6-2-9(第479話) 最悪な戦いに備えて~【魔力感知】と植物さん達による調査~
先ほどの部屋に戻ったら、レンカとモミジが作業していた。おそらく、俺がさっきお願いした魔道具の作製をしてくれているのだろう。
「ただいま」
俺の挨拶が聞こえたのか、
「あ、おかえりなさい、アヤトさん」
「アルジン、結果はどうでしたか?」
きちんと返事をしてくれた。この返事、ありがたい。
「ああ。さっそく魔の国の外に出て確かめたいことがあるんだ。モミジ、一緒に来てくれるか?」
「はい、分かりました。レンカさん、申し訳ありませんが・・・、」
「分かっております。モミジ殿、アルジンをお願いします」
「はい、任されました。それではアヤトさん、行きましょうか?」
「お、おお」
なんだろう。主導権を握られている気がする。
(でもまあ、いいか)
やることは変わらないのだから。
「それでアヤトさん、これからどこに行き、何をするのですか?」
「魔獣達に異変がないか確認したい。出来れば六か国」
「六か国って、赤、青、緑、黄、白、魔の国の六か国ですか!?」
「ああ。大変なのは分かるが、付き合って欲しい」
「それはよろしいのですが、どうし・・・いえ、なんでもありません」
「?」
モミジの奴、途中で言葉を切ったが、一体何が言いたかったのだろうか?
(まぁいいか)
今は深く考えている余裕はない。一刻も早くセントミアさんの言葉の真偽を確かめる必要があるからな。
そして俺とモミジは魔の国の外へ出た。
(・・・まぁ、国の外に出たからといって、すぐに魔獣と対面する、なんてことはないわな)
そんなことになったら、この国の危機管理能力を疑い、意識改善を促すところだぞ。だがあの国王のことだ。きっと大丈夫だろう。
「それで、魔獣さん達の異変をどうやって知るつもりなのですか?」
「それなら大丈夫だ。【魔力感知】で魔獣の魔力を感知すればいい」
俺はモミジに説明しながら【魔力感知】を発動させる。
(うげぇ!?)
すると、魔力の反応が無数に出てきた。
理由は簡単。
(やっぱ国の近くだと人は多いな。多いおかげで魔力の反応がたくさんだ)
魔力を持っているのは魔獣だけでなく人間も持っているからである。
そんな人間が数多くいる国の近くで【魔力感知】を使ったらどうなるか?反応がたくさん出てきてしまうのである。
(これらの反応はとにかく無視だ。今は複数の魔力反応を探そう)
その反応はきっと、魔獣の魔力反応だと考えているからだ。
(まさか首都から遠く離れたところで集落を形成して暮らしている、なんてことはないだろう)
そんな世捨て人みたいな暮らしをしている人はこの世界にいない・・・と思いたい。
(まぁ反応は合ったらこの目で直接確認するから、ひとまず複数の魔力反応を探すとするか)
【魔力感知】に集中、集中・・・。
・・・。
(魔力反応はチラホラあるが、魔力反応が集結している様子はなさそうだな)
もしかして、セントミアさんの言っていたことは嘘、なのか?
(いや、もっと捜索範囲を広げよう)
俺は【六色気】を発動させてから、もう一度【魔力感知】を発動する。すると、さっきより広範囲の魔力が感知出来るようになった。
(・・・なんとか魔力反応が4,5個集結している個所は見つけたが、この反応が、俺が探していた反応でいいのだろうか?)
村や集落というにはあまりにも過疎化が進み過ぎている。
(まさか、この世界の魔獣達にも高齢化問題が発生しているのか!?)
・・・なんともくだらないことを考えてしまったな。
(そんなことより、これからどうする?)
【六色気】で【魔力感知】を強化しても、結局魔獣の群れは見つけられなかった。さっき見つけた4,5個の魔力反応が一個所に集結している個所に向かってはみるが、おそらく外れだろう。
「・・・あの、少しよろしいでしょうか?」
「ん?どうした?」
俺が今後の方針に悩んでいたら、モミジが俺に話しかけてきた。
「アヤトさんは今、魔獣の群れを探していらっしゃるんですよね?」
「おお、そうだが?」
「さきほど植物さん達にお願いして探してもらったところ、一個所、妙な個所があるそうです」
「妙な個所?どういう意味だ?」
「まずは場所なのですが、植物さん達が教えてくれた個所はここです」
「ここだと!?」
モミジが教えてくれた位置は、4,5個の魔力反応が集結している場所だった。
「俺の【魔力感知】だと、そこには魔獣が4,5匹しかいないと出たんだが?」
「いえ、植物さん達によると、そこには三十匹以上のゴブリンがいるらしいですよ?」
「なに!?」
どういうことだ?
俺の【魔力感知】には三十どころか十匹も反応がないんだぞ!?
(俺の勘違いか?それとも、魔力そのものを隠蔽しているのか?)
そんなことが出来るのか?
いや、もしかしたら魔力を偽装出来る魔道具を使っている、のか?
(でもなんでわざわざ偽装なんてするんだ?そもそもそんな魔道具をどうして魔獣が持っているんだ?)
そういえば、賢猿という魔獣が魔道具作りを得意としているんだっけか?ということは、群れの中に賢猿が最低でも一匹はいるということなのか?
「・・・あの、ひとまず植物さん達が教えてくれた場所に行ってみませんか?」
「・・・そうだな。行ってみないことには何も分からないしな」
行かなくても推測は出来るが、あくまで推測。見ないことには分からない。
こうして俺達は、奇妙な魔力反応がある個所に向かうことにした。
次回予告
『6-2-10(第480話) 最悪な戦いに備えて~齟齬の正体~』
奇妙な魔力反応がある個所に到着した彩人とモミジは、その個所で異変の正体に気づく。
こんな感じの次回予告となりましたが、どうでしょうか。
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