1-2-22(第48話) 魔王、デビル一家の食事会
魔の国の城の食堂に座っている者が三人いる。
「うむ。今日もアヤトの作った飯が食えるとはな。なんとも楽しみだな」
「そうですわねあなた。そして、ホットケーキ以上の食べ物なんて、楽しみですわ!」
「…うん。楽しみ♪」
魔王の家族、ゾルゲム=デビル、ストレガ=デビル、そしてイブことカナ=デビルの三人だ。
今回、赤の国と青の国の戦争に、赤の国の戦力として参加する代わりに、アヤトの料理を食べるということだったので、三人はとても楽しみにしていたのだ。
一応、戦争が終わってから魔の国に来るまでの数日も、アヤトの料理を散々食っていたのだが、それは、「アヤトが狸寝入りしていた罰だ」と言われてしまった。
「それでは、今回のお食事を存分にお楽しみください」
ちなみに今回は礼も兼ねているので、コックの人から、コックコートを借り、準備万全だ。
それからは調理室と食堂の往復が続いた。
まず出したのは、豚肉っぽい肉があったので、カツ丼にしてみた。
「「「がつがつがつがつ!!!」」」
みんな、がっついていた、それはもう、ライオンが肉を貪り食うくらい、貪欲に食っていた。だけど、みんな食い過ぎじゃね?二杯もおかわりしちゃって大丈夫ですか?俺も練習したかいがあるとはいえ、もうお腹いっぱいじゃないの?そんなことを考えていたら、
「「「次の料理は!??」」」
…みなさん、よく食べますね~。
さて、次の料理は寄せ鍋だ。市場に売ってあった野菜や残っている肉を、あらかじめ用意していた出汁に入れる。だいたい煮えたら完成だ。
「次は鍋でございます」
「「「鍋!!?」」」
そんなに驚くことなのか?そこらにある材料をまとめてぶっこんだだけなんだが…。
それでも三人はカツ丼を食べていた時と変わらないスピードで食べ物を口に放り込んでいく。最早戦争だ。自分の領地のために全力でフォークを使って取ったり取られたりしている。おい、自分の肉を取られたからって、そんな悔しそうな顔をするな!まったく…。
結局、五人前は入れたと思っていたのだが、全部三人で食べ尽してしまった。恐ろしい家族だこと。
「最後はデザートであるこれでございます」
そう言って俺はあるものをテーブルの上に出す。
「「「デザート!!??」」」
三人はまだ食べるつもりのようだ。確かに甘いものは別腹というが、後日、お腹壊すとかやめてほしい。
「アヤト。これがデザートか?」
「甘い匂いはしますけど…」
「…このデザート、何?」
「これは“ケーキ”というデザートでございます」
「「「ケーキ!!?」」」
やばい。三人の反応が面白い。
俺はケーキを三等分に切り分け、三人の前に置く。
「「「がつがつがつがつ」」」
最早食事のマナーなど知らん!と言いたげなくらい、獣のような食い方だった。口の周りを白いクリームまみれにした三人はそれぞれの顔を見て、その光景を笑っていた。
「後でケーキ後でケーキ後でケーキ後でケーキ後でケーキ後でケーキ後でケーキ後でケーキ…」
…ちなみに三人が笑っている中、俺は失笑していた。理由は扉を少し開けてこちらの様子を窺っているメイドだ。今回、お礼をするにあたり、どうしてもケーキだけは一人で作るには時間が足りず、仕方なくメイドや執事達にお願いをした。そのこと自体は間違っていない。結果として、三人の笑顔が見ることができたのだ。そう、間違っていないのだが…。
「「「後でケーキ後でケーキ後でケーキ後でケーキ後でケーキ後でケーキ後でケーキ後でケーキ…」」」
…間違っていたのかもしれない。メイドの数がさらに増え、まるで親の仇打ちをするかのような目で俺を見ていた。俺はそのことに冷や汗を流すことしかできなかった。
「いや~。実に美味かったよ。アヤトよ、また頼むぞ」
「まさかホットケーキ以上の物が存在していたなんて!アヤトさん!また作ってくださいね!!」
「…アヤト、美味しかった。ありがと♪」
うんうん。みんな満足してくれたみたいで良かった。食事前後ですっかり変わってしまったお腹について言うのはやめておこう。明日から三人でダイエットに励むといいさ。
「それではこのまま寝るとしよう。アヤトよ、明日、赤の国に行くってことでいいか?」
「あ、大丈夫だと思いますよ」
「それではアヤトさん。また明日」
「…お休み、アヤト」
三人とも、自室に戻っていった。そう言えば、俺はどこで寝ようか?
ちなみに、彩人がいる世界にも鍋はありますが、出汁をとる、ということまではしません。なので、魔王一家も美味しく感じたのだと思います。
次回は…メイド達の恐怖再び(最初は【1-18(第22話) 魔王とのタイマン】)です。




