるかもしれない!
(魔法を使えば!)
確かどこかのゲームやアニメとかで、影分身で自身の分身を増やす方法があったよな。その方法を魔法に落とし込めば・・・、
(いける!)
俺をもう一人作るイメージ・・・よし!
(おりゃ!)
すると、俺の隣に煙が湧き、煙が消えたらもう一人の俺がいた。
(せ、成功した!?)
本当に魔法って凄いな!まさか現実で自身の分身をこの目で見る事が出来るなんてな!
(でも・・・なんか赤いな)
俺の気のせいか?でも見た目は俺そっくりだし、俺の目の錯覚か?
「なんか熱い戦いがしたいなー!なぁ俺、熱い戦いが出来るような奴、知っているか?」
・・・これ、俺じゃないな。
「お前、本当に俺か?」
「当たり前じゃないか!?こんなにも熱いんだぞ!?こんな俺、俺以外に誰だというのだ!?」
・・・これ、本当に俺なのか?
(なんだろう。凄く、凄く暑苦しいな)
もしかして、俺の隠された一面がこれ、なのか?
「急に呼んでおいてなんだが、一旦消えてくれ」
「ちょ、おま!?それはひどい・・・!?」
俺は、赤い俺を消した。
(なるほど。魔法を解除すると消えるのか)
【結界】を消すのと同じ要領だな。まぁ、【結界】もさっきの赤い俺も同じ魔法だからだろうか。
(もう一度やってみよう)
さっきと同じ感覚で、もう一人の俺をイメージする。
「だぁー!やっと出てこれたぜ!」
さっきと同じ、赤い俺が出てきた。
「さっきはよくもいきなり消してくれたな?さっきみたいなことはもうしないでくれよ?冷めちまうからな」
「・・・そうか」
俺は赤い俺を無視する。この赤い俺の言葉はよく分からん。
(他に後何人増やせることが出来るか試しておくか)
試してみた結果、
「ふ。ようやく俺の出番か。ついにクールな俺がクールに活躍するとしよう」
「えと、自分は影ながらに頑張り、ます」
「さーて!目立って目立って目立ちまくるよー!」
「この私の正義を執行する時が来たようだ」
「やっぱホットケーキって美味いよなー」
分身は6体まで増えた。つまり、俺を含めて7人、ということである。
(だがまぁひどい)
色が若干違うのはまだいい。
ひどいのは性格である。
赤い俺はさきほども感じたが、とにかく暑苦しい。
青い俺はクールで若干ナルシスト気味だ。
緑の俺は気弱で、目立つことを嫌う。
黄色の俺は目立ちたがりでアイドルみたいだ。
白い俺は正義やルールを大事にしている。
黒い俺は、食欲に忠実な食いしん坊。
(俺って・・・、)
自分でも知らない一面を知ってしまい、落ち込んでしまう。
(・・・ま、まぁいい。今は性格のことはどうでもいいんだ)
俺含めて7人ということは、ここにいる6人の俺に、それぞれの国に行ってもらい、魔獣の掃討をお願い出来る、ということだ。
(そういえば、使える色魔法の種類とか、どれくらいの強さなのかそれぞれ確認する必要があるよな)
という訳で俺は、他の6人の俺と共に、今使える色魔法と強さの確認を行った。
結果、
(使える色魔法はそれぞれ一種類のみ。魔力量は分身する前の七分の一、か。だが幸いなことに、強さはそのまま、か)
色魔法の適性と魔力量だけ七等分されているイメージか。
使える色魔法は、俺の体の色と対応していた。その為、覚えやすかった。
つまり、今の俺に残っている色魔法の適性は、無魔法。
(あのヌル一族が使う色魔法と同じ、か)
・・・ところで、今の俺の体って、透明じゃないよな?確認してみたら、分身する前の体の色と変わっていなかった。どうやら俺の体の色は分身をしても変わらないようだ。
(とにかく、この魔法を使えば、六か国それぞれに向かっている魔獣の軍勢を一斉討伐が出来そうだ)
この魔法名はそうだな・・・【色分身】とでも名付けるか。
(俺以外の6人はそれぞれの国の魔獣の討伐を任せるとしよう)
そして俺は・・・。
(セントミアさんのところへ向かうとしよう)
そして、止める。
(ただでさえ強さで劣る俺が、いつもの七分の一の魔力量しかない俺に勝ち目なんてあるのだろうか?)
いや、例えなくても関係ない!誰かがやらないと!!
(・・・あれ?)
そういえばセントミアさんって、どこにいるんだ?
・・・。
(やば!?)
セントミアさんがどこにいるか突き止めないと、向かいようがないじゃないか!?
(どうする?)
ひとまず、セントミアさんのことは後回しにして、魔獣の事だけ考えるか?
(だが、このことを仕掛けてきたセントミアさんを止めない限り、また同じようなことが起きるかもしれない。けど、居場所が掴めない限りどうしようもないし・・・くそ!)
まったく!いくら考えていてもいい案が出てこないな。
なら、リーフ達に意見を聞くこともいいかも・・・、
(いや、駄目だ)
このセントミアさんとの件は、俺独りでなんとかしないと。
(今でもモミジとレンカに協力してもらっているのだから、これ以上周りの人達を巻き込むわけにはいかない)
せっかく魔獣を一斉に掃討する手段は考えられたというのに、別の問題が出てくるなんてな。
(ひとまず、レンカにあの笛の魔道具の解析結果でも聞きに行くか)
もしかしたら何か分かるかもしれないからな。
次回予告
『6-2-13(第483話) 最悪な戦いに備えて~セントミアの居場所~』
セントミアの居場所を把握していないことに気づいた彩人は、レンカとモミジの元へ向かう。
二人の元へ到着すると、笛の魔道具を並べて唸っているレンカがいた。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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